キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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世紀末の魔術師


世紀末の魔術師


昨夜は警視庁の人たちがバタバタとして大変そうだった(ぶっちゃけ他人事だった私)
そして8月24日午前、無事東京湾に到着。
用があるとかで園子と園子パパ、そして西野さんとここでお別れして、車2台で横須賀のお城に向かうことになった(もちろん快斗くん変装疑惑高めな白鳥警部もいる)
横須賀のお城って言ったら、世紀末の魔術師が仕掛けたあのお城だ。
それを生で見れるなんて、ちょっと嬉しい。


「あおい姉ちゃん、なんかそわそわしてない?」
「え!?そ、そんなことないよー!」
「…そう言えば、キッド、どうなっただろうね?」
「え?う、うーん…」


キッドはほら、そこにいるよ、なんて言えないから、


「治療中、とか?」


適当に誤魔化すことにした。
ちなみに車内は何故かコナンくんが、僕あおい姉ちゃんの隣に乗りたい!とか言うから、蘭とは別に乗り込んでる(ものだから、コナンくんの餌食になってる…)


「… あおい姉ちゃんてさー、」
「うん?」
「やっぱり連絡取れるんじゃない?キッドと」
「えっ!?な、なんで!?キッドとは取れないって言ったじゃん!」
「でもさー、園子姉ちゃんはキッドが死んだんじゃないかって、すごい心配してたけど、あおい姉ちゃんは生きてるって前提で話してるよね?なんで?」


チラッと私を見ながらコナンくんが言う。


「なんで、って…」
「なんでって?」
「死ぬわけないじゃん、キッドだし」
「なんだそれ…」


コナンくん、そのツッコミ新一くんが出てる!ってツッコミを入れられてしまった…。


「快斗兄ちゃんは?」
「うん?」
「連絡。してるの?」
「あ、う、うん。昨日メールした、けど?」
「メール着たの?昨日」
「え?う、うん、着たよ」
「ふぅん」


今の流れでその聞き方さぁ、いくら私がバカでも、え?話の流れ的に快斗くんがキッドみたいに聞こえるじゃん、てなるでしょ?
私はほら、知ってるからそんな質問しないけどさ。
もう少し考えて聞いてきなって。
新一くんのほんとこういうところだと思う。
そうこうしてるうちに、横須賀に到着。
少年探偵団を引き連れた博士とも合流し、博士がこっそりコナンくんにメガネ(たぶん防弾にしたメガネ)を渡してるのを確認した。
そして子供たちと別れて、城内に入る話になった。
…よしよし、いい流れで進んでる!
このまま無事話が進んで行きますように…!
騎士の間、貴婦人の間、皇帝の間。
ただの女子高生の私でも、あ、これ高いんだろうなぁ、って感じの家具が並ぶ部屋が続いた。
途中途中でチラッと白鳥警部を見るけど、おじさんや下手したらコナンくんにべったり張り付いてるように感じた。
…そうか、船から降りた、ってことは、快斗くんはもう、新一くんがコナンくんになったんだ、って気づいたはずだ。
ならやっぱり、誰がスコーピオンかわからない今は、コナンくんのサポートに回る、ってところかな…。


「ねぇ、このお城に地下室は?」
「ありませんが?」
「じゃあ1階に曾おじいさんの部屋は?」
「それでしたら執務室がございます」


コナンくんの言葉で、みんなで執務室に向かうことになった。
…いよいよ、地下への扉が開く。
全然関係ない場面でうっかりスコーピオンに狙われないように気をつけるため、ここからは空気になろう、うん。
そして執務室着いて、室内を見て回る。
途中の喜市さんやラスプーチンの写真には私は関わらない…!


「下から風が来てる!!この下に秘密の地下室があるんだよ!…と、するとからくり好きの喜市さんのことだからきっとどこかにスイッチがあるはず…!」


コナンくんがいい感じに地下へのスイッチを見つける。
そのパスワードももちろん知ってるけど、今の私は横須賀を漂う空気。
口出しなんてしない。
だって空気は喋らないし!


「パスワードがあると思うよ?セルゲンさん!ロシア語で押してみて?」
「あ、ああ…」
「思い出!ボスポミナーニエに違いない!!」
「…ВОСПОМИНАНИЕ」
「…あ、あれ?」


違うってー、それじゃないってー。
あるじゃんもう1つ、わざわざキッドがヒントまで出してくれた言葉が!


