キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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探偵たちの鎮魂歌


今度こそ2人で


午後10時3分。
爆発が起こらない、ということは、名探偵は無事事件を解決したということだ。
阿笠博士のところに電話が着た直後、警察が慌ただしく動き出した。


「はーい!IDを外してこの中に入れてちょうだーい!」
「えー?外しちゃうのぉ?」
「もう終わりの時間だからね」
「つまんなーい!」
「全然乗り物乗れなかったんだぞ」
「遊園地に来た意味がありませんでしたね」


入り口にいた女刑事がIDを回収しようとしたけど、子供たちからブーイングが出た。
…あおいちゃんのメールを見た限り、飯食って医務室閉じこもってただけみたいだろうからそうなるだろうよ。
不憫に思っちまった俺は、簡単なマジックを披露することにした。


「よーし、じゃあみんな、ID外す前に俺にちゅうもーく!」


カードに目が釘付けになってる隙に、1人ずつIDを取っていく。


「あれ?ハートの4じゃないですよ?」
「ほんとだー!快斗お兄さんマジック失敗しちゃったの?」
「なんだよぉ、兄ちゃんのマジックだめじゃねーかよ」
「…カードは4じゃねーけど、今日、君たちがそのハートのように大事に扱っていた4つのIDは確かに頂いたぜ?」


子供は純粋だ。
目をキラキラさせながら見てくるそれは、もうとっくに過ぎ去った遠い昔、俺が親父を見ていた姿と被るような気がした。


「すっげ、すっげー!」
「快斗お兄さんのマジック、やっぱりすごーい!」
「今全くわかりませんでしたよっ!!」
「まるで怪盗キッドみたいね」


哀ちゃんはチラッと俺を見ながらそう言った。


「えー、月下の奇術師みたいとか光栄だな!」


この子は間違いなく、江戸川コナンと同類だ。
見た目と実年齢が違うんだろう。
…て、ことは、だ。
アイツから俺の正体聞いてる可能性は十分ある。
というか、その可能性しかない。
だからこの反応は想定内だ。


「ちょちょちょ、」
「ん?何、園子ちゃん」
「今のうちらにも見せてよ!」
「えー?高くつくぜ?」
「は?可愛い女子高生に囲まれて嬉しいでしょ!?サービスしなさいよ!」


オメー、どの口が「可愛い女子高生に囲まれて」なんて言うんだよ?
俺が可愛いなんて言う女子高生そこに1人しかいねーだろ。
まぁいいや。
難なくここに潜り込めた礼も兼ねて、簡単に見せてやることにした。


「と、こんなマジックをしていたら、あーら、不思議。そちらとそちらのお嬢様方のIDがいつの間にか失くなってしまいました!」
「え?えっ!?ほんまや!どこいったん!?」
「えっ?どこどこ?」


キョロキョロとする園子ちゃんを、目を白黒させて見るあおいちゃんと蘭ちゃん。
ぶふっ!


「そ、園子…」
「頭、頭…」
「え?頭?あた、………あんたねぇっ!?」
「ぶはははっ!!似合うぜ、IDカチューシャ!!」


そう言って暴れだしそうな園子ちゃんからIDを取り、あおいちゃんと蘭ちゃんのIDも渡してもらい、女刑事にIDを渡しに行った。


「園子ちゃんの分も含めて、これでIDは全部ですよね?」
「…えぇ、確かに。全て回収したわ。ありがとう」
「いえいえ、これくらいは、ね」


警視庁の人間が人数分、IDを受け取ったのをこの目で確認してようやく一息つけた。


「本日は、ご迷惑をおかけしました。スーパースネークの修理が完了しました。閉園時間を過ぎていますが、最後に1度だけ運転いたします」
「「「やったーーーっ!!!」」」


直後、園内放送が流れて、みんなでスーパースネークに乗ることになった。


「おー!おったおった!」
「あー!平次!!と、コナンくん!?え?なんでおんぶしてるん?」
「なんでも何もコイツ足怪我して歩けへんねん!」
「コナンくん、怪我したの?大丈夫?」
「て、ゆーかさぁ、」
「うん?」
「…なんでいるの?そこの詐欺師」


ジロッと俺を見ながら名探偵は言う。


「こぉら!そんな言い方しちゃダメでしょ?第一、黒羽くんはマジシャンで、詐欺師じゃないわよ?」
「マジックで人を欺くことに喜びを感じるクソヤロー…って、新一兄ちゃんが言ってたよ!?」


オメーさぁ、もうちょい上手く言い訳しろよ。
いっつもそんな言い訳の仕方なのか?
それじゃあ俺がせっかく工藤新一として蘭ちゃんの前に出てやったのに、また疑われちまうだろうが!


「もぅ!新一ってば、なんてこと言うのよ!…ごめんね、黒羽くん。コナンくんも普段こんなこと言う子じゃないんだけど、」
「あー、いいのいいの。手先が器用な俺に嫉妬したんだろ?」
「はぁ!?」


ふふん、と、名探偵を見下ろすと、あからさまにイラついた顔をしていた。
…ざまぁみろ、いい気味だぜ!
なんて思っちまったなんて、俺はコイツを協力者にすると決めた以上言わねーけど。
でも胸がスッとしたのは仕方ねーことだと思う。


「早く乗ろうよー!」
「急いでくださーい!」
「…んじゃあ、俺たちも行こうぜ」


探偵団に続いてスーパースネークに向かい歩き出した。


「俺、スーパースネーク初めてー!」


2人用のシートに誰と座るか?なんて、そんなのあおいちゃん1択だ。
って思った俺はスッとあおいちゃんの隣を確保してその時を待った。


「それでは、いってらっしゃーい!!」


スタッフのお姉さんの声に見送られコースターが動き出す。


「そーいやさー」
「うん?」
「結局、あおいちゃんと遊園地デートしたことねーよな。トロピカルランドの時は『デート』って感じじゃなかったし」


ガタン、ゴトン、と、少しずつ、少しずつ動くコースター。


「だからさぁ、また来ようぜ、今度」


横目でチラッとあおいちゃんを見遣ると、どこか驚いたような顔をしていて。


「全部片づいた半年後、2人でまた来よう」


俺はもちろん、あおいちゃんのいう半年後をクリアさせるつもりだし。
そしたら今度こそ2人で、デートしに来よう。
そう思い言った言葉は、あおいちゃんの返事を聞くより先に、


「でも今は!」
「えっ!?…きゃああああああ!!!」
「いえーーーーい!!!!!」


轟音と絶叫と共に、夜の闇に消えていった。

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bkm

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