■腹が減っては
ミラクルランドのゲートを潜ったところで、
ピリリリ
電話が鳴った。
見ると快斗くんからで。
「は、はい?」
「あおいちゃん、予定通り?」
「う、うん。予定通りミラクルランドだよ。快斗くんは?」
「俺はパターンAだなー」
快斗くんにこの事件のことを話した時、コナンくんに打ち明けるのか聞いた。
ーえ、言うわけねーじゃんー
ー言わないの?ー
ーだってそれ言ったらあおいちゃんの秘密アイツに教えなきゃだろ?絶対嫌だねー
って、ことだったから、じゃあどうするのか聞いたら、快斗くんは私の知ってる通りのお話をなぞる、って。
コナンくんたちを「白馬くん」として助けるんだ、って。
そう言っていた。
でも万が一のこともあるから、俺たちも定期的に連絡取ろうって話になって。
ただそうなると、IDを貰った人間のケータイ番号とか、犯人にバレバレの可能性あるから盗聴警戒して合言葉を決めよう、ってことになった。
つまりこの時の「パターンA」ってのは、私が話した通りに事件をなぞるぞ、ってことを意味してた。
ちなみに犯人は目が見えないって言ったら、メールは大丈夫だろうって話になった(コナンくんの携帯とかならまだしも、人質側のメールまで音声で監視してないだろうっていう快斗くんの意見)
「大丈夫だと思うけど、」
「気は抜かねーから安心して!」
「ならいいけど…」
「あおいちゃんも、そっちで気抜いてうっかり、なんてことないようにね」
「それはうん、ほんと気をつけます」
快斗くんが笑った声がした後、また連絡する、って電話を切った。
チラッと哀ちゃんを見たら、探偵団バッチを握りしめていたから、きっとコナンくんから連絡が着たんだと思った。
…私は私に出来ることを!
「じゃあやっぱ、スーパースネークからだよな!」
元太くんがそう言った声に、探偵団の他2人も大きく頷いた。
「で、でもさぁ、」
私たちは少なくとも、夜の10時までこの園内にいれば安全なわけで。
後はどうスーパースネークに乗らないようにするか、ってことなわけで。
「今からスーパースネーク並ぶと、お昼になっちゃうじゃん?」
「でも早く並ばないと乗れないですよ」
「そうだよ、時間かかっちゃうもん」
私の言葉に、え?お昼?って釣られたのは1人だけだった(さすが元太くん!)
…1人でもいるなら!!
「でもさ!このIDでどのレストランでも食べ放題なんだよ?腹が減っては戦は出来ぬって言うじゃない?だからまず、」
「あおい、お腹すいたの?」
これ食べる?って飴出しながら蘭が言う。
そうだけど、そうじゃないの!!
「元太くん!うな重食べれるんじゃない?あるかもしれないよ!?」
「マジかよっ!俺食いてぇ!」
「でしょう?」
「元太くん!うな重は後にしてください!」
「えー、俺もううな重食べれるつもりになったし、」
きゅるる
って、タイミングよく元太くんのお腹が鳴った。
「ほ、ほらね!先に食べてから並ぼうよ!だってスーパースネークは3時間くらい並ぶって!」
「えー!?3時間も並ぶの!?歩美もお腹空いちゃうよ…」
ここで探偵団のアイドル歩美ちゃんが同調してくれたから、ならやっぱり、ご飯から食べようか、って話になった。
…よしよし!いいぞ!頑張ってる、私!!
「あおいお姉ちゃん」
そう思った私に声をかけてきたのは哀ちゃん。
「なぁに?」
「…もしかして、誰かから何か聞いて知ってるの?」
ぎっくーーん
「な、ななななななんのことっ」
「…新一さんからここから出るなって聞いた?」
ジーッと私を見てくる哀ちゃんに、これだ!って思った。
「そっ、そう!ちょっと違うけど、そんな感じ!!ここから出るな、って、」
ふむ、と哀ちゃんは呟く。
「だっ、だからとりあえず時間稼ご」
「お昼食べたらきっとスーパースネーク乗りに行くと思うけど、」
「じゃあそこは食べすぎてお腹壊したって言おう!」
親指をグッ!と立てて言った私を、哀ちゃんは無表情に見つめた。
「一応、他の作戦も考えておくわ」
そう言って先を歩くみんなについてレストランに向かった。
「これほんとにどれを選んでもいいんですか!?」
フリーパスIDを見せたら、店員さんにVIPルームに通され、お昼ちょっと前の混み始める頃なのに、広々快適にご飯を食べれることになった。
「いいんだよ、食べよう食べよう。私デザートも食べちゃおう!」
「デザートもいいの!?歩美も食べる!哀ちゃんはどうする?」
「私は別に」
「食べようって!!このパフェ美味しそうじゃん!蘭はどうする?」
「えー?そうだなぁ…。あ!このパンケーキ美味しそう!」
「食べよう食べよう」
とにかくこの場に少しでも繋ぎ止めておけばいいんだ!そう思った私は、メニューの美味しそうな物を順に頼ませようと奮闘することにした。
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bkm