キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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怪盗キッドvs四名画


青嵐


「この金庫だろうなー、大きさ的に」


ボウズの言う通り屋敷内を、というか、神原晴仁の部屋を探すと、それらしい金庫を見つけた。
まぁこんな金庫くらい、と、思ったところで気がついた。
…普通、一端の刑事が他人の家の金庫を軽々開けれるわけねーよな…。
さてはあのガキ、俺の正体に気づいて鍵つきの金庫に向かわせやがったな?


「頭がキレるガキだよ、マジで」


この程度の金庫なら3分も掛からない。
言われた通り鍵を開けると、そこから1枚の絵が出てきた。


「…微妙に画風が違うな…」


つまりはそれが「俺」に罪を着せた理由、ってことか?
まぁこれさえ持ってけばわかるだろ。
そして俺が青嵐を持って警部たちと合流する頃には、眠りの小五郎の、…いや、探偵ボウズの推理ショーが始まっていた。


「何もかもバラすつもりだったんですよ!『青嵐』が存在しなかったことも、怪盗キッドの予告が私の狂言だったことも。そんなことすれば私の画家としての名が汚れ、画家生命が絶たれるなんて考えもしないで」
「違いますよ。神原さんが考えがあると言ったのは、このことだと思いますよ」


そう言って持っていた青嵐を見せた。
確かに及川武頼の画風とは異なるが、神原晴仁が描いた物は見る者の心に訴える、まさに「あおあらし」ってところだ。
ボウズの推理と、俺が実際に見つけた物を言うと、犯人である及川武頼は泣き崩れた。
…さて、汚名も晴らせたことだし、撤収しますか。
そう思い、極々自然に警視庁組から離れて、誰もいない部屋に忍び込んだ。
窓を開け放ち、ここから抜け出そうとした時だった。


「高木刑事」


後ろから声がした。


「翼を広げて、そこから飛び立とうとしてる?」


…やっぱ気づいてたか。


「僕の気のせい?」
「どこでわかった?」
「消去法さ。目暮警部が忘年会でやった手品のネタをお前が知ってるわけねーだろ?だから目暮警部は本人。それを知ってた佐藤刑事も本人。バッグに入れられた状態で見つかった千葉刑事もシロだな。あんなわかりやすい所に置くわけねーし、バッグのチャックが首から下に下りないのは、体型を見られたくなかったから」


話しながら、一歩、一歩、と俺に歩み寄って来る探偵ボウズ。


「つまりあれは、眠らされ千葉刑事の変装をさせられた高木刑事。発見時騒ぎに紛れて逃げるためのトラップだ」


そして俺にある程度まで近づいて、ボウズは立ち止まった。
ボウズが靴を触り「何か」の準備をしたように見えた。


「でも感謝してるぜ?お前のあの手品で事件のトリックが見抜けたんだから」
「いやいや。ああいう仕掛け物は、こっちの方が専門なんでね」


これはあの時計みたいに、なんか仕掛けがある靴に違いねぇ。
そう思い逃げる体制に入ろうとした時だった。


「お前がキッドだとわかった時点で警察に突き出しても良かったが、その前に確認しておきたいことがあった。有耶無耶にされる前にはっきりさせときたくてな」


ボウズは俺を見上げて、


「キッドじゃない時のお前は、あおいの周りにいる人間か?」


ボウズははっきりとそう聞いてきた。


「オメーの言うあおいってーのは、俺が以前助けたお嬢さんのことか?」
「お前は少なくとも2度、あおいと接触があったよな。誘拐事件の時、あおいが薬に弱い体質だと知り、黄昏の館の時は予め手持ちの催眠スプレーを使わせた」
「あぁ、そうだな」
「でもその『たった2回の接触』だけじゃ、説明がつかねーんだよ。オメーがあおいに肩入れしてる理由がな」


ボウズがさっき触れた靴は、放電している。
…クイーンセリザベス号で内線電話が壊れるほどの蹴りはアレが原因か。


「肩入れも何も、俺は全女性の味方なんでね」
「いいや?黄昏の館でのオメーの態度、それだけじゃないはずだ」
「なんでそんなこと思っちまったのか知らねーが、『俺』はあのお嬢さんと『キッド』として会っただけだぜ?」
「なら答えは1つだな」
「うん?」
「キッド。お前の周りにいる奴と、あおいの周りにいる奴の中で、共通の人間がいる」


それはもう、単なる推理の域を超えた確信。


「何故そう思うか聞いても?」
「…」


当然のことながら、コイツは答えない。


「覚悟しとくんだな、怪盗キッド。あおいの行動範囲内で、お前と共通の知り合いになり得そうな奴なんて数えるほどしかいねぇ。今の段階で、お前のおおよその年格好と近くてあおいの周りにいる奴に1人心当たりがある。お前とソイツの関係はわからねーが、その不敵な笑みが凍りつく日は近そうだぜ?」


ベルトに手をかけ、笑いながらそう言ってくる姿は、どう見てもコイツの方が悪者だろ。


「随分おもしれぇこと言うじゃねぇか」
「…」
「けど俺も予告してやるぜ?そのやり方じゃあ、お前は俺には辿り着けない。絶対にな」
「なら試してみるか?」
「オメーわかってねぇなぁ…」
「何が?」
「お前には無理だ、って言ってんだよ。…あの子を苦しめ、泣かせるかもしれない方法を取るなんてな」


俺の言葉は思いの外深く刺さったようで、今まで以上におっかねーツラで俺を睨み上げてきた。


「んじゃあ、話は終わったな?あばよ、名探偵。オメーの推理、なかなかおもしろかったぜ?」
「おいっ!待て!!」


煙幕を使って、ハンググライダーで飛び立った、と、見せかけて森に降りた。
…あのガキ、見れば見るほど工藤新一と被りやがる。
工藤新一からいろいろあおいちゃんの話聞いてたせいで、あおいちゃんに対する思い入れが酷ぇ(しかも呼び捨てにしてやがるし!)
あおいちゃんとキッドの共通の知り合い、ね。
まぁいくらなんでも、そこから直ぐにキッド=黒羽快斗だと思うわけがねーしな。
でも油断はならねー。
あのガキは黒羽快斗としても接触しちまってるからな…。
もう米花町行くの止めるか、って、駄目だな、この前のことであおいちゃんもう俺ん家に来るの止めるって言ってたもんな。
てなると、俺が米花町行くしかねーし。
…あのガキにも盗聴器しかけるか?
いや待て待て、ガキに盗聴器つけたところで、だよな。
ならGPSか?
位置情報くらいは知っときてーけど…。
うーん、でもなぁ…。
とりあえず1度あおいちゃんに江戸川コナンとの関係性を聞くしかねーか(蘭ちゃんちの居候程度で終わったし)
探偵ボウズが投げかけた言葉は、初夏に吹く、まるで青嵐のように、俺の心に確実に吹き抜けた中、帰路に着いた。

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bkm

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