キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

世紀末の魔術師


帰ろう


「ぴったりだ…」
「つまり喜市さんは2個のエッグを別々に作ったんじゃなく、2個で1個のエッグを作ったんですね」


重なった2つのエッグ。
その仕掛けだけじゃ物足りなさそうなのは、やっぱりコナンくん。


「セルゲンさん!そのエッグ貸して!」
「またコイツ!!」
「まぁ、待ってください、毛利さん」
「あぁ!?」
「何か手伝うことは?」
「ライトの用意を!」


完全に今の白鳥警部は快斗くんだな、って。
コナンくんに対する態度を見て思った。


「ライトの光を細くして台の中に!」
「わかった」
「セルゲンさん!青蘭さん!ロウソクの火を消して!!」


真っ暗になった地下室で、台から漏れるライトの明かりだけが、青白く光っていた。


「一体何をやろうってんだ」
「まぁ、見てて」


そしてエッグが赤く光って「世紀末の魔術師」が仕掛けた壮大な魔法が姿を表す。


「エッグの中が透けてきた…」
「ネジも巻かないのに、皇帝一家の人形がせり上がっている…!」
「エッグの内部に光度計が組み込まれているんですよ…」


光が、天井に向かって駆け上がる。


「な、なんだぁ!?」
「こ、これは!?」
「ニ、ニコライ皇帝一家の写真です」
「そうか、エッグの中の人形が見ていたのはただの本じゃなく」
「アルバム」


この世界には本当に魔法使いって存在するんだと思う。
みんなを驚かせ、笑顔にさせる魔法使いが。


「もし、皇帝一家が殺害されずにこのエッグを手にしていたら、これほど素晴らしいプレゼントはなかったでしょう」


そしてやっぱり、これだけの仕掛けを見たとしても、私にとっての世界で一番の魔法使いは…。


「このエッグは喜市さんの、いえ、日本の偉大な遺産のようだ。ロシアはこの所有権を中のエッグともども放棄します。あなたが持ってこそ、価値があるようだ」
「ありがとうございます。…あ、でも中のエッグは鈴木会長の…」
「鈴木会長には私から話してあげましょう。きっとわかってくれますよ」


ここからだ。
私は私にできることをする…!


「何はともあれ、これでめでたしめでたし、だ!」


そう言ったおじさんの体を赤い点が動いていた。


「危なーーーい!!!」
「うわぁぁぁ!!?」


落ちた懐中電灯を蘭が拾った。


「拾うな、蘭!!!」
「え?」
「らーんっ!!」


コナンくんが蘭を突き飛ばして銃撃から守った直後、私のいる方にも赤いレイザーが向けられた。


「きゃあ!?」
「しっ!このまましばらく伏せていてください!」


そう言ったのは白鳥警部で。
白鳥警部が…快斗くんが、私に覆い被さるように助けてくれた。


「くっそー!逃がすかよ!!」
「あおいさん、怪我は?」
「あ、な、ないっ、です」


首を振って、怪我してないアピールをした私に、白鳥警部は1つ頷き、


「毛利さん!後を頼みます!!」


コナンくんの後を追っていった。


「みんな怪我はないか?夏美さん、みなさん、大丈夫ですか?」
「は、はい。大丈夫です。沢部さん大丈夫ですか?」
「え、ええ…」
「蘭、あおい、お前たちは大丈夫か?」
「私は大丈夫。あおいは?」
「わっ、私も大丈夫」


私の言葉に蘭が、良かった、って小さく漏らした。


「何か臭いませんか?」


最初に気づいたのは夏美さん。


「言われてみると、焦げ臭いような…?」
「んー…?俺はわかんねーけどなぁ?」


セルゲンさんもそれに同意するけど、おじさんはたぶん、普段あんなにタバコ吸ってるから多少の臭いじゃ気づかないみたいで…。
でもこのままここにいるのはマズいと思った私は、


「もっ、もしかして、スコーピオンが火をつけた、とか、」


なんて言ってみた。


「いや、まさか」
「でも微かにだけど、確かに焦げ臭いような気がするわよ?」
「…念のため、ここから避難しましょう!」
「そ、そうですよ!このままここに閉じ込められちゃったら大変だし!」


疑うおじさんに、蘭が返事をし、それを聞いた夏美さんが避難を口にした。
私がそれに同意する意見を言ったら、みんな頷き、なら急げ、って、地下から逃げることになった。


「ふぁーー。助かった…」


あのまま来た道を戻るとスコーピオンに出くわすかもしれないからって、少年探偵団が入ってきた道から地上に出ることになり無事地上に戻れた(哀ちゃんがばっちり道を覚えてた!)


「た、大変です!お城が燃えてます!!」


光彦くんの言葉にお城を見ると、いつの間にそんなに燃え広がったのか、きっともう、城内に入るなんてこと出来ない。
あのお城はもうすぐ崩れ落ちる、それくらいの勢いで燃えていた。


「…コナンくんっ!」


歩美ちゃんの短い悲鳴にも似た声が聞こえた。


「「コナンくーーん!」」
「コナーーン!!」
「なんだよ、ウルセェな」


探偵団のみんなが叫んでいた方とは別の方向から、ちょっと煤けたコナンくんが現れた。
…良かった、ちゃんと新一くんも無事だ。


「このエッグ、白鳥刑事がスコーピオンから取り返してくれたよ」
「白鳥が?で、スコーピオンはどうした!?」
「逮捕して車で連行してったよ。スコーピオンの青蘭さんを」
「なにーーーー!?」


スコーピオンの正体に、おじさんが騒ぎ出した。
そうだよね、あんな綺麗なお姉さんが凄腕スナイパーなんて思えないもんね…。


「ねぇ、あおい」


そんなことを思っていたら、蘭が話しかけてきた。


「あおいは、さ、」
「うん?」
「知ってるの?新一がどうしてるのか、って」


この言葉でハッとした。
世紀末の魔術師の事件てことは、蘭がコナンくんの正体を疑うってことだ。


「ど、どうしてるか、って、なに?」


ちょっと声が裏返ったのが自分でもわかる。


「今どこで、何してるのか、あおいは知ってるの?」


ジーッと私を見ながら蘭が聞いてくる。
あ、これ完全に疑ってるよ…、って顔して聞いてくる。


「新一くんならきっと、」
「うん?」
「事件の推理してる」
「あ、うん…」


だよね、と蘭は呟く。
…そうだ、この後新一くんに変装した快斗くんが毛利探偵事務所に行くんだ。
なら、私に出来ることは…。


「なんか疲れちゃったなー!早く帰ろ?」
「…そうだね、帰ろうか」


どこか疑わしそうにしていた蘭は、一瞬で柔らかい笑顔になった。
きっと、今夜蘭の前に現れる。
だから帰ろう、米花町に。
そう思いながら横須賀を後にした。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -