キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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怪盗キッドの驚異空中歩行


派手には派手を


怪盗キッドに告ぐ

貴殿の所望するビッグジュエル
「大海の奇跡」を潮留に在する
我が大博物館の屋上に設置した
手中に収めたくば取りに来られたし

鈴木財閥相談役 鈴木次郎吉


「マジかよ…」


あおいちゃんから聞いてた鈴木次郎吉のキッドへの挑戦状。
「気づかなかった」でスルーしてしまえ、くらいなつもりでいたのに、まさか朝刊の見開き使ってデカデカと挑戦状出されるなんて思わなかった(しかも一社だけじゃなく、少なくとも三社で掲載されてる)
これ気づかなかったで済ましたら「キッドは世情に疎い」ってレッテル貼られちまうじゃねーか…。


「お受けになりますか?」
「こんな熱烈にラブコールされてんのに、受けなかったら男が廃るだろ」


急遽ジイちゃんと合流して、予定にはなかったブルーワンダーを盗む作戦会議を開いた。


「ジイちゃん、ヘリの操縦できるよな?」
「ええ、可能です」
「ど派手なのが好きなじーさんぽいし?どーせなら『ブルーワンダー』の名の如く、こっちも派手に行こうぜ」


ブルーワンダーの名の如く、大空の奇跡として派手に登場してやろうじゃねーか。
そこからは下見の日まで、次郎吉について調べたり、鈴木大博物館について調べたりと忙しなく動いた。
その間あおいちゃんとはまるで空気を読んでるかのように、簡単なメールでのやり取りのみで済んでいた。
そのやり取りの中で、そうだろうと思っていたが、園子ちゃんに誘われたから現地に行くことがわかった。
…そーいや、あおいちゃん、真田一三のマジックにはイマイチだったけど、キッドが前に見せたマジックには大喜びしてたよな。
なら現地で見れる今回も喜んでくれそー、なんて。
そんなこと思っていた。
そしてブルーワンダー犯行予告前日の昼過ぎ。


「ではぼっちゃま、寺井は一足先に行ってまいります」
「おぅ!ジイちゃん、気をつけてくれよな」
「はい、ありがとうございます。ぼっちゃまもお気をつけて」
「いつも言ってっけど、俺1人ならどーとでもなるから、ヤバくなったら俺のこと気にせず即逃げてくれよ?」
「その言葉、ぼっちゃまにそのままお返し致します」
「ははっ!了解了解!んじゃあ、ジイちゃん、手筈通り頼むわ」
「かしこまりました」


次郎吉お抱えの撮影隊に潜入するジイちゃんは俺より先に現場に向かう(もちろん、正規の人間を眠らせてジイちゃんを変装させ入れ替わる形での潜入)
俺も俺で最後の確認を終えてその時を待った。


「視界良好、風向き良し。目指すは鈴木次郎吉所有のビッグジュエル、ブルーワンダー。さぁて、今宵も参りますか」


黒い衣装を身に纏い、仕掛けもばっちりだ。
んじゃあ、ど派手に登場と行きますか!
ボン!と言う音と共に煙幕で身を包み、その間に黒い衣装を脱ぎ捨て、キッドの衣装を着た俺が今まさにハンググライダーから空中に降り立った、ように見せかけた。
何もない空間に浮いてるかのように降り立ったキッドに、地上から歓声が上がる。
…大騒ぎしてっけど、まだまだこれからだぜ?


「Ladies and gentlemen!さて、今宵の前夜祭。我が肢体が繰り出す奇跡をとくとご覧あれ!」


一歩、そして一歩と、空中を歩いて鈴木大博物館に近づいて行く。
この距離なら1分ちょい、ってところだ。
長年弓道をしていたから、体幹には自信がある。
多少の風くらいじゃブレることはないはずだ。
そしてそのまま歩き続けて後数十秒ってところで、ブルーワンダーは突如回転し、その姿を博物館内に納めた。
…ほんっと、いちいち金をかけて目立つことが好きなじーさんだ。


「さて、前夜祭はここまで。明晩20時、再び同じ場所でお会いしましょう」


その言葉と共に、煙幕を出し、黒い衣装に変え即座に真上のヘリに回収してもらう。


「お疲れ様でございます」


次郎吉じーさんと通じる無線を切った後、ジイちゃんが労いの言葉をくれた。


「すっげー金かかってる仕掛けだったな」
「鈴木財閥相談役ですから」
「もっと他に使い方ねーのかよ」


自分はどーなんだ、って言われるかもしれねぇが、俺はヘリ代も次郎吉じーさん持ちだし、ほぼほぼ手持ちの道具しか使ってねーから登場こそ派手でも、金自体はかかっていない。


「明日は予定通りですか?」
「おー、そのつもり。また頼むわ」
「かしこまりました」


今日のキッドのパフォーマンスでじーさんも満足しただろ。
明日はわざわざこんなことせず、楽に奪い去って行くつもりだ。


「…そーいや、現場にいたな、あの探偵ボウズも」


明日、は、話す機会ねぇか…。
工藤新一の行方について、現在1番知っている可能性の高い存在、江戸川コナンとどう接触するか…。
少し考える必要がある。
そんなことを思いながら前夜祭は終わった。

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bkm

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