「ばるしぇ、にく、かったべか…」
「え?」
「夏美さんの言ってたあの言葉、ロシア語かもしれないよ?」


やっぱり新一くんて凄いよなぁ、と思う。
普通結びつかないよ、ばるしぇが肉買った?なんて言葉からパスワードなんて…。


「ばるしぇ、にく、かったべか…?」
「もしかしたら、切るところが違うのかも」
「ばるーしぇにく、かったーべか…うーん…」
「それって…ヴァルシェーブニック・カンツァー・ベカじゃないかしら?」
「そうか!ヴァルシェーブニック・カンツァー・ベカだ!」
「それってどういう意味!?」
「英語だとThe Last Wizard Of The Century」
「世紀末の魔術師」


天才的なからくり細工師、香坂喜市さんを讃えてつけられたその言葉がパスワード。
…そう言えば快斗くん、ここのパスワードのこと知ってたのかな?


「とにかく押してみましょう。ВОЛШЕБНИК
 КОНЦА ВЕКА…」


ボタンが押し終わると、ズズンと床が揺れ始めた。


「ああ…こりゃあ…」
「こんなものが…!」
「でかしたぞ、ボウズ!」


地下へ続く階段が出てきたことで、盛り上がりをみせる。
そんな中でも冷静に、


「私が先頭で行きます。皆さんは後からついてきてください」


白鳥警部が懐中電灯を持って地下へと降りていった。
快斗くん、キッドやってるだけあって夜目が利くと思うし、懐中電灯の明かりだけでも普通にいろいろ見えそう。
そんなことを思いながら後に続いた。
ぐんぐんぐんぐん、地下を進むんだけど、思った以上に地下深いところだった。


「今微かに物音が!」
「スコーピオンか!?」
「僕見てくる!」
「コナンくん!」
「私が行きます。毛利さんは皆さんとここにいてください」


白鳥警部が「コナンくん」の後を追う。
やっぱり、今の白鳥警部は快斗くんで、快斗くんはコナンくん=新一くんて、わかったんだろうな、って思った。
そして予定通り、探偵団のみんなを引き連れ戻ってきた。


「「「このよであなたのあぁいぃをぉぉ〜♪」」」


ご機嫌☆ピクニック!みたいな探偵団が歌いながら地下を進む。
混ざりたい…とか…、薄っすら、ほんとに薄っすら思った。
だってどうせなら楽しく行きたいじゃん!
でも私は今、横須賀の地下を漂う空気だから…!!


「「「あれ?」」」
「行き止まり…」
「通路をどこか間違えたのかしら?」
「あれ?変ですね。大きな鳥だけ頭が2つありますよ?」


そして、扉の前にたどり着く。
もうすぐ、世紀末の魔術師が仕掛けた魔法が見れる。


「白鳥さん!あの双頭の鷲の王冠にライトの光を細くして当ててみて!」
「あ、ああ…」


その言葉でライトを照らしたら、壁画が光はじめて…。


「また揺れてる!?」
「みんな!下がって!!」
「コナンくん!!」
「………すげぇ」
「もっと下があるんだ…」


そして地下の、さらに地下へと続く道を行くと、そこは棺の置かれた間で…。
おじさんが夏美さんの了承を得て、棺を開けた。


「遺骨が一体、それにエッグだ。エッグを抱くようにして眠ってる。夏美さん、この遺骨は曾おじいさんの?」
「いいえ。たぶん、曾祖母のものだと思います。横須賀に、曽祖父の墓だけあって、ずっと不思議に思っていたんです。もしかすると、ロシア人だったために、先祖代々の墓には葬れなかったのかもしれません」


…この人が、ニコライ皇帝の娘マリア。
歴史的に見つかったらあまりよろしくないから、ここに埋葬された…。
きちんと旦那様の隣に埋葬されますように…。
そんなことを思いながら、手を合わせた。


「それ、マトリョシカなの?」
「…確かにそうかもしれません。中の溝は入れたエッグを動かないように固定するためのもののようです」
「くっそー!あのエッグがありゃー、確かめられるんだが!!」
「エッグならありますよ」
「「「え?」」」
「こんなこともあろうかと、鈴木会長から借りてきたんです」


いよいよ、だ。


「さっそく試してみましょう」


いよいよ、世紀末の魔術師の魔法が表れる。

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