キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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怪盗キッドvs四名画


仕立てあげられた事件


俺の天使はたまに小悪魔になって、それはそれは華麗に俺を手のひらで転がしやがる。
何が怖いって、それが計算された上でやってねーってところだ。
嘘だろ、あれがナチュラルボーンなのか。
マジでオメー、これ以上籠絡された人間増やすんじゃねーぞ、なんて思っても、そもそもたかが人間が天使に籠絡されちまうのはもう、仕方ねーんじゃねぇのかっていう諦めも生まれ始めているのは確かで。
ほんとどーしたものかと頭を抱えた。


「どういう風の吹き回し?」


紅子は学校で(というか学校外でも、だけど)余計なことは一切喋らない。
コイツのそう言うところ、わりと気に入ってると思えるようになったんだが、唐突に主語もなく話しかけてくるコミュ力の無さはどーにかした方がいいとマジで思う。


「何が?」
「パンドラ以外も狙う気になったの?それとも慈善活動か何かかしら?」
「は?なんの話だよ?」


わりといつものことだが、紅子の話が全く見えない。
もう少しわかるように話せ、って話で。


「あらじゃあ人違いかしらね」
「オメーさぁ、ちったぁあおいちゃん見習って会話しようって気持ち持てよ」
「要らないわ。もう終わったし」
「あ、おい!」


紅子はそう言って去って行った。
…なんなんだよ、なんて思いながら、ケータイを弄りはじめた時だった。


「なんだこれ?」


それはたまたま見つけたネットニュース。
見出しには「怪盗キッド 名画へ犯行予告」というタイトルで、なんでも怪盗キッドが画家・及川武頼の花鳥風月4部作の最後の1作、青嵐を盗みに入ると予告状を出したんだとか。
紅子が言っていたのは間違いなくコレのことだ。
…まーた、俺の名前語るヤローがいる、ってことか?
だいたい及川武頼の花鳥風月とか知らねーぞ。
そうは思っても、基本売られた喧嘩は全て買う主義だから、放置なんてするわけもなく。
しかもこれよく見たら予告明日じゃねーか!
ふざけんなよ、マジで!!


「あ、ジイちゃん?頼みが、」
「4部作の件ですか?」
「そう、そのこと!ジイちゃんも見た?」
「ええ、先ほど。ぼっちゃまが学校が終わる頃に調べ終わっているかと」
「そ?じゃあ帰り寄るからよろしく」


そう言って電話を切った。
俺たちは電話じゃ詳細を語らない。
いつ誰に盗聴されてるか、わかったもんじゃねーからな。
そこら辺ジイちゃんも理解してる上、俺が「あ」って言ったら「いうえお」まで理解し、下手したら「か行」まで調べてくれる逸材だ。
そのジイちゃんはあの言い方から、及川武頼の方を調べるようだから、俺は当然、


「中森警部!やはりこの予告状、ホンモノでは?」
「だが奴が宝石以外に手を出すとは…」


警察関係の調査、ってなるわけで。
青子の親父さんにしかけてある盗聴器を作動させた。
そして放課後、ジイちゃんと合流して調査結果を見てある程度推測を立てる。


「どうですか?何かわかりそうですか?」
「んー…、わかる、っていうか…」


犯行予告が出てる花鳥風月は、元々及川の奥さんの入院費のために描いたものだったのか…。
最初の3枚が売れて、残りを描く、と…。
いろんな可能性があるが、現段階で未完成な上誰も見たことがないと言われている作品、そもそもそんな絵、本当に存在してるのか?
俺としてはそこから疑問に思うわけで。
…うーん、違和感満載だよな。


「これ、」
「はい?」
「ただの盗みなら俺は出しゃばらなくてもいいかもなー」


そう、例えば存在しない名画を消失させるための、「ただの盗み」であるならば。
でも俺の直感が言っている。
恐らく「ただの盗み」だけでは終わらない。
それこそ、黄昏の館の時のように、俺の名前を語って殺人事件が起こるような、そんな違和感。


