キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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初めての旅行


お誘い


「怪盗キッド、濡れ衣晴らす、か…」


花鳥風月の四名画の1つをキッドが狙うって予告状が出たってニュースを見たのが昨日の夕方。
これはまたキッドに罪を着せようとする奴!って思っても、前日にどうこうなんて出来るわけないだって私はただの女子高生。
ニュースが出た翌日の今朝、蘭にそれとなく聞いたら、やっぱり蘭もおじさんも、コナンくんも現地に呼ばれてるって言われて。
まさかそこに着いていきます!なんて言えるわけないし?
ここはもう、私は神頼みで待ってるしかないな、って思って自宅待機することにした。
ちなみに快斗くんとは昨日も今日もメールしかしてない。
当然だろうけど、快斗くん的にも突然のことでいろいろ調べたり準備が必要だろうから仕方ないと思った。
そして予告時間から3時間経った今、ネットニュースで画家の神原晴仁が殺害され予告通りにキッドに青嵐が盗まれたけど、本物のキッドが警視庁の人間に扮し事件解決に一役買った、と出ていた。
…今ニュースになってる、ってことは、もう快斗くんは逃げ切った、ってこと、だと思う。
連絡してみようかなぁ…。
でも実はまだ逃げてる最中で、邪魔だったらと思うとやっぱり連絡取り辛いんだよな…。
どうしようかなぁ、って思った時、

ピリリリ

電話が鳴った。


「は、はい…!」
「あおいちゃん、何してたー?」


着信はもちろん(?)快斗くんだった。


「い、今ネットニュース見てた…!」
「ネットニュース?」
「キッドが事件解決に一役買った、って」
「へー」
「快斗くんは何してたの?」
「俺はゴロゴロしてて気づいたら今」
「おはよう?」
「ふはっ!おはよ」


快斗くんの柔らかい声が耳に響く。
…声がいい!!
違った、声もいい!!


「ねー」
「うん?」
「あおいちゃんに会いたい」
「え?あ、うん…?」
「あおいちゃんに会っていちゃいちゃしたい」


唐突に快斗くんがそんなこと言ってきた。


「どっ、どうしたの?」
「えー?俺、最近あおいちゃんが足りてなくね?あおいちゃんは俺足りてる?」
「えっ?や、うん…?」


なになに、快斗くんどうしたの?


「今年さぁ、GW一緒にいれなかっただろ?圧倒的にあおいちゃん不足だよな?」


な?って言われてもでもよく考えてよ、GWは土井塔さんと一緒にいたじゃん。


「それで思ったんだけど、」
「うん?」
「1泊2日でどっか旅行行こうぜ」
「…………えっ!?」


快斗くんが近所に出来たカフェに行こうぜ、なノリで旅行に誘ってきた。
…待ってだって私たち確かにそんなお泊りとかしちゃってるけどでも旅行なんてだってそんなまだ早いってだって私たちただの高校生でそんなだって私たちそんなそんな


「嫌?」
「えっ!?い、いいいい嫌とかそんなだって」
「あおいちゃんと温泉行ってー」
「しかもおんせん!?」
「2人で貸し切り風呂とか入っちゃってー」
「かしきり!?」
「旅館の浴衣着て、温泉街歩くとかサイコーじゃね?」


快斗くんが言うのはだって、そんな大人な旅行私たちまだまだ高校生、


「え?でもクラスメイトとかでいねーか?温泉旅行する奴ら」
「え、えー…、そんないないって!彼氏、彼女で温泉旅行するなんて、」
「中道とか」
「あっ…、いたね、うん、いた」
「だろ?」


だからいいじゃん、て快斗くんは言うけどさ。


「な、なんか、あった…?」


なんて言うか…、快斗くんがこんな風に言うのほんとに珍しいから、思わずそう聞いていた。


「別に何もねーけど、…ただ、」
「ただ?」
「江古田でも米花町でもないところ行って、あおいちゃんと2人で過ごしてーな、って思っただけだけど?」


電話な今、快斗くんがどういう表情なのかわからないけど。
…これ絶対、四名画の件で、コナンくんとなにかあったな、って。
そう思った。
…でもあれそんな話だったっけ?


「…あ、あんまり高くないとこ、なら、」
「あ!それはダイジョーブ。俺出すし」
「いやいやいや、そんなわけには、」
「実は知り合いのとこで、ちょいちょい小遣い稼ぎしてんだよねー、俺!」
「お小遣い稼ぎ?」
「そ。ブルーパロット、って言うバーの店長が昔親父の付き人してた人なんだけどさ。そこで少しな。まぁ高校生で店出るわけには行かねーから、店内清掃とか搬入とか?あとSNS使って宣伝とかの軽ーい手伝いだけど」


だから金あるし、なんて言う快斗くん。
ブルーパロットって、寺井さんのお店…!


「わ、私、そのお店行ってみたい!」
「駄目。バーだから連れてけない」
「え、ええー…」


私のお願いはあっさり断られてしまった…。
寺井さんにも、会ってみたかったんだけどな…、ちぇっ。


「今は無理だけど、成人したらな」
「…ずっと先だね」
「あと3〜4年だろ?あっという間だって」


快斗くんはそう言って笑うけど、3年先、なんて、さ。


「それで?」
「うん?」
「旅行!行く?」


私が言葉をつまらせていたら、旅行の話に戻した快斗くん。


「いつ行くの?」
「来週末!」
「らいしゅう!?急じゃない!?」
「今の時期逃すと梅雨入ってバイクで行けなそうじゃね?」


夏休みは人多くて嫌だし、って快斗くんは言う。
わかるよ?
わかるんだけどさ…。
快斗くんと来週末に温泉旅行だなんて心(と、身体)の準備出来てないんだけどっ!!


「最近あおいちゃんといちゃいちゃしてなさすぎて、もうガス欠寸前なんだけど」
「そ、んなこと」
「ないとか言っちゃう?あおいちゃんさては、俺がどんだけあおいちゃんにくっつきたいって思ってるかわかってねーな?」
「えっ!?」
「もうあおいちゃんにキスしてなさすぎて具合悪くなりそう」


待って、キスしてないから具合悪くなるなんて話し私初めて聞いたけど!?
そんな人いるの!?
確かに快斗くんキス魔だと思うよ!?
でもそんなことあるの!?!?


「それでどーする?」
「え?」
「旅行。行くよね?」


快斗くんの発言に???ってなってた私は、行く?って言葉よりも強い、行くよね?っていう言い方に、


「う、うん…?」
「っし!じゃあ俺宿テキトーに調べてまた連絡するな!」


思わず頷いてしまい、それを聞き逃さなかった快斗くんは、あっ!という間に話をまとめて電話を切っていた。


「た、たいへんだ…!」


来週末なんて今さら、って感じだけど、それでもなけなしの体力で慌てて筋トレを始めた。

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