キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

探偵たちの鎮魂歌


爆弾付きのブツ


蘭の言葉通り、夏休み最後の週末も過ぎた平日(混む時に混むとこ行きたくないって言う誰かの意見が採用されたらしい)
おじさん、蘭、少年探偵団のみんな、そして私の8人でミラクルランドに向かうことになった。
8人乗りってことは、後部2列に3人ずつ乗る、ってわけで。
あ、じゃあ蘭は助手席だから、後は女子男子で分かれようか、なんて意見を凄い勢いでもみ消されて、


「あおい姉ちゃんさー、」


2列目に哀ちゃん、私、コナンくんで座るハメになってる。
私がセンターおかしくない??
って哀ちゃんにセンター譲ろうとしたんだけど、私外がよく見える方がいいの、なんて言われちゃったら、どうぞどうぞって端を譲るわけで。
そしたらどちらを選択しても必然的にコナンくんが私の隣になる、ってわけで。


「快斗兄ちゃんと会ってるの?」


また迂闊に答えられないような尋問タイムに突入していくようだった。
ちなみに他の探偵団の子たちが騒がないように、車内は後部座席用モニターで仮面ヤイバーが大音量で流されているから、恐らく誰も私たちの話は聞いてない(唯一哀ちゃんが聞いてるかもだけど、話に交じる気ゼロっぽいオーラむんむんだ)


「ま、まぁ…、友達だし?」
「快斗兄ちゃんてさ、掴みどころのない人だよね」
「え?…うーん、掴みどころない、っていうか、いろいろ考えちゃうから大変だろうな、とは思うけど」
「何考えてるのかわかんない人じゃない?」
「う、うーん…」


不意に快斗くん話をするコナンくん。
世紀末の魔術師の事件が終わった、ってことは、キッドにコナンくんの正体がバレたってことで。
コナンくんはバレたのを知ってるわけで。
…でも快斗くんの話題になるのなんで?


「手先が器用で、身軽で頭の回転の早い掴みどころない人なんて、まるで怪盗キッドみたいだね?」


ね?と、ものすごぉぉぉく可愛らしい小学一年生ぶって首を傾げながら新一くんは言いやがった…。
これは心情的に「言いやがった」で合ってると思うの。


「…で、でもさー、」
「うん?」
「キッドより快斗くんの方がカッコいいじゃん?」
「アレのどこが?」
「えっ!?」


今さっきのは分厚い猫の着ぐるみでも被ってたの!?ってくらい可愛らしい小学一年生だったのに、物凄い、素の新一くんみたいな声のトーンでツッコミ入れられた…。


「あおい姉ちゃんさー、なんで『アレ』が王子に見えるの?僕全然わかんないんだけど」
「あ、あれ、って…」
「あおいお姉ちゃん」


コナンくんのツッコミに、言葉を詰まらせた私に助け舟を出してくれたのは哀ちゃんだった。


「気にしなくていいわ」
「え?」
「彼の行動が理解出来なくてイラついてるだけだから。他人の行動理由まで明確にしたいだなんて、哀れな探偵の性ね」


そう言い、ふふっと笑った左側に座る哀ちゃん。
を、ムッとした顔で睨みつけ、右側の窓の外に目を向けたコナンくん。
に、挟まれてる私…。
…ええーっと?
今のはつまり?
コナンくんは快斗くんがキッドっぽいって思ってる(むしろキッドだって思ってるかも)けど、それに気づいてない私に物凄い悪臭漂う臭わせをぶちまけてきて?
それは快斗くんの行動が理解できなくてイラついてるからだよ、って?
…ねぇ、待って。
コナンくんいつの間に、快斗くん=キッドに確定させたの?
世紀末の魔術師ってそんな話じゃなかったよね?
その前からちょっと、怪しいって思われてるな、とは思ってたけど、今のはすでにがっつり確定させてる発言じゃない!?
これ快斗くん知ってるのかな…。


「うっわー!すっごーい!」
「まるでお城みたいですね!!」


そうこうしてるうちに間もなく午前10時って頃。
ミラクルランド前に到着した。
…大丈夫。
ミラクルランドから出さえしなければ大丈夫。


「あの、失礼ですが毛利探偵でいらっしゃいますか?」
「ああ、はい」
「お待ちしておりました。私依頼人の秘書をしております高田と申します。早速ですがどうぞこちらへ」


そう言って高田さんの案内の下、依頼主ー伊藤末彦の待つ部屋へと通された。


「どうぞ、こちらです」
「…わぁ!」
「すげーー!!」
「ミラクルランドが一望できそうですよ!」
「椅子に座ってお待ち下さい」
「ほら!黙って席につけ!」
「「「はーい…」」」
「…では、少々お待ちください」


外の景色に大興奮な探偵団(+私)を一喝し、みんなで席に着くことになった。
…これがあの無駄にハイテクなイス!!
触りたくないけど、ここで触らなかったら怪しまれるから、蘭が触ったのを確認した後で私も肘掛けに手を伸ばした。


「お待たせしました。これを渡すためにお子さんたちにも来ていただいたんですよ」


そう言いながら部屋に入ってきた高田さんが1人1人に(爆弾付きの)ブツを配りだした。


「なんですか?これ」
「それはミラクルランドのフリーパスIDです」
「えー!?」
「わぁ!すごい!」


高田さんの言葉に探偵団は大興奮するけど、これね、爆弾なの。
うっかりエリアから出ちゃおうものなら、ドカーンなの。
あー…、やっぱり着けるの嫌だな…。
コナンくんの推理は信用してるし、今回は快斗くんに事前に私の覚えてる範囲で伝えてあるから、大丈夫と言えば大丈夫なんだろうけどさ。
それでもドカーンて知ってて着けるのはさ…。


「さ、皆さん。腕につけてください。落とさないようにしっかりとね。失くしてしまうと再発行はできませんよ?このIDは今日1日、ミラクルランドの閉園時間の夜10時まで有効です。食事も飲み物も全て無料なので、思う存分お楽しみください」
「いゃったーー!!」
「ありがとうございます!ほら、あおいも早く着けて」
「…やっぱり私、」
「あ!もしかして着け方わからない?こうしたら簡単に着けられたよ!」

ガチャン

「あーっ!?!?」
「え!?な、なに?」
「…IDが着いた」
「う、うん、着けたよ?ダメだった?」
「……大丈夫…ぐすっ」
「えっ!?どっ、どうしたの!?」
「………なんでもない、ぐすっ」


蘭のバカバカ!
きっと蘭的には、もーお、あおいったらこんなのも着けられないんだから!みたいに思ったんだろうけど、爆弾腕に着けて泣かない人間いないからっ!!
なんて思っても、着けられてしまったのは仕方ないから、蘭に促されるままミラクルランドのゲートをくぐることにした。

.

prev next


bkm

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -