キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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瞳の中の暗殺者


トロピカルランド


あおいちゃんが園子ちゃんちに世話になるようになって数日後の夕方、園子ちゃんから電話がかかってきた。


「なんて?」
「だから明日10時半にトロピカルランドのチケット売り場集合ね」


何度も言わせないで、という園子ちゃん。


「は?明日?いや無理だろ。うちまだ学校あんだけど?」
「そんなん休めばいいじゃない」


時間厳守よ、と園子ちゃんは言う。
…いやいやいやいやいや。


「オメー何意味わかんねーこと言ってんだよ?俺とトロピカルランド行きてぇならせめて休み入ってからにしてくれ」
「誰があんたと行きたいって言ってんのよ!あおいのご指名だから呼んでやってるのよ!」


女3人で行こうと思ったのに、と、園子ちゃんはブチブチ言う。
…あおいちゃんのご指名?


「ごめん、言ってる意味が」
「とにかく明日10時半にトロピカルランドね。1秒でも遅れたら不参加と見なすから」


言うだけ言って、通話が強制終了した。
…出かけるのはまぁいい。
でもなんでトロピカルランド?
しかもご指名ってなんだ?
まぁ行くけど。
あおいちゃんがいるなら行くけど。


「まさか前日にテーマパークに現地集合の招集かかるとは思いもしなかったんだけど?」


そして翌日の午前10時半。
園子ちゃんの一方的な号令に従順に従い、1秒の遅れもなくチケットブース前で待ってた俺は健気な男だよ。


「まーまー、いいじゃんいいじゃん。どーせ当日でも来たでしょ?」


ニヤニヤしながら言う園子ちゃんに少しイラッとした。


「実際来てみて、何か思い出しそう?」


蘭ちゃんの言葉から、なるほどあおいちゃんが思い出すきっかけになりそうなところ、ってことでトロピカルランドってなったのかと思った。


「んじゃあさ、とりあえずこの前来た時、あおいが回ったルート行ってみようよ!」


この前、ってのは、確か春に帝丹の連中で行ったアレだよな。
その時のメンバーじゃなくていいのかとも思ったけど、この状態のあおいちゃんに工藤新一や中道がどう出るかも気になるし、今日のメンバーで正解なんだろう。


「あおいちゃん」


手を差し出した俺を、きょとんとした顔で見上げてきた。
…ちょっと生気がないけど、やっぱり可愛い、相変わらず可愛い。


「これはね、こうするんだよ」


手を握った俺に、


「…」


小さく、でも確かに、あおいちゃんは微笑んだ。


「ミステリーコースタぁ?」
「何よ、不満なの?」
「いや不満って言うか、そこアレだろ?殺人事件があったっていう。それあおいちゃんにとっては、トラウマなんじゃねーの?」
「まぁ、確かに」
「パスだ、パス!別のにしよーぜ」
「あ、じゃあホーンテッドハウスとかいいんじゃない?あの時、あおい喜んでたし!」


て、ことで、トロピカルランド内を巡っていた時。
着ぐるみを着た怪し気な人を、いつかの探偵ボウズの仲間たちが捕まえていた。


「オメーら、すげーじゃん!」
「「「いやぁ、それほどでもぉ」」」
「少年探偵団がいて、心強ぇな」
「「「えへへへへー」」」


なんでも「あおい姉ちゃんを守り隊」を結成してたんだとか。
殺人鬼相手に危ねぇことするんじゃねー、とも思うが、助けられたのは事実だし、少年探偵団を褒め称えた。
そして犯人を刑事が連れてった、ってことは、心置きなくパークを楽しめる、ってわけで。
そーいや、結局あおいちゃんとテーマパーク行ってなかったな、とか。
そんなこと思った。


「せっかく来たんだから、アトラクション全制覇なつもりで回ろうぜ?」


俺の言葉にあおいちゃんがピクリと反応したのがわかった。


「あおいちゃん、どうした?疲れた?どっかで休む?」
「…いえ、大丈夫…です」
「無理しないでね」
「…はい」


あおいちゃんは疲れたわけではないっていうけど一応、様子を気にしつつ、パークを巡ることにした。
そしていくつかアトラクションを堪能したら、すっかり日も暮れていて。


「あの日は雨が降ってきちゃったから、最後のパレード見なかったけど、せっかくだし今日は見ていこう?」


蘭ちゃんの言葉で、ナイトパレードを見る流れになった。
見物客も増えてきて、もうすぐパレードの列が来る、という頃、


「あおいお姉さん、あぶなーい!!」
「犯人が狙ってます!!」
「姉ちゃん、逃げろっ!!」


探偵団の声が辺りに響いた。
…犯人が狙ってる?
犯人が逃走したのか!?
そう思って辺りを見回した時、隠そうともしない殺気と銃口をこちらに向けている人間が見えた。


「危ねぇっ!!」


あおいちゃんを背中に隠した瞬間、左腕に強い熱を感じた。
直後、痛みがやってきて弾に当たったことがわかった。
銃弾によろけて膝をついた俺と犯人の間に、蘭ちゃんが割って入って犯人のいると思われる方向を睨みつけた。


「黒羽くん!?ちょっ、大丈夫!?」
「お兄さん、大丈夫!?」


園子ちゃんや探偵団が俺に駆け寄ってきた。
右手で傷口を抑えてるものの、血が溢れて出しているのがわかる。


「おい、どーなってんだよっ!?」


最後に現れた探偵ボウズ、江戸川コナンにそう叫んだ。


「犯人じゃなかったんだよ、高木刑事が捕まえた人は!それよりあおい姉ちゃんは!?」


ボウズのその言葉に辺りを見回すけど、あおいちゃんの姿はどこにもなく。


「クソッ!」
「ちょっ、黒羽くん!先に手当しなってっ!!」
「あおいちゃん探すのが優先だろ!?」
「駄目よ。恐らく大丈夫でしょうけど、万が一弾が体内に残っているとしたら、早く取り出さないといけないわ。あなたの治療が優先よ」
「誰だよ、このガキ…」
「哀ちゃんも探偵団の仲間だよ!」


探偵団の1人がそう言う。
…この子も探偵ボウズのお仲間かよ。


「あおいは今メガネのガキンチョと蘭が探しに行ったし、うちのボディガードや警察の人間も探してんだから、とりあえずこっちはこっちで、その腕どーにかしなって」


園子ちゃんが言うことは最もだ。
今の俺じゃああおいちゃん捜索も、犯人追跡すらも足手まといになっちまう。
…だからって手をこまねいて待ってるわけにはいかねーだろ!?


「園子ちゃん!」
「な、なにっ!?」
「ボディガードいるんだよな?だったら人気のない場所探させろ!」
「え?で、でも、人がいない方に逃げるわけ、」
「また誰かが犠牲になるかもしれねーだろ!?記憶があろうがなかろうが、そんな可能性ある方法選ぶような子じゃねぇよっ!!」
「…わ、わかったわ!」


園子ちゃんが電話をかけ始めた。
その後、合流した警視庁の人間に医務室に行くように言われて(何故か)探偵団つきそいの元、医務室に向かった。
…たぶん、今ここにいる中で1番最初にあおいちゃんを見つけられる可能性があるのは、あのボウズだけだ。


「くそったれ…!」


血だらけになった右手を見ながら、自然とそんな言葉が口から漏れていた。

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bkm

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