キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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探偵たちの鎮魂歌


始まりのお誘い


「帰る前に1つだけ確認してい?」


屋上から下りてきて、私の部屋の前に着いた時、快斗くんがそう聞いてきた。


「俺のことを知ってた、ってのはわかったんだけどさ、」


快斗くんはあの話を本当に信じてくれてるようだった。
そんなことあるんだ、って。
信じられない話だって自分でも思うし、信じてくれなくて当たり前だと思ってたけど。


「あおいちゃんもしかして、工藤新一がどこにいるかも知ってんの?」


快斗くん、私を信じてくれるんだ…。
なんてちょっとくすぐったいようなほんわかしたような気分になってたところで、マンションの屋上から突き落とされたような感じの発言をされた。


「えっ、な、なんのこと?」
「知ってんだな」
「…しっ、知らないよぉ、やだなぁ、新一くんはたぶんどこかで推理してるんじゃない?ってことしか、」
「あおいちゃん」


ドン!


「工藤新一がどこにいるか、知ってんだよな?」


ドン、と音を立てて玄関扉に片手をついて快斗くんは聞いて来た。


「わっ、わわわわ私っ、」


今っ、快斗くんに壁ドンされてるっ…!?


「俺確か前に聞いたよね?『江戸川コナンと何か関わりあるの?』って」
「…………やっ!ほらっ、それはコナンくんのことを聞かれてるわけで、」
「あー、そういうこと言っちゃうの?」


そう言いながら快斗くんは、もう片方の手も私の体のすぐ脇についた。


「何じゃあ今度から俺はあおいちゃんに『何を知ってるか全部話して』って言えばいいわけ?」
「…っ、いやいやいや、落ち着いて、だってそんな」
「だって、何?」


トン、と、今度は私の足の間に自分の足を入れてきた快斗くん。
…ひぃー!!?
私今股ドンされてるっ!?!?
なんで!?
なんでこんなことにっ!?!?


「ねぇ、あおいちゃん。ずっと聞きたかったんだけど、」
「な、なななななななにっ!?」
「俺と工藤新一、あおいちゃんの中では工藤新一の方が大切なの?」
「そんなわけないじゃん!快斗くんの方が大切でっ、」


そこまで言って、ハッとした。
そう。
私たちは今、おつきあいしてない、ただの友達関係なんだ。
なのにそう言ってしまった私に、快斗くんはニヤリと笑った。


「それ聞けて安心したー!んじゃあ、また連絡すっから!」


そう言ってにこやかに帰って行った…。
玄関扉を開けて家の中に入ると、廊下に倒れ込んだ。
…快斗くんはたぶん本気だ。
私の気持ちを確認した上で、本気でなんとかしようと思った、と、思う。
そしてきっと、本気で半年後、私がまだ「ここ」にいることになったら、もう一度つきあおうって、言うんだと思った。
それが嬉しいような、でも叶わないことなんだからと、どこか寂しくもあり、悔しくもある。
そんな一言では言い表せない切ない思いが胸を埋め尽くした。
そして翌日、蘭から電話が着た。


「それで新一ってばずぶ濡れのまま帰って行ったんだよ?」


昨夜、毛利探偵事務所に新一くんが現れた、と。
信じられないよね、くらいな勢いで蘭は話す。


「本当はね…、笑われちゃうと思うけど、コナンくんが新一なんじゃ、って思ってたんだ」


あー、やっぱり疑ってましたよねー、ってことを蘭は言った。
世紀末の魔術師の事件、てことは、そうだと思うし。


「いや、さすがに新一くんでもムリあるって」
「んー、でも、たまに新一みたいにすごく鋭いこと言うじゃない?」
「いやいや、新一くんがコナンくんみたいに『あれれー?おかしいぞー?』とか『蘭姉ちゃん』なんて言ったら怖いって」
「あ、うん。それはそう」


快斗くんが新一くんに化けたことで、コナンくんと同時に蘭の前に現れたことで、蘭の中の=新一くん説はなくなったようだ。
…ほんとになくなったのかは微妙だけど…。
なくなった、ってより、薄れた、が、正しいのかもしれない。


「あおいは会わなかったの?」
「新一くんに?会わないよー、それどころじゃなかったし!」
「それどころじゃないって?」


それがちょっといろいろあってね、とりあえず友達でいるんだけど、半年後くらいに落ち着いたらもう1回コクるって言われてさ、なんて話しを蘭にした。


「あおいは今も黒羽くんのこと好きなんでしょ?なのに半年待つの?」
「えっ、なん、」
「…夏祭りの日、黒羽くんを見るあおいを見てそう思ったんだけど?」


違った?って蘭に言われた。


「…ちっ、がわない、けどっ、」
「なのに待つんだ?」
「いっ、いろいろあるんだってば!」
「そうだね」


電話越しに蘭がくすくすと笑う。
まさか蘭にこういう言われ方されるとは思いもしなかった(園子だったらわかるけど)


「それはそうと、お父さんにちょっと変わった依頼が来たんだけど」


私が返答に困ってると察したらしい蘭が、別の話題を振ってくれた。


「探偵団のみんなも含めて、ミラクルランドに招待してくれるんだけど、良かったらあおいも行かない?」


蘭の言葉に、思い当たるお話が1つ、あるわけで。


「ミラクルランド、ってさ、」
「ほら、横浜にあるレジャーランドで、厳密にはその隣のレッドキャッスルに呼ばれてるんだけど、その後でミラクルランドで遊べるってチケット貰えるみたいなんだよね。博士が誘われてたんだけど、行けないみたいだから、あおいどうかな?って思って」


間違いない、これは探偵たちの鎮魂歌のお話だ。


「い、いやー、私行かなくていいかなぁ」
「ミラクルランド内の飲食が無料で出来るって言うしあおいも行こうよ。ね?」
「うっ…」


だってさ、よく考えて。
自分から腕に爆弾つけになんて行きたくないじゃん!
やんわり断ろうとしたら、蘭に可愛くお願いされたわけで…。


「探偵団の子たちが嫌なわけじゃないけど、私も話し相手ほしいし」


最もな意見を繰り出す蘭。
私も逆の立場だったらそうお願いすると思う。
大きく1つため息を吐いて、


「わかった、行くよ。ミラクルランド」


爆弾をつけられに行くことを了承した。
そしてこの事件が起こる、ということは、キッドが狙われてるってことなわけで。
じゃあもうバレてるし、遠慮なく忠告しよう、って、快斗くんに連絡をした。

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bkm

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