キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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初めての旅行


足りなかったのは


あおいちゃんと探偵ボウズの関係。
あのボウズの口ぶりから、親友の家に居候してる子以上の接触、繋がりがある。
工藤新一の血筋だから面識があったとかか?
それにしても、だよな…。


「は、はい…!」
「あおいちゃん、何してたー?」


もう本人に聞くしかねーけど、どう切り出したものかと思いながら電話した。


「い、今ネットニュース見てた…!」
「ネットニュース?」
「キッドが事件解決に一役買った、って」
「へー」
「快斗くんは何してたの?」
「俺はゴロゴロしてて気づいたら今」
「おはよう?」


別に寝てたわけでもねーんだけど、おはようと疑問系で言うあおいちゃんに笑いが溢れた。


「あおいちゃんに会いたい」
「え?あ、うん…?」
「あおいちゃんに会っていちゃいちゃしたい」
「どっ、どうしたの?」


どーしたもこーしたもねぇって話しで。
小学一年生のクソガキに覚悟しとけとか言われて、は?何言ってんだよってなってるわけ。
たかがガキ1人にイラついてんじゃねーって言われそうだけど、イラつくもんはイラつくし、ここ最近のストレスの溜まりようはすごいわけで。
これはストレス解消が喫緊の課題だ。
そう思ったら、あおいちゃんにどうしても会いたくなったし、何より本当に2人きりになれるところに行きたくなった。
青子もいなく、あの探偵ボウズもいないようなところに2人で。


「それで思ったんだけど、」
「うん?」
「1泊2日でどっか旅行行こうぜ」
「…………えっ!?」


俺の言葉に声を裏返して驚いたあおいちゃん。


「嫌?」
「えっ!?い、いいいい嫌とかそんなだって」
「あおいちゃんと温泉行ってー」
「しかもおんせん!?」
「2人で貸し切り風呂とか入っちゃってー」
「かしきり!?」
「旅館の浴衣着て、温泉街歩くとかサイコーじゃね?」
「快斗くんが言うのはだって、そんな大人な旅行私たちまだまだ高校生、」
「え?でもクラスメイトとかでいねーか?温泉旅行する奴ら」
「え、えー…、そんないないって!彼氏、彼女で温泉旅行するなんて、」
「中道とか」
「あっ…、いたね、うん、いた」
「だろ?だからいいじゃん」


中道は本当、期待を裏切らない男だ。
テキトーに言ったのに、ほんとにそうだとは、さすがだ中道。
唐突に温泉旅行に誘って俺に、


「な、なんか、あった…?」


ものすげー戸惑ってる声であおいちゃんが聞いてきた。


「別に何もねーけど、…ただ、」
「ただ?」
「江古田でも米花町でもないところ行って、あおいちゃんと2人で過ごしてーな、って思っただけだけど?」


ここ最近、黄昏の館といい、四名画といい、どいつもこいつも俺の名前語りすぎだって話で。
悪名上げようとすんじゃねーよ、って。
俺だって、あおいちゃんとゆっくり、恋人同士らしく週末過ごしてぇんだけど。


「あ、あんまり高くないとこ、なら、」


俺の思いを感じ取ったのか、あおいちゃんが賛成してくれた。


「それはダイジョーブ。俺出すし」
「いやいやいや、そんなわけには、」
「実は知り合いのとこで、ちょいちょい小遣い稼ぎしてんだよねー、俺!」


ブルーパロットの経営にまで口出して儲け出してる分、ぶっちゃけ小遣い稼ぎ、って額じゃねー額をジイちゃんはくれる。
だからそこら辺の学生に比べて金はあると思う。


「わ、私、そのお店行ってみたい!」
「駄目。バーだから連れてけない」
「え、ええー…」
「今は無理だけど、成人したらな」
「…ずっと先だね」
「あと3〜4年だろ?あっという間だって」


うん、と言う一言すら頷かないあおいちゃん。
そりゃあそうか。
まず1年後ってのをクリアさせないとだしな。
あ、駄目だ
やっぱり何にも考えずあおいちゃんと2人でいちゃいちゃできる場所行きたい。


「それでどーする?」
「え?」
「旅行。行くよね?」
「う、うん…?」
「っし!じゃあ俺宿テキトーに調べてまた連絡するな!」


あおいちゃんの了承を得て、宿探しを始める。
…けど、近場はどこもかしこも、魚料理を全面に押し出してきてて、こうなったら山奥に行くしかねーと思った俺は、東京からバイクでも3時間ちょいで行ける草津を候補に上げた。
だってここの旅館、浴衣は好きなの選べるって言うし、貸し切り露天風呂あるし、何より夕飯は肉料理!
サイコー、サイコー、と思った俺は速攻であおいちゃんに連絡、了承を得て、旅館を予約。
バイクも一応メンテ出して、後は当日を待つばかりになったわけだけど。


「バイクで行くなら私もバイク出して、2人でツーリングする?」


なんてあおいちゃんに言われたわけだけど。
あおいちゃんのこと信じてないわけじゃないどこらか、むしろ信じてるんだけど、近場ならまだしも、この子の運転で草津まで行って帰ってこれるかって言ったらはっきり言って信用してない。


「やだ。俺の後ろに乗って。あおいちゃんに抱き着かれたい」
「えっ、や、そん、なに抱き着かなくない?」
「やだ。後ろに乗って」
「わ、わかった」


温泉行く前にバイクで転けて、擦りむいて温泉入れなくなったらどーしてくれんだよ。
なんて言葉を全て飲み込んで言った言葉は、無事あおいちゃんに伝わったようだ。


「晴れて良かったな」


当日、日頃の行いの良さから、快晴!
絶好のツーリング日和だ。


「あのさ、」
「うん?」
「なんで草津にしたのか聞いてい?」


あ、痛いとこ突いてきやがった…。


「快斗くん?」
「…だってさー、」
「うん?」
「ここから近いとこで探してたら、だいたい海沿いだろ?」
「あー、うん。そうだね」
「そういうとこって、晩飯が、だいたいさぁ…、」
「…ハッ!!………そ、そっか、それは草津だね」


俺の言いたいことが伝わったようで、うんうん、頷いて答えるあおいちゃん。


「海が良かった?」
「快斗くんと行けるなら海でも山でも、どっちでもいい!」


ふわり、と笑うあおいちゃん。
…これだ。
ここ最近、俺に足りなかったのはこれだよ。
クソ探偵共に囲まれて荒んだ心を癒やしてくれるこれが足りなかったんだよ!


「じゃあそろそろ行きますか!」
「いえーい!あ、疲れたら途中で運転変わるからね」
「えー、あおいちゃん俺のバイク運転できるかなー?」
「できるよー!私、お母さんから貰ったバイクすっごい安全運転で乗ってるじゃん!」


すっげー自信満々に言うあおいちゃんに、ほんと今日2人でバイク出すことにしなくて良かったと思った(自信満々な初心者ほど危ねーものはない)


「スピード出さないことだけが安全運転じゃなくて、周りの流れに合わせて走るのも大事なんだぜ?」
「なにそれ、私が流れに乗ってないみたいな言い方!私すっごい上手く流れに乗って、」
「よし!しゅっぱーつ!」


自分が如何に運転上手か熱く語ろうとするあおいちゃんの声を遮り、バイクを走らせた。

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bkm

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