キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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探偵たちの鎮魂歌


全力で口説かれる


佐藤刑事、高木刑事も合流した警察関係者がひったくり犯を無事確保。


「俺あの兄ちゃん捕まえるために、すっげー走ったから腹減ってきた」
「えっ!?元太くんお昼あれだけ食べたのにまだ食べるんですか!?」
「だってよぉ…、体育の授業よりも一生懸命走ったんだぜ?」
「ま、まぁ確かにそうですけど…」
「だから腹減っちまって…」


ぐぅぅ、とお腹を鳴らしながら元太くんは言う。
正直そこまでお腹減ってないけど、ここで反対したら映画の流れが変わっちゃうから反対できない私は、


「じ、じゃあさぁ、走ったしちょっと休憩、って感じでお茶しようよ」


お茶休憩を提案した。
そこに乗っかったのは他の誰でもなく、


「おぉ!そうだな!我々も腹が減って来たし、どうだね、一緒に?」


目暮警部だった。
わかる。
わかるんだよ。
爆弾付きIDを身に着けてる私たちを1つの場所に留めておきたいのは。
けどさぁ、普通に考えて女子高生(と小学生)と一緒にご飯てさぁ、ちょっと無理あるって(しかも佐藤刑事が言うならまだしも、目暮警部がって…)


「目暮警部と、です、か…?」


そう思ったのは私だけじゃなく、蘭がツッコミを入れた。


「な、何かマズイかな?」
「マズイことはないですけど、ねぇ?」
「うん。アタシも別にえぇけど…、あおいちゃんと園子ちゃんは?」
「わ、私も別に…」
「私も別にー。でもそれってつまりは自由参加ってことよね」


園子が呟くように言った。
その後ぞろぞろとレストランに移動。
途中歩美ちゃんが、「せっかく遊園地に来たのに、歩美なんだか食べてる記憶しかない」って物凄い申し訳なくなるようなことを言った。
正にその通りすぎてほんとにごめんね…。


「園子、なんか楽しそうだね」
「え?そう見える?」
「鼻歌なんて歌っちゃってさー、何かあった?」
「んふふふ」


レストランに向かう途中、一瞬消えたと思った園子が、またいつの間にか現れて、気がついたら園子と並んで歩いていた。
そしたらその園子がみょーに楽しそうで。
それを聞いたらすっごい「にんまり」って言葉がぴったりな笑いを見せてきた。


「わかった、京極さん関連だ」
「んー、おしい、かなぁ?」
「え?違うの?」
「ねぇ、あおい。私はあおいと親友だと思ってるの忘れないでよね」


いきなりそんなこと言う園子を見たら、さっきまでのにんまり笑顔とは違う、柔らかい笑顔になっていた。


「な、なに?急に、」
「…親友だと思ってる、だからこそ、ね」
「うん?」
「この件に関しては私断然『彼』の味方だから」


先に言っておくわ、と園子は言う。


「え、ちょっと意味わかんな」
「やっと着いたぜー!」
「遠かったですねー」


園子に続きを聞こうとしたら、レストランに到着したと探偵団が騒ぎ始めた。
警部が連れてきてくれたレストランは、ゲートから1番遠いエリアにあったレストラン。
…それはたぶん、万が一のことがあった時に被害を最小限に抑えるためだと思う。
爆弾の威力がわからないから、私たちを1番奥のエリアに入れて、そのエリア自体を封鎖するんだと思った。
貸し切り状態のレストランに着いて(恐らくすでに警察の根回し済)さぁ何食べる?ってなった時、お昼にガッツリ食べ過ぎた私と蘭は優雅に紅茶を飲むことにしたんだけど。
園子はチョコパフェも頼んだのに、何故か飲み物だけ口にしていた。
ちなみに4人がけのテーブルで園子に奥に座れって言われたから窓ぎわ私、隣が園子、私の正面が和葉ちゃんでその隣が蘭だった。
…後にして思えば、すぐに立ち去れない位置に私を座らせたのは、私が逃げないようにって言う園子の思惑だったと思う。


「園子さっきから時計見てるけど、何かあるの?」
「ん?んー…、そろそろなはずなんだけどなぁ、って思って、」
「そろそろ?何がそろそろなん?」
「てゆーか園子、そのチョコパフェ食べないとアイス溶けるよ?」
「だからそろそろ来る頃なんだ、って」
「前も言ったけど遊園地に現地集合させんのやめてくんねー?」


園子が時計を見た。
と、思った直後、入り口の方から聞き慣れた声がした。


「あーっ!快斗お兄さんだ!」
「よっ!久しぶりだな、探偵団のみんな!」
「来た来た!待ってたわよ!」


快斗くんにはこの事件のこと、全部話してある。
私たちのIDには爆弾が着いていて、それはミラクルランドの外に出るか、あるいはミラクルランドの閉園時間である午後10時までに解除されなければ爆発するものだ、って伝えてある。


「な、なんでいるのっ!?」


だから全てを知ってるのに、快斗くんはここに来た、ってことになる。


「え、なんで、って呼ばれたから?」


そう言いながら園子を指差した快斗くん。
当の園子はニシシ、と笑いながら私の隣の席を快斗くんに譲った。


「呼ばれた、って、呼ばれたからって普通来る!?」


爆弾付きIDつけてる人間たちの集いに!?!?


「今日の用事も済んだし?園子ちゃんが好きなの奢るって言うし、来たんだけど?これ俺んだよね?」


チョコパフェを指差し園子に聞く快斗くん。
園子は園子でもち、と言ったものだから、快斗くんのために注文してたらしいチョコパフェを、いただきまーす、と元気に頬張った(ちなみに園子は蘭たちに詰めてもらって、私たちの前の席に座ってる)


「お!これ美味ぇ!あおいちゃんも食べる?」
「えっ!?たっ、食べないよ!それよりなんで来たの!?」
「だから呼ばれたからだって」
「呼ばれても来ないでしょ!?全部わかってて来ないでしょ!?」
「あれっ?もしかして忘れちゃった?」


チョコパフェを食べてるスプーンを口に咥えながら、快斗くんは私を見てきた。


「わ、忘れた、って何を?」
「俺言ったよね?もう1度あおいちゃんに好きになってもらうために、全力で口説きにかかる、って」
「っ、」


快斗くんはなんでもないことのようにサラッとそう言った。
それは私が記憶を失くしてた時に行った、トロピカルランドの帰り道のことで。
…待って、確かにそれは言われたけど、でも状況ってものがあるしだいたい今の状況わかってるの!?
あともう少しでドカン!てなるかもしれないのわかってるの!?
そりゃあコナンくんはそんなミスしないだろうし、今までそこまでダイナミックに話の流れが変わったことなんてないから大丈夫だとは思うけど、そもそも快斗くんが話の流れを知ってる今の状況がすでにダイナミックに話の流れが変わってるわけでそんなだって全力で口説くなんてだって私たちドカンてなったらドカンだし


「ふはっ!」


私がうぇああ!ってなってたら、快斗くんが突然噴き出し、そしていつものように柔らかい、優しい顔で笑った。


「あおいちゃんが何考えてるかわかんねーけど、俺はいつでも傍にいるよ」


そう言って私の右手を取ったかと思ったら、指先にちゅっ、て口づけた。


「とっ!友達はそういうことしないっ…!」
「うっそ!友達はするって。ねぇ、園子ちゃん?」
「するする。手にキスとか挨拶よ、挨拶!」
「え、ええええ」
「ほらな?」
「…っ、蘭!」
「え!?え、えぇー、と、日本では、あんまりしないけど、挨拶、なのかなぁ?」
「うっ、裏切り者ぉぉ!!和葉ちゃんっ!!」
「てゆーか、その人誰なん?あおいちゃんの彼氏?」


2人の裏切り者に見切りをつけ、新たな仲間を、と、和葉ちゃんに声をかけたものの、話をぶった切られて…。


「あ、俺黒羽快斗。絶賛あおいちゃんを口説きまくってる男ね。よろしく、えぇーっと、和葉ちゃん?」
「あー、うん、アタシは遠山和葉。快斗、って、さっき歩美ちゃんたちが言ってた人やんな?…もしかして前に園子ちゃんが言ってたおみくじの『彼』もこの人?」
「おみくじ?おみくじって何?」
「あー!そうそう。大阪の布袋神社ってとこのおみくじであおいが大吉引いたのよね」
「ちょっ!それ今言う話じゃなくないっ!?」
「えーっと、なんだっけ?蘭覚えてる?」
「確かー、あおいは、『彼を信じて心を開けば、新しい道が拓く』みたいな内容じゃなかったっけ?」
「らーーんーーー」


なんで…それを…よりにもよって今言うの…。


「やべーな、そのおみくじ、すげー当たってんじゃん!」
「せやから布袋神社のおみくじは当たるて有名なんやて。で、その時園子ちゃんがその『彼』に心当たりある、言うてて」
「俺だ。それ俺のことだ」
「もうこの話やめてぇ…」
「おみくじにまで認められてるから安心しろって」


な?ってウィンクした快斗くんの向こう側の壁にかけられていた時計が、午後10時02分を指していた。

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bkm

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