キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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誕生日直前の、


ばいばい


博士がこの間の旅行(というか発明品の修理に行った)のお土産あるから寄ってくれ、って言うから、学校が終わった後で博士の家に行った。
そしたら階段から落ちて腰を打った博士が痛さに悶絶していた。
哀ちゃんは救急車を呼ぶって言うけど、そこまでじゃないって言う博士。
私にお茶飲んで行って、ってお茶を出してくれたから、そのまま飲んでいたら、よっぽど痛いのか、博士の顔色がどんどん悪くなっていって。
やっぱり病院行こう、って、救急車に乗りたくない博士を説得して私がタクシーで連れて行くことになった(哀ちゃんじゃ博士を支えられないから)


「お、重っ…」
「すまんのぉ…」


肩を貸してタクシーに乗り込むけど、博士…痩せよ?って言う重量がのしかかってきて、診察が終わる頃には私もクタクタだった。
痛み止めも効いてきて、かなりゆっくりだけど普通に歩けるようになった博士。
薬は自分で貰ってくると言うから、その間にタクシーを見に行った時だった。


「快斗くん?」
「… あおいちゃん?」
「「なんでここにいるの?」」


こんなところにいるわけないのに、見慣れた姿が見えたから思わず声をかけた。
…のが、間違いだった。


「快斗ー、やっぱり青子も行くよ」


快斗くんの後ろから、中森さんが現れた。
なんで?とか、どうして?とか。
そんなことを思うより先に、中森さんがヘルメットを持っているのに目がいって。
それは快斗くんがバイクを買った時に「あおいちゃん専用ね」って一緒に揃えてくれた、快斗くんのバイクに乗る時に私がいつも被っているヘルメットだった。
その後は何を思ったのか、どうしてそう思ったのかは、正確なところは覚えてないけど…。
ただ一言、あーあ、やっぱり、って。
悲しいとか悔しいとか、そんなことじゃなくて。
「やっぱり」そうなるんだ、って。
そんなこと思った気がする。
博士を家に届けて自宅マンションに戻ってしばらくしたら、来るだろうな、って思っていた通り、快斗くんから電話がかかってきて。


「はい」
「あおいちゃん!…良かった、出てくれて」


たぶん、きっと、それまでだったら電源自体を切って、快斗くんとの連絡を取らない選択をしたと思う。


「今日さ、青子のオヤジさんが撃たれ」
「快斗くん」


でもそれじゃあきっと、いつまで経っても同じことの繰り返しだ。


「もう無理だよ」
「ち、ちょっと待って!俺の話し」


もうすぐ快斗くんの誕生日だから、あと半年とちょっと。


「今までつきあわせてごめんね」


ほんとにそれだけで、良かったんだけど。


「楽しかった」


きっと私は、欲張りすぎたんだ。


「ありがとう」


快斗くんに好きになってもらえたから、ほんとは快斗くんが…この世界の黒羽快斗と言う人が、誰を好きになるのかわかっていたのに。
ずっと昔から知っていて、それでもここに来たのは私なのに。


「ばいばい」


いつか本当に、快斗くんとさよならする。
その時が来たら、泣いちゃうかもな、って思っていた。
でも実際それを口にしても、涙も出ない。
いろんな快斗くんを知って、どの快斗くんもカッコいいし大好きだけど、これだけは私は本当に「受け入れられない」んだと思う。
なぜなら私も「やっぱり」わかっていたんだと思うから。
遅かれ早かれ、「そうなるんだ」って、わかっていたんだと、思うから。
だからなのか、


「ははっ…」


涙も出ない自分自身が、どこか他人事のようにすら思えて笑えてきた。
通話を終わらせた私は、快斗くんの番号を電話帳から消した。

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bkm

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