キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

初めての旅行


少しの焦り


「夕飯までまだ時間あるし、外見に行く?」


ドキドキ露天風呂も終わり部屋に戻ってもお夕飯の時間まで2時間くらいあるから草津の町並み見に行こうぜーってなった。
旅館で下駄や草履の貸し出しもしてくれるらしく、いたれりつくせりだ。


「履きなれないでしょ?俺に掴まっていーよ」


快斗くんだって下駄なんて履きなれないはずなんだけど、もう似合って似合って私の彼氏が世界一カッコいい…!!
でも確かに草履はちょっと履きなれないから、いつもは手を繋いで歩くけど、今日は腕組んじゃったりしちゃったりもうすっかり温泉デート大満喫!


「去年はさー、日が合わなかったりで行けなかったけど、今年は夏祭り一緒に行こうぜ」


温泉街をぷらぷら歩いていたら、足湯出来るところを見つけて。
浴衣できゃっきゃっ騒ぎながら足湯に浸かってまったりしてたら快斗くんが夏祭りのお誘いをしてくれた。
去年はほら…怪盗キッドでそれどころじゃなかったし、ね…。


「私実はこっちに来てから夏祭り行ってないんだよね」
「えっ?なんで?」


快斗くんがほんとにびっくりしたように聞いてくるけど、なんでなんてそんなの、夏合宿で勉強漬けにさせられたりうっかり快斗くんとお友達になっちゃって、快斗くんフィーバーで祭り?私の心がお祭り!!みたいになったりしたからだよ!
…なんて言えない。


「アイツにも誘われなかったの?」
「アイツ?」
「工藤新一」


いつからかわからないけど、快斗くんは新一くんの名前を普通に出してくるようになった。
何があったのかわからないけど、快斗くんの中での新一くんに対する心境の変化でもあったのかな?と思った。


「新一くんはさぁ、あおいは夏休みの宿題優先だろ!って、夏祭りなんて許してくれない人だからね」
「あー、なんかわかる気する」


どこか呆れたような顔で快斗くんは頷いた。


「米花町の夏祭りはわかんねーけど、江古田もちょっと大きめの花火大会があるんだぜ」


熱くなってきたー、って言いながら快斗くんは足湯から足を出した。


「隅田川とかさー、そんなとこと比べたらショボいけど、まぁ地元じゃそれなりに?」
「えこた…」
「…もう来たくない?」


その言葉に驚いて快斗くんを見ると、困ったような顔をしている快斗くんと目があった。


「そ、んな、こと、は、」
「まぁ、俺が米花町に行けばいいだけなんだけどなー」


ぽん、と私の頭に手をおき、快斗くんは笑うけど…。
この前のあれは、やっぱり快斗くんにも嫌な気持ちにさせちゃったんだろうな、って思った。
でもやっぱり、快斗くんちはじめ、…中森さんと会うかもしれないところは今は行きたくないよな、って。
それはつまり、江古田には行かないってことになっちゃうんだろうな、って。
快斗くんは新一くんのことで何か心境の変化があったみたいだけど、私のこの気持ちはきっと、変わること、ないと思う。
それこそ私がいなくなるその時まで、きっとずっと、変わらないと、思う。
黙った私に対して、そろそろ宿に戻ろーって快斗くんが言ってきたから、またぷらぷらと来た道を戻って行った。


「美味そー!」
「え、絶対美味しいって!」


お夕飯は快斗くん推しのお肉料理で。
それはもうたらふく食べさせもらった。
あー、お腹いっぱい、ってなったところで、そうだと思い出してカバンの中をゴソゴソと探った。


「どうしたー?」
「あのね、んーと…あ、あった、はい、これ園子から」
「え?園子ちゃん?」
「うん。何か知らないけど、『夕飯食べ終わったら黒羽くんに渡したげてー』って」
「ふぅん?」


園子から預かったのは、なんかやたら頑丈に包装された小さな袋で。
快斗くんがそれを開けた瞬間、


「ぶはっ!!」


噴き出した。


「え?なになに、」
「えっ!?あ、いや、これは、」
「見せて見せ…………」


園子が快斗くんに贈ったのは、初めて見るけど、いっくら私だってその名前からいわゆる「精力剤」って奴だって言うのはわかった。
………園子っ!!!


「いやー、さすがだよ園子ちゃん」


あははー、と苦笑いする快斗くん。


「もー園子ちゃん、俺のことなんだと思ってんだろーね。俺の年齢でこんなん飲んだら、夜どころか明日の昼までノンストップになるって話で、飲むかよ!ってなるよなー」


いやー笑った笑った、と快斗くんはそのドリンク剤をテーブルに置いた。
この時、何を思ったのかって言われたら、さっきの足湯の時に見た快斗くんの困った顔で。
私が困らせた、って。
私が、快斗くんと中森さんの関係にまで、影響与えてしまってるんだ、って。
もしかしたらそれが原因で、快斗くんに嫌われていくのかも、とか。
そんなことを思ったと思う。
だから、


「いいよ、飲んでも」


そう言ったのかも、しれない。


「だ、って、ここゆっくりチェックアウトで12時までいれる、って、快斗くん言ったじゃん」
「え、いや、言った、けど、」
「お昼まで、ゆっくり出来る、し、」
「…」
「も、ともと、今日はいちゃいちゃしたい、って、言ってた、し?」


そんなこと言ってるのは私だけど、さすがに恥ずかしくてもう快斗くんの顔を見れなくて。
快斗くんがどんな顔でいるのかわからないけど、


「知らねーぞ、どうなっても」


快斗くんが大きく息を吐いたのがわかった。

.

prev next


bkm

×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -