キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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怪盗キッドの驚異空中歩行


前夜祭!


快斗くんがうちに来た翌日、次郎吉さんが新聞の見開きを使って、キッドに挑戦状を出した。
新聞を見ない私に、園子速報がケータイに入ってきて知ることとなった(画像つき)
これをデカデカと広告できる鈴木財閥の力はやっぱり凄いと思う。
そしてもちろん、快斗くん、キッドからの返事は、

あなたの提案 快く承ります
決行は次の土曜20時
その前夜に下見する無礼をお許しください
怪盗キッド
P.S.
Blue Wonderの名の如く
歩いて頂きに参上しよう…

OKなわけで。
予定通り、歩いて参上することになった。


「来るでしょ?」
「もちろん!」
「だよね!」


園子から来るならおじ様に伝えて中に入れるようにするから、って連絡がきた。
もちろん私はOKを出し、園子と蘭、そして小五郎おじさんとコナンくんとで見に行くことになった。
快斗くんとは下見までに3日しか猶予がなかったからか、忙しいようで、この日から電話ほんの少し(10分もしない程度)ほぼメールっていう、いつもの犯行前パターンになっていた。
…本人気づいてなさそうだけど、ぶっちゃけこういうところで怪しむ人は怪しむと思うんだよね。
知っている私はもちろんツッコミ入れることもせず、邪魔もせず、な、適度なスタンスを保つよう心がけている。
そしてキッドの下見当日の今日、私は蘭たちと現場に来ていた。


「コナンくんは、キッドの犯行に興味あるの?」


さり気なーく、コナンくんに目線を合わせて尋ねてみると、


「泥棒には興味ないけど、キッドには興味あるよ。すごくね」


よしよし、順調順調、と言う返事をしてくれた。


「あおい姉ちゃんは?」
「うん?」
「キッドの犯行に興味あるの?それとも、キッドに興味あるの?」
「え?…うん、まぁ、キッドにも、キッドの犯行にも、興味、ある、ね…?」
「ふぅん」


コナンくんの問いは「キッドの犯行」に興味があるのか、「キッド自身」に興味があるのかというもので。
似ているようでなにか違う気がすると嗅ぎわけた私はとっさに、どっちにも興味あると答えた。
…ものの、コナンくんの返事はちょっと…、なんて言うか…、その答え俺は納得できねーわ、っていう新一くんの圧を感じるものだった。
なんかコナンくん、…新一くんがおかしい。
いや、新一くんはいつもちょっとおかしいから、いつも通りと言えばそうなんだけど、この間の黄昏の館から帰る時のことといい、明らかに、明らかに「なにか」を疑っている。
それが何なのかわからないけど、私は知っている。
これ絶対、疑われたままだとマズい奴だ、って。
どうしよう、どうしたものか、と思っていたら、


「あおいー!らーん!!」


園子と次郎吉さんが派手に登場した。
この間も思ったけど、あのサイドカー、一度乗ってみたい…!
しかも次郎吉さんのバイク、よく見たらハーレーだ。
さすが金持ち…!!


「ねぇねぇ!怪盗キッド、もう現れた!?」
「まだ来てないよ」
「よし!間に合ったわね!!」


キッド様になんとしても会いたい園子は、私の返事にガッツポーズした。


「おじ様!蘭たちと一緒にいるこのちょび髭のオジサンが蘭のパパの眠りの小五郎さんよ。こっちの小さいのがコナンくん」
「ちょ、ちょび?」
「おお。お噂はかねがね」
「…いやー、それほどでもぉ」


おじさんは次郎吉さんに認知されてたことにご満悦だ。
眠りの小五郎も、だいぶ有名になったもんなー…。


「すごーい…」
「まるでTV局の中継車だ」


そして私たちは次郎吉さんの自伝映画のために用意された中継車のような車にみんなで乗り込んで、キッド登場を待った。


「あ!来たみたいだよ!」


画面の1つをコナンくんが指差して叫んだ。
…快斗くんは青空が似合う。
青空の下、柔らかく笑ってる姿が似合う人だ。
でもキッドは、本当に月がよく似合うと思った。
快斗くんとは違う、不敵な笑みを浮かべて月夜に降り立つ姿が本当によく似合う人。
そう思ってしまうくらいに悠然と、月を背にしてキッドが現れた。


「きゃー!!来ちゃう!ねぇ、来ちゃうよ!キッド様がっ!!」
「園子、盛り上がりすぎ…」
「だってやっと間近で見れるかもしれないチャンスなのよ!?」


興奮する園子に、蘭が苦笑いした。


「今夜はただの下見。それにきゃつは歩いてくると予告した。拝見しようじゃないか!月下の奇術師と謳われた大泥棒の出方を!」


次郎吉さんの言葉の直後、煙幕がキッドを包んだ。


「うそ…。嘘でしょ?」
「うわぁ!キッド様!キッド様が浮いてるわよ!!す、すごーい!!」


これがキッドの、ううん、快斗くんが使う「魔法」だ。


「キッド様やるじゃーん!ね!?」


大盛り上がりな園子。
そりゃあそうだよ。
誰がやってると思うの?
快斗くんだよ?
キッドは快斗くんなんだよ?
快斗くんは、世界で1番の魔法使いでしょ!


「Ladies and gentlemen!さて、今宵の前夜祭。我が肢体が繰り出す奇跡をとくとご覧あれ!」


キッドの言葉に観衆が大歓声を送る。
それだけ怪盗キッドはすごいってことで。
いつかいつか、これが「怪盗キッド」じゃなく、「黒羽快斗」への声援になれば、なんて。
そんなことを思った。


「え、ええ、ちょっ、私のキッド様が、あ、歩いてるよ!?」
「すごい…」


仕掛けを知っていたとしても、快斗くんのマジックは「魔法」としか言えない。
だからやっぱり私は、尊敬するマジシャンは?って聞かれたら、何度でも、ほんとに何度でも、「黒羽快斗です」って答えると思う。
一歩、一歩とブルーワンダーに近づいていくキッド。


「怪盗キッドはあと数十秒でブルーワンダーのところへ!」
「おじ様!!」
「うー…」


ブルーワンダーをどうするのかで、次郎吉さんが唸り声を上げた。


「相談役。例の仕掛け、作動させた方がよろしいんでは!?」
「…止むを得んな」


その言葉と共に、ブルーワンダーが博物館の中へと収納された。


「さて、前夜祭はここまで。明晩20時、再び同じ場所でお会いしましょう」


その言葉と共に、キッドは再び煙幕に包まれその姿を消した。

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bkm

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