キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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誕生日直前の、


でも娘ではないから


「あおいちゃーん!久しぶり!」
「お母さん!お久しぶりです…!」


ブルーワンダー事件から数日後、快斗くんのお母さんがどこかから帰ってきた。
せっかく帰ってきたんだから(快斗くんに内緒で)美味しいの食べに行こう、って誘われた私は、お母さんとご飯を食べに行くことになった。


「あおいちゃん、元気だった?」


お母さんは今回パリにいたらしく、日本食がいいと言われたからお寿司を食べに行くことになった(しかも廻らない!)
快斗くんいると行けないから、と言われたら断れるわけもなく、一緒にお寿司屋さんに入った。


「は、はい!お母さんも元気そうで良かったです!」
「ありがとー!そんなこと言ってくれるのあおいちゃんだけよ」


笑うお母さんの顔はやっぱり「お母さん」に見えないくらい綺麗だと思った。


「快斗と仲良くやってくれてる?」
「あ、はい!それはもう」
「そ?」


だって私たち高校生なのに温泉旅行になんて行っちゃったりしちゃったりなんて言えないけど、何かを感じ取ったのか、お母さんはフフフと笑っていた。


「でもさすがに毎回快斗抜きでご飯食べに行くのはあの子に悪いから、今度はうちでご飯食べよっか?庭でバーベキューもいいわよねー」


準備は快斗にやらせればいいし、とお母さんは言う。
何それ楽しそう、なんて、少し前までは思ったのかも、しれない。
でも「うちでご飯」て言うのはつまり、快斗くんちでご飯てことで。


「あ、あー…。…そ、れは、ちょっ、と…」


例えばその場しのぎで「いいですねー」なんて言ってみようものなら、相手はあのフッ軽快斗くんのお母さんだ。
なら今週末で!なんてことになりかねないと思った私は、言葉を濁して伝えた。


「え?なんで?あおいちゃん、お肉好きよね?」
「お、肉は、好きだけど、」
「じゃあなぁに?ほんとは快斗と何かあったの?」
「う、い、やぁ…、なにかってほどでも、」
「やっぱり何かあったのね?あの子何したの?」


お母さんの中でまるで確定されていたかのように「やっぱり」って聞いてきたから、えっ、てお母さんを見たらすごく心配そうな顔してこっちを見ていた。


「や!ほんとになにしたってわけじゃなくて、」
「…そうね。…私が快斗の母親だから話しにくいのよね」
「え、」
「あおいちゃんをまるで娘のように感じていたから、なんでも言ってくれると思ったのに…。そうよね、私、快斗の母親だものね。言い難くて当たり前よね」
「まっ、待ってください!そんなことないです!私もお母さんがすごく優しいから甘えちゃって、」
「なら何があったか話してくれる?」
「えっ!?」


さっきまで。
ほんとにさっきまで、お母さんは悲しそうな顔をしていたのに、ニッコリと笑って私を見ていた。


「あおいちゃん?」
「………………じ、じつ、は、」


あ、これ逃げられない奴だ(しかも目の前にはお母さん奢りの高級なお寿司)と思った私は、渋々とお母さんにあったことを伝えた。


「部屋に女の子…」


私の言葉にお母さんがびっくりした顔をしたところで、お母さんの顔を見れなくなってしまった私は、そこから下を向いて話していた。


「ね、ねぇ、あおいちゃん。それもしかして青子ちゃんていうあの子の幼馴染の、」
「知ってます。…快斗くんも言ってたし、私も中森さんだと思ったし、」
「で、でしょう?あの子と青子ちゃんは、あおいちゃんが思うようなことはないと思うし、青子ちゃんもそういう子じゃないから、」


お母さんは私を「娘のように」思ってくれてる。
でもやっぱり快斗くんのお母さんだし、何より快斗くんの幼馴染なだけあって、お母さんとの面識も、中森さんの方が長いんだよな、って、思った。


「わ、わかってます。2人には当たり前のことなんだ、って、思います。でも、やっぱりちょっと、それは私は嫌だったし、…行きたくないな、って」
「……そう」


俯いて話しているから、お母さんがどんな表情で言ったかはわからないけど、ごめんなさいね、と言ってきた。


「じゃあお肉はお肉で、今度3人で食べに行きましょうか!」


その後すぐ、お母さんがいつもの声のトーンでそう言ってくれた。

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bkm

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