キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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10年後の異邦人


魔女への貸し


「はい、快斗くんチョイスのお土産」
「ありがと、あおい!」
「温泉まんじゅうってどこのババアよ」


温泉から帰ってきた次の日の学校で、蘭と園子にお土産を渡したら、可愛くお礼を言ってきた蘭と違って、園子は温泉まんじゅうに不服そうだ。


「てゆーかさぁ、園子あれ酷い」
「なにがー?」


不服そうにしながらも、速攻箱を開けて食べ始めるあたりが園子だ。


「聞いてくれる?園子ってば快斗くんに渡して、って小さな袋くれたんだけど、中身精力剤だったんだよ!」
「!?」


蘭にそうボヤいたら、蘭が目が飛び出るくらい驚いた顔をした。


「いーじゃない、別に!どーせ、黒羽くんのことだから爆笑してくれたでしょ?」
「爆笑もしたけどさぁ、あれほんとにびっくりするくらい効果すごくて翌日の予定全部なくなったんだよ?プレゼントくれるなら、もうちょっと考えてよ」
「「…」」


私なんて昨日眠すぎてほぼほぼ記憶ないくらいお疲れだったんだから、と思ってそう言ったわけだけど。


「ねぇ」
「うん?」
「まさかと思うけど、使ったの!?」
「え?そのつもりで渡したんでしょ?」


私の言葉に、蘭はさらに顔を赤くして、園子はこの上ないほどニヤけた顔をした。


「あの尻フェチ、飲んでくれるなんてやるじゃない!」
「園子、人の彼氏に…」
「それで!?どーだった!?あの精力剤!!」


大興奮の園子と真逆に、蘭が引き気味に苦笑いしていた。


「気になるなら京極さんに飲ませたらいーじゃん」


私の言葉を聞いた瞬間、園子は顔を真っ赤にさせた。


「ま、真さんは、そーいうのはいいのよ」


ゴニョゴニョと口篭る園子。
そういうことに興味ありありなくせに、いざわが身ってなると尻込みしちゃう。
園子のこういうとこ、可愛いと思う。
そして放課後。
筋肉痛が1日で治るわけなくて。
ダルいなー、帰って寝ようかなー、なんて思ってた時。


「なんか顔の怖い人が、」
「え?変質者?」
「こわーい」


玄関付近で騒いでる人たちがいた。
顔が怖い変質者とか嫌だなー、って思って校門に向かったら、


「あれっ?紅子ちゃんの、」
「お待ちしてました」


紅子ちゃんの…下僕?執事?の人が私の出待ちをしていた(何度か紅子ちゃんと会ってるから私に対する面識あり)
何事かと思ったら、なんでも紅子ちゃんが熱を出したんだとか。
弱いところを見せない紅子ちゃんはこの執事さん(そう言われた)にも看病させないらしく。
自分は駄目でも「友人」という枠組みの私になら看病されてくれるんじゃ?と思ったらしく、私のところに来たらしい。


「いやー、でも紅子ちゃん私にも看病させないと思いますよ」


って、一応断りを入れたけど、それでも来てほしそうだったから着いて行くことにした(手土産にスーパーに寄ってもらって桃の缶詰を買った)
だってほんとに熱出て大変なのに、誰にも頼れない(頼らない?)のはさすがにしんどいと思うから。


「紅子ちゃん?入るよ?」


お家に着いて、紅子様の部屋です、って通されたところの扉をノックしてから開けたんだけど。
そこはもう、女子高生の部屋とはかけ離れた、お化け屋敷とかでも通りそうな薄暗さのある部屋だった…。
…これもう、この部屋の環境が病気起こさせてるんじゃないの!?


シャッ!


カーテンを開けて窓を開けて、空気を流し始めたら、


「…ん…」


紅子ちゃんが目を覚ました。


「起きた?熱大丈夫?」


ペタッと額に触ると、確かにちょっと熱い気がする。


「あなた何してるの」
「友達のお見舞いだよー」
「帰って」
「この部屋の空気入れ替えたら帰る帰る」
「そんなことしなくていいから帰って」
「あのねぇ、紅子ちゃん。こんな空気が淀んでる部屋、元気になろうとしてもなれないって!ちゃんと毎朝窓開けてお日様の光浴びないと元気になれないんだって!」


そう言った私に、紅子ちゃんは深いため息を吐いた。


「別に元気にならなくてもいいから」


例え熱が出ていようが、あまりにも紅子ちゃんが紅子ちゃんで、ため息が出た。


「いっくら紅子ちゃんが魔女でも、身体は大事だよ?健康じゃなきゃなんにも出来ないの!だから最低限のことはしなきゃだって」
「余計なお世話よ。あなたには関係ないんだから帰っへちょうらい」


ぐいっ、と、紅子ちゃんのほっぺをつねったから、語尾がおかしくなっていた。


「紅子ちゃんには関係ないことでも、私は不健康そうな生活してる病気の友達そのままにして帰るなんてこと出来ないから」
「…」
「執事さんだって心配してるんだし、少しは看病させてあげなよ」


そう言った後で、執事さんに渡された薬をサイドボードに置いた。


「何が目的?」
「…紅子ちゃん、ほんとに友達いないんだね」
「なんですって?」
「あのねぇ、病気の友達看病して当たり前なんだよ。目的とかそんなのないの。わかる?なんの見返りもいらないから、私のところまで助け求めにくるくらい心配してくれてる執事さんも可哀想でしょ?わかったら薬飲んでいっぱい寝て、早くよくなってよ」


私の言葉に心底不服そうな顔をしたものの、


「この借りは必ず返すわ」


呟くようにそう言った。


「じゃあそのためにも早く元気にならなきゃでしょ?ほら、薬飲んで」
「…その薬苦いから嫌いなのよ」
「わっかる。苦い薬って嫌だよねー。でも飲まなきゃ桃の缶詰食べさせないからね?あれ私が熱出た時にお母さんが買ってきてくれてたんだけど、熱出た身体に桃が美味しいんだよ」
「…はぁ」


心底めんどくさそうに、紅子ちゃんは身体を起こし、薬に手を伸ばした。

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bkm

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