キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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世紀末の魔術師


The Last Wizard Of The Century


あの後、警視庁の人間はヘリで帰って行ったが、本来非番の「俺」は念のためと言って船内に残ることにした。
もちろん念のためも何もなく、この事件のケリをつけ、何より江戸川コナン…いいや、工藤新一に接触するためだ。
そして8月24日午前、無事東京湾に到着。
園子ちゃんたちはここで離脱。
残りで横須賀に向かうことになった。
横須賀の…あの異名がパスワードに使われている城に向かう。
あの城と、このエッグが揃うことで何かが起こるはずだ。
そして恐らく、その「何か」を解くのは他の誰でもない、この名探偵だろう。
ならば俺がすることはただ1つ。
この名探偵のサポートに徹するのみ、だ。
そして城に到着した俺たちと、少年探偵団も横須賀に到着。
何事かと思い盗み見したら、阿笠博士から何かを受け取ったような仕草をした名探偵。
…アイツもたぶん、メガネを防弾にしたな。
そして城内に入る各部屋を捜索。
やっぱりと言うか当然と言うか、地下へのスイッチは名探偵が見つけた。


「パスワードがあると思うよ?セルゲンさん!ロシア語で押してみて?」
「あ、ああ…」
「思い出!ボスポミナーニエに違いない!!」
「…ВОСПОМИНАНИЕ」
「…あ、あれ?」
「ばるしぇ、にく、かったべか…」
「え?」
「夏美さんの言ってたあの言葉、ロシア語かもしれないよ?」


この城に着いてから、蘭ちゃんがずっと名探偵を見ている。
見ている、と、言うか、疑わしそうにその一瞬の動作も見逃さないとでも言うかのように目を見開いて凝視している。
…おいおい、これバレてんじゃねぇの?
園子ちゃんが以前「長年、良いとこもダメなとこも見てきた上で、それでも好きになる時はなるもんだ」と言っていた。
あれは恐らく、蘭ちゃんのことだろう。
長年、それこそ俺と青子のように過ごして来たけど、それでも蘭ちゃんは…。
だから気づいた、ってのはあるかもしれない。


「これは使えそうだな…」
「ん?今なんか言ったか?」
「いいえ。我々もパスワード、考えましょう。毛利さん」
「そうか!ヴァルシェーブニック・カンツァー・ベカだ!」


セルゲンさんが、ついにそれにたどり着いた。


「それってどういう意味!?」
「英語だとThe Last Wizard Of The Century」
「世紀末の魔術師」


明らかに。
それはもうはっきりと、江戸川コナンの…工藤新一の顔色が変わった。
そしてパスワードを入力すると、地下へと続く道が表れる。
…さぁてこっからは鬼が出るか蛇が出るか、ってところだな。


「私が先頭で行きます。皆さんは後からついてきてください」


まぁぶっちゃけここまではこの間来たからわかる、ってだけだけどな。
このメンバーであおいちゃんが先頭になることはないだろうが、あの子にこんな場所で前にいられると気が気じゃなくなるし。
そう思いながら地下を進んでいたら、どっから来たのか少年探偵団と合流。
哀ちゃんがヤレヤレ、と言うかのような表情をしていた。
…待てよ?
江戸川コナンが高校2年生の工藤新一、ってことなら、この子も実年齢はこの見た目とは違うって可能性もあるな…。
まぁ、それも追々、って奴か。


「行き止まり…」
「通路をどこか間違えたのかしら?」
「あれ?変ですね。大きな鳥だけ頭が2つありますよ?」


そして、前回来た時行き詰まった扉の前にたどり着いた。
さぁ、腕の見せどころだぜ?名探偵。


「白鳥さん!あの双頭の鷲の王冠にライトの光を細くして当ててみて!」


なるほど。
よくまぁこの短時間でわかるよな。
オメーはマジで名探偵だよ。
そしてさらに、地下へと続き、棺の間が表れた…。
眠りの小五郎が夏美さんの了承を得て、棺を開けた。


「遺骨が一体、それにエッグだ。エッグを抱くようにして眠ってる。夏美さん、この遺骨は曾おじいさんの?」
「いいえ。たぶん、曾祖母のものだと思います。横須賀に、曽祖父の墓だけあって、ずっと不思議に思っていたんです。もしかすると、ロシア人だったために、先祖代々の墓には葬れなかったのかもしれません」


