キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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探偵たちの鎮魂歌


2人でまた


午後10時3分。
子供たちのテーブルの前まで来ていた博士のケータイが鳴った。
電話を出た直後、博士が目暮警部に「○」と手で合図したのを見逃さなかった。
それを確認した警部たち警察が、慌しく動き始めていた。


「はーい!IDを外してこの中に入れてちょうだーい!」
「えー?外しちゃうのぉ?」
「もう終わりの時間だからね」
「つまんなーい!」
「全然乗り物乗れなかったんだぞ」
「遊園地に来た意味がありませんでしたね」


入り口にいた佐藤刑事がIDを回収しようとしたけど、子供たちからブーイングが出た。
ところで、


「よーし、じゃあみんな、ID外す前に俺にちゅうもーく!」


快斗くんが探偵団の方へ近づいて、カードマジックを見せ始めた。


「あれ?ハートの4じゃないですよ?」
「ほんとだー!快斗お兄さんマジック失敗しちゃったの?」
「なんだよぉ、兄ちゃんのマジックだめじゃねーかよ」
「…カードは4じゃねーけど、」


そこまで言うと快斗くんはいつの間にか右手に4個のIDを持っていて。


「今日、君たちがそのハートのように大事に扱っていた4つのIDは確かに頂いたぜ?」


それを自らの手で佐藤刑事に渡していた。


「すっげ、すっげー!」
「快斗お兄さんのマジック、やっぱりすごーい!」
「今全くわかりませんでしたよっ!!」
「まるで怪盗キッドみたいね」


そう言った哀ちゃんに思わず目をやった。


「えー、月下の奇術師みたいとか光栄だな!」


快斗くんのその言葉に哀ちゃんは、意味深な微笑みを残した(気がする)
…これ、もしかしてだけど、哀ちゃんて薄っすら快斗くん=キッドって気づいてる、とか?


「ちょちょちょ、」
「ん?何、園子ちゃん」
「今のうちらにも見せてよ!」
「えー?高くつくぜ?」
「は?可愛い女子高生に囲まれて嬉しいでしょ!?サービスしなさいよ!」
「…わーったよ!1回だけだからな?」


園子の押しに負けた快斗くんは、再びカードマジックを始めた。
そして、


「と、こんなマジックをしていたら、あーら、不思議。そちらとそちらのお嬢様方のIDがいつの間にか失くなってしまいました!」
「え?えっ!?ほんまや!どこいったん!?」
「えっ?どこどこ?」
「…そ、園子…」
「頭、頭…」
「え?頭?あた、………あんたねぇっ!?」
「ぶはははっ!!似合うぜ、IDカチューシャ!!」


快斗くんの言葉に「そちらとそちら」って言われた和葉ちゃんと園子がIDを確認したら、腕に嵌めてなくて(園子もいつの間にかIDつけてた)
それを横で見ていた私と蘭は、園子の頭にまるでカチューシャのようにIDがつけられていたのに気づき。
頭に手をやった園子がIDに気づき快斗くんにブチ切れるって言う、ほんの数秒のコントを繰り広げた。
園子と快斗くんて、ほんと仲良いと思う。


「園子ちゃんの分も含めて、これでIDは全部ですよね?」
「…えぇ、確かに。全て回収したわ」


快斗くんは私と蘭のIDも受け取り、自分の手で数を数えて佐藤刑事に渡した。
…これで本当に一安心だ。


「本日は、ご迷惑をおかけしました。スーパースネークの修理が完了しました。閉園時間を過ぎていますが、最後に1度だけ運転いたします」
「「「やったーーーっ!!!」」」


ホッ、と息を吐いたところで、園内放送が流れて、みんなでスーパースネークに乗ることになった。


「おー!おったおった!」
「あー!平次!!と、コナンくん!?え?なんでおんぶしてるん?」
「なんでも何もコイツ足怪我して歩けへんねん!」
「コナンくん、怪我したの?大丈夫?」
「て、ゆーかさぁ、」
「うん?」
「…なんでいるの?そこの詐欺師」


服部くんの背中から、物凄い勢いで快斗くんを睨みながらコナンくんは言う。


「こぉら!そんな言い方しちゃダメでしょ?第一、黒羽くんはマジシャンで、詐欺師じゃないわよ?」
「マジックで人を欺くことに喜びを感じるクソヤロー…って、新一兄ちゃんが言ってたよ!?」


問い詰めた蘭に思わずって感じに呟いてしまったコナンくんは、慌てて「新一兄ちゃん」のせいにしていた…。


「もぅ!新一ってば、なんてこと言うのよ!…ごめんね、黒羽くん。コナンくんも普段こんなこと言う子じゃないんだけど、」
「あー、いいのいいの。手先が器用な俺に嫉妬したんだろ?」
「はぁ!?」


ニヤニヤと。
コナンくんを見つめながら言う快斗くんを私は見逃さなかった。
…これ、確証ないけどたぶん、コナンくんもキッド=快斗くんて知ってるんだ。
しかも快斗くんも知られてるってわかってる。
待って、いつの間に???


「早く乗ろうよー!」
「急いでくださーい!」


私が???ってなってると、待ちきれなかった探偵団はすでにスーパースネークの方に向かっていて。
とにかくみんなで乗ろうと、スーパースネークに向かったんだけど。


「俺、スーパースネーク初めてー!」


私の隣は当然とでも言うかのように快斗くんが座った。


「それでは、いってらっしゃーい!!」


ストッパーが音を立てて降りた後で、スタッフのお姉さんの声に見送られコースターがガタン、ガタンと動き出した。


「そーいやさー」


動き出した直後、快斗くんが話しかけてきた。


「結局、あおいちゃんと遊園地デートしたことねーよな。トロピカルランドの時は『デート』って感じじゃなかったし」


ガタン、ゴトン、と、少しずつ、少しずつ動くコースター。


「だからさぁ、また来ようぜ、今度」


ちらりと隣を見ると、柔らかく笑う快斗くんと目が合った。


「全部片づいた半年後、2人でまた来よう」
「…そ、れは、」
「でも今は!」
「えっ!?…きゃああああああ!!!」


バッ!と私の手を取り、バンザイするかのように上げた快斗くん。
直後、スーパースネークは勢い良く動き始め、ミラクルランドの夜に私たちの叫び声が響いた。

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bkm

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