キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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世紀末の魔術師


悪運


「快斗ぼっちゃま!」
「よ!ジイちゃん、悪ぃな」
「ご無事で何よりでございます…!」


紅子と別れて、予め合流予定にしていた3番目の候補地で、無事ジイちゃんと合流した。
連絡が途絶えた俺にジイちゃんは気が気じゃなかったようで、会った途端に泣かれた。


「ほら、事前情報もらってた通り右目狙われたけど、防弾で弾いたからダイジョーブだったぜ」
「どなたからの情報か存じませんが、ありがたいことです」


うんうんと頷くジイちゃん。
…そういや、埠頭に落ちるって件だけじゃなく、この右目を狙われるって奴も、紅子じゃなくてあおいちゃん情報なのか?
まぁ…それも、いずれ聞けばわかること、か…。


「それでこれからどうなさいますか?」
「んー…、それなんだけどさ。鈴木会長に仕掛けた盗聴器から、どうやら展示は中止して、一旦東京戻るって話しだし?」


ジイちゃんにほんとに怪我してないかチェックされた後、今後の対策について話し合った。


「ジイちゃんには申し訳ねーけど、東京に戻ってもらえるか?キッドが狙われたことと、エッグの価値からしてもこれで収まるわけねーし、たぶん捜査一課が出てくると思うから、明日にでも警視庁に行こうと思う」
「わかりました。では早速戻る準備をします」
「さんきゅー」


んじゃまぁ、とりあえず疲れたし(打ち身酷ぇし)車内で一眠りするかと、移動中、眠りについた。
そして8月23日、午前10時。
調べたら休暇で現在登庁する心配がない、白鳥任三郎が適任だと思い、ソイツとしてシレッと警視庁に登庁することにした。
変装も済ませ、白鳥任三郎の情報も頭に叩き込み警視庁登庁。
直後、事件の一報が入る。
…ついに人が殺された。
しかも右目を撃ち抜かれて。
…下手したら俺もそうなっていたかもしれないと思いつつ、鈴木財閥所有の客船へ向かった。
まぁ…、そうだろうと思ってたけど、船に着いたらあおいちゃんがいた。
今回は仕方ねーとは言え、マジで事件に巻き込まれやすいよなーこの子。
しかも殺人事件に遭遇率高すぎじゃね?
工藤新一の生霊でも憑いてんじゃねーの?
それが殺人犯呼び寄せてんじゃねーの?
なんて思いながら、船内を見て回った(ついでにいくつか盗聴器をつけた)
捜査一課の連中が捜査してる最中、気になったのはやっぱり名探偵の動向。
明らかに眠りの小五郎はじめ他の連中とは違う動きを見せている。
…一応、後つけてみるか。
そう思い、名探偵の後をつけたら船内にある電話を使ってどこかに電話をするところだった。
確かあの近くにも盗聴器仕掛けたよな…。


「あ、博士?俺だけど。大至急調べてほしいことがあるんだ」


手元の機械を操作すると上手い具合に内容が聞こえてきた。
博士、ってーのは、あおいちゃんが言う「阿笠博士」のこと、だよな、たぶん。


「何ー?右目を撃つスナイパーじゃと?わかった調べてみる。10分後にまた電話をくれ」


名探偵の言葉に思い切り視線を向けてしまった。
…俺の時と、船内で犠牲になった奴の2件を結びつけたな…。
名探偵は一旦そこで電話を切った。
直後、


「っ!!?……気のせい、か…」


思い切りこちらを振り返った。
…やべー、やべー、見過ぎたな。
でも流石だぜ、名探偵。
この短時間でよくまぁこの2件とも「右目を撃つスナイパー」の仕業だって気づいたもんだ。
さすが「俺」が唯一「名探偵」と呼ぶだけあるよ。
「また10分後に」って言ったってことは、10分後にまた連絡を取るんだろう。
博士がどれくらい調べられたか気になるし、このまま2人の会話を聞いてる方がいいか。
本当にその程度の気持ちだった。
俺は常々、悪運の強い方だと思っている。
たまたま白鳥任三郎に変装し、タイミング的にヘリに乗り込むことができ、そしてこのタイミングで江戸川コナンと博士の電話の内容を聞くことが出来たこと。
それは紅子の言うところの「分岐点」て奴を、自分が優位になる方へと進めていたんじゃねーかと、後になって思う。
そして10分後、名探偵は再び受話器を手に取った。
数コールの後に出た博士は、


「分かったぞ、新一!」


驚くべき名前を口にした。
…新一?
今新一って言ったか?
アイツは江戸川コナンて名前だろ?
しかも何の疑問も持たずに本人も「新一」って名前を受け入れてやがる。
そもそも新一、って、


ー昔、お兄さんとあおい姉ちゃんが初めて話した日に、新一兄ちゃんに言ったんだよ。『まさに王子様』ってー


…だいたいおかしいと思ってたんだ。
いくら親戚のガキとは言え、あおいちゃんのことを、しかも俺との出会いの時のことまで話すか、って話しで。


ー優れた芸術家のほとんどは、死んでから名を馳せる。お前を巨匠にしてやるよ、怪盗キッド。監獄という墓場に入れてなー


初めて会った時から「日本警察の救世主」なんて言われてる、あのクソ野郎と同じ目をしてやがった。


ーあおいはオメーと別れて正解だったな。ただでさえ鼻持ちならねぇヤローだと思ってたが、まさか泥棒だったとはなー


探偵なんて呼ばれる奴はみんな同じ目になるのかとも思ったが、そうじゃねぇ。
どういう理屈か知らねーが、紅子の魔法なんてーのも目の当たりにしたんだ。
ある日突然、高校生がガキに戻ったとしても、今さら驚きもしねぇ。
アイツは「同じ目になる」んじゃなく、そもそも本人だったんだ。
公に出るに出られなく、あの子の前に現れないんじゃない。
こんなにも近いところで、いつもあの子のために動いてたんじゃねーかっ…!


「見つけたぜ、工藤新一…!」


思いもよらぬ収穫に、自然と口角が上がっていた。

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bkm

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