■タンデムベルト
園子ちゃんがくれた精力剤の何がスゲーって、イッたばっかでも、すでに次をフルスイングできるくらいな状態になってるあたり、マジでスゲーし、エグいと思った。
こんなん市販で売ってんの?
ヤバくね?
それともあれか?
鈴木財閥の財力結集させた成果か?
それくらい効果がエグいドリンク剤だった。
ピリリリリ
「……あい、」
「黒羽様、おはようございます。ご朝食の準備が出来ておりますが」
「あー、今行きまーす…ふぁあ…」
結局落ち着いてきたのが明け方4時過ぎ。
その後もまぁ…まぁ、って感じで寝たのは6時半頃。
そして現在8時、チェックインの時に予約した朝食の時間てわけだ。
「あおいちゃーん、ご飯だってー」
「…」
俺の方が朝は弱ぇんだけど、今日に至ってはあおいちゃんの方が完全に死んでる。
当然と言えば当然だ。
「あおいちゃーん、ほら、朝ご飯だぜー」
「…んー…」
(完全に俺のせいで)全く目が開かないあおいちゃんに、服を着せてやって、髪もサッと梳かしてやって朝食会場に行った。
「おはようございます」
「すみません、遅くなって」
「大丈夫ですよ。お席あちらになります」
あおいちゃんはご飯を食べながらもウトウトしてる。
…元々体力ねーからなぁ。
「あおいちゃん、ダイジョーブ?」
朝飯も食べて部屋に戻ったんだけど、あおいちゃんは瀕死だ。
「ちょっ、と、寝る、ね」
「うん。寝よっか」
そう言うだけ言って、あおいちゃんは秒で夢の中へ落ちていった。
…マジでエグいなあの精力剤。
いや、俺的にはもう思う存分、当分おあずけ喰らっても我が人生に悔いナシ、ってくらいはいろいろ堪能させて頂きましたが?
さすがにこの状態のあおいちゃん見たら、もう二度と飲まねーって思った。
「…んっ…」
「お、起きた?ダイジョーブ?」
10時半になろうとした頃、あおいちゃんがもぞもぞと起き上がった。
「…はよー…」
「ははっ、おはよう。まだ時間あるから、内風呂でサッと流してくる?」
「んー…、そうするぅ…」
目を擦るあおいちゃんは未だ眠そうだけど、なんとか内風呂に向かった(俺はとっくに朝風呂済ませてる)
…今日少し観光でもするかとか思ってたけど、これ直帰だなー、とか。
そんなこと考えてた。
「さっぱりしたー?」
内風呂から出てきて、多少目が覚めたらしいあおいちゃん。
「あ、あの、さ、」
「うん?」
「…わ、私、服着た覚えないけど、服着てて、」
「あ、それ俺が着せたの」
「えっ!?…な、なんかごめん?」
困ったような顔して謝ってきたあおいちゃん。
いやそこはもう、全面的に俺がごめんて話で。
「身体ダイジョーブ?痛いとこない?」
「ん?んー…、痛いとこ、っていうか、」
「うん?」
「そこら中、筋肉痛みたいな?」
ちょっと腰の辺りを擦りながらあおいちゃんは言う。
…まぁ、そりゃそうだろう。
あれだけいろんな体勢させられてりゃ、普段使わねー筋肉をフル活用させられるわけで。
「私も蘭見習って、空手でもしようかな…」
ボヤくようにあおいちゃんは言うけど、どー考えても空手で使う筋肉と、セックスで使う筋肉は違うだろ。
「快斗くんは?」
「え?」
「眠くない?大丈夫?」
昨日の晩、俺から絞り取るだけ絞り取ったサキュバスは鳴りを潜めたようで、今日はただの天使が心配そうに俺を見てきた。
「まぁ多少は寝みぃけど、ダイジョーブ」
「無理しないでね」
休み休み帰ろうね、なんて言うあおいちゃん。
…日頃数十台のパトカーと全力追いかけっこしてる身としては、そこら辺の男子高校生よりも格段に体力あるからダイジョーブだと思う(園子ちゃんの彼氏とかは話が別で)
でもそんなこと言えるわけねーし。
「あおいちゃんは優しいね」
俺があおいちゃんの頬に触れると、気持ち良さそうに目を閉じる。
…これバイクで寝るかもしれねーな…。
「え?な、なに、このベルト!?」
チェックアウトも済ませて、温泉街でかるーく土産も買って、よし帰ろう、ってなった時。
一応持ってきてたタンデムベルトであおいちゃんと俺を繋いだ。
「あおいちゃん寝て落っこちそうだから」
「ね、寝ないよ!さすがに!」
「落ちてからじゃ遅ぇから着けなきゃ駄目」
「…だいじょぶなのに、」
一応、バイクの免許のある身としてはタンデムベルトが不服なんだろうけど、落ちたら怪我で済まないかもしれない。
念には念を、って奴だ。
そして走り出して信号で止まった時。
案の定、
「快斗くんの背中、あったかくて気持ちいい」
普段はそんな乗り方しねーのに、ペタッと俺の背中に顔をくっつけてきた。
…ほらな、タンデムベルトしてて正解じゃねーか。
「ベルトしてても爆睡したら落ちるから気をつけよーね」
「そんなに爆睡しないよぉ…」
否定はするけどもう語尾が寝てる。
いつも以上にバイクが揺れないように、安全運転に気をつけて帰路に着いた。
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bkm