「では行かれますか?」
「…一応、現地には行ってみて…、そうだな、中森警部の捜査二課じゃなく、捜査一課の出番になるようなら現場に行くようにするかな」
「一課管轄の重犯罪が起こるかも、ということですか?」
「そこはほら、黄昏の館の件があったばっかだし、警戒は必要だろ?…そういう濡れ衣着せられるなら、黙ってるわけにはいかねーし」


俺の言葉にジイちゃんは、そのように手配します、と言った。
…この及川って画家のオッサン、眠りの小五郎呼んだみてーだし?
てことは、あの探偵ボウズも来るだろうしな。
そして翌日の予告日当日の夜。
マスコミ関係者にバケてさり気なーく、現地に潜入した俺を待っていたのは、及川武頼の義父・神原晴仁が殺害された、って情報だった。
別にわかってるけどさー。
怪盗キッドは泥棒で、つまりは悪党だ。
けっして善人じゃない。
でもよー、なんでどいつもこいつも俺を殺人鬼に仕立て上げんだよ…。
キッドは殺しなんかしたことねーぞ。


「高木刑事!」
「はい?って、えっ!?ぼ、僕がもう1人い、ふぁああ…」
「はい、お顔拝借しますよー」


現場に到着後、マスコミに揉みくちゃにされた警察関係者。
それに便乗して、ターゲットの高木刑事に近づいて、彼に成りすますことにした。
そして難なく建物内に侵入。
殺害現場に行くと、違和感なく小学生のガキが現場検証に立ち会ってるっていう、違和感しかない状況になっていた。
…けどまぁ、警察関係者が誰もツッコミ入れねーから、もうこれ当たり前なんだろうな。
末恐ろしいガキだ。


「うーん…。犯人がキッドなら、ハンググライダーで逃げただろうから非常線の張り用がないな」
「はい。逃走経路を割り出すくらいしか…」


一課の連中も、やーっぱ「俺」が犯人だと思ってるわけね。


「でもおかしくありませんか?この別荘を機動隊が包囲していたのに、誰も逃げるところを見ていないなんて」


キッドが人殺しするわけねーくらい言う奴いねーのかよ。


「キッドのハンググライダーは白だよ?魔法で消えたわけじゃないのに、誰も見てないのはおかしいよ」


今のこの状況下で、即キッドが犯人と結びつけなかったのは、他の誰でもない探偵ボウズだった。


「彼はマジシャン。魔法と違って手品にはタネも仕掛けもあるんだよね、コナンくん」


そう、これはタネも仕掛けもある、キッドを殺人鬼に仕立て上げた事件。
そしてそのタネと仕掛けはだいたい見当がついた。


「ちょっと、ヒントになるようなことを思いついたんで実験していいですか?」


別に警察に手貸してやろーってわけじゃなく、ただ単純に自分に着せられた汚名を晴らそうって思って行動した。
俺が披露したマジック、その後の刑事たちのファインプレーで何か気づきがあったのは、やっぱりコイツ、江戸川コナンだけだった。
あの顔は何か掴んだと思い、後をつけたわけだけど。


「コナンくん。蘭さんが捜してたよ」
「高木刑事。別荘にいる千葉刑事が怪盗キッドだよ」
「ええ?」
「今本物の千葉刑事が」
「そりゃ大変だ!」
「待って!その前に…、探してくれる?高木刑事。この別荘のどこかにある『青嵐』を」


探偵ボウズは俺にそう言った。
俺が仕向けた通り、キッドが千葉刑事だと思ってるなら手伝っても損はない。
いくらでも逃走時間はある。
そう思ってボウズの話に乗ることにした。


「青嵐がまだこの別荘にある?でもキッドに盗まれたんじゃ」
「盗られてないよ。高木刑事なら見つけられると思うから」
「え?あ、ああ…」
「たぶんね…、金庫の中とか、普段は見えない場所に隠されてると思うよ」


探偵ボウズは言う。
…青嵐が完成してんなら、俺を殺人鬼に仕立てた意味はなんだ?
それとも「普段は隠されてる」ってのがポイントか?
まぁいいさ。
ボウズの言う通り、探してやりましょう?
俺の汚名を晴らしてくれるのなら、な。

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