この人が、ニコライ皇帝の娘マリアか…。
今回の件が無事終わったら、愛する旦那や家族と共に安らかに眠れるますように。
そんなことを思いながら、手を合わせた。


「それ、マトリョシカなの?」
「…確かにそうかもしれません。中の溝は入れたエッグを動かないように固定するためのもののようです」
「くっそー!あのエッグがありゃー、確かめられるんだが!!」
「エッグならありますよ。こんなこともあろうかと、鈴木会長から借りてきたんです」


そう、これは2つで1つの物。
それがどういう意味を持つのか、きっとここで解明するはずだ。


「セルゲンさん!そのエッグ貸して!」
「またコイツ!!」
「まぁ、待ってください、毛利さん」
「あぁ!?」
「何か手伝うことは?」
「ライトの用意を!」


エッグの仕掛けを見て、やっぱり真っ先に動いたのは名探偵だった。


「ライトの光を細くして台の中に!」
「わかった」
「セルゲンさん!青蘭さん!ロウソクの火を消して!!」


名探偵の指示の元、暗くなった地下室で、台から漏れるライトの明かりだけが、青白く光っていた。
そしてエッグが赤く光って「世紀末の魔術師」が仕掛けた壮大なからくりが姿を見せる。


「エッグの中が透けてきた…」
「ネジも巻かないのに、皇帝一家の人形がせり上がっている…!」
「エッグの内部に光度計が組み込まれているんですよ…」


光が、天井に向かって駆け上がった。


「な、なんだぁ!?」
「こ、これは!?」
「ニ、ニコライ皇帝一家の写真です」
「そうか、エッグの中の人形が見ていたのはただの本じゃなく」
「アルバム」


…なるほどね。
だからメモリーズだった、ってわけか。
確かに「世紀末の魔術師」に相応しい壮大な仕掛けだよ。


「もし、皇帝一家が殺害されずにこのエッグを手にしていたら、これほど素晴らしいプレゼントはなかったでしょう。このエッグは喜市さんの、いえ、日本の偉大な遺産のようだ。ロシアはこの所有権を中のエッグともども放棄します。あなたが持ってこそ、価値があるようだ」
「ありがとうございます。…あ、でも中のエッグは鈴木会長の…」
「鈴木会長には私から話してあげましょう。きっとわかってくれますよ」
「…何はともあれ、これでめでたしめでたし、だ!」


そう言った眠りの小五郎に目をやると、その身体を赤い点が這うように動いていた。


「危なーーーい!!!」
「うわぁぁぁ!!?」


それは一瞬の出来事。


「拾うな、蘭!!!」
「え?」
「らーんっ!!」


懐中電灯を拾った蘭ちゃんを突き飛ばしたボウズ。
直後、あおいちゃんがいた方にレイザーが向けられた。


「きゃあ!?」
「しっ!このまましばらく伏せていてください!」


腕を引っ張り身を伏せさせたことで、一瞬悲鳴を上げたあおいちゃん。
でも直ぐに状況が伝わったようで腕の中で大人しくしていた。
…なんだかこの感じ懐かしいな、とか。
そんな場面でもねーのに、そんなことが一瞬脳裏を過ぎった。


「くっそー!逃がすかよ!!」
「あおいさん、怪我は?」
「あ、な、ないっ、です」


あおいちゃんの怪我の有無を確認して、


「毛利さん!後を頼みます!!」


名探偵の後を追った。
スコーピオンは手榴弾でも持っていたようで、ところどころで爆発を起こしながら城内を逃げている。
…って、ことは、この火災の先にスコーピオンと名探偵がいる、ってことだ。
そして2人を見つけ近づくと、さすがにスコーピオンも自分を追い詰めていたのがガキだとわかり驚いてるようだった。
が、そこはもうガキだろうと容赦しないプロ。
迷うことなく名探偵の右目を狙った。


「ど、どうして!?」


やっぱり防弾にしてたか。
そりゃあそうだろうな。
再び装填しようとするスコーピオンに向け、


パシュッ


トランプ銃の引き金を引いた。
…これは貸しだぜ?名探偵。
そう思った直後、あの放電するおっかねー靴でいつものように一撃を捻り出し、スコーピオンをぶっ倒した。

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