キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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怪盗キッドvs四名画


奥義炸裂


黄昏の館に集った探偵たちから無事逃げ仰せた俺は、眠りの小五郎とすり替わったガソリンスタンドの近くに隠していたバイクで無事帰宅。


「あ、ジイちゃん?俺ー」
「ご無事なご様子何よりです」
「だーからジイちゃんは心配しすぎって言っただろ!」


いつでもヘルプに出れるよう待機してくれていたジイちゃんにも報告電話を入れた。
最も詳細については電話じゃ言わねぇけど。
ジイちゃんとの電話も終わり、あおいちゃんに電話くれるようにメールして、ようやく一息つけると思いテレビをつけた。


「ご覧ください!山中に突如、黄金の館が表れました!!」


まぁ…当然と言えば当然だが、テレビではもう黄昏の館の報道合戦が始まっていた。
最もヘリで上空からしか取材ができないだろうが(何せ私有地だし)
でも大上のオッサンが死んだ今、この館、誰の所有になんだろ…。
オッサンの血縁者っても、借金背負い込むことになるしな…。
国の物になんのかな?


「それはそれでもったいねぇな」


なんて思わず本音が漏れた。
そうこうしているとあおいちゃんから電話が来た。
…警視庁から戻って来れたか?


「あおいちゃん今どこ?」
「え?今?…マンション、の、部屋にいるけど?」
「テレビ見れる?」
「え?テレビ?見れるけど、っ!?」


テレビをつけたらしいあおいちゃんのハッとする声が響いた。


「あおいちゃん、眠りの小五郎と黄昏の館行くって言ってただろ?」
「うん」
「ここのことだよな?」
「そうです」
「また事件に巻き込まれた?」


ついさっきまで一緒にいたくせに、しれっとそんなことが口から出る自分に嫌気が差す。
嘘は吐きたくない。
でも、本当のことは言えない。
いつか、怪盗キッドと言う存在がこの世からいなくなったら、この葛藤も消えるんだろうか?


「あ!快斗くんのクラスメイトに会ったよ!」


今ここで話題に出す「クラスメイト」なんて1人しかいないわけで。


「白馬くんていう高校生探偵!」
「キザでキモいだろ?」


間髪おかずにそう口から出ていた。


「え?…や、別にそんなことは…」
「キザでウザくね?」
「えっ!?…い、やぁ?英国紳士って感じでカッコいい人だったけど…?」


…「かっこいい」?
は?今かっこいいって言った?
あおいちゃんは俺を「王子様」なんて言うだけあって、俺の前で他の男を褒めるなんてことほぼない(何せあの子には俺以上にカッコよく見える男がいないって言う超強力謎魔法がかかっているから)
にも関わらず、かっこいいだって?
しかも何だよ「英国紳士みたい」って!
アイツは正真正銘の日本人だろ。
…駄目だ、この子「王子様」なんて言うくらいだからロマンチストなのはわかっていたけど、かなりの夢見る乙女だ。
だってそうだろ?
あの白馬が「英国紳士」!
冗談じゃねぇって話しで。


「あおいちゃん、これからそっち行っていい?」


そこまで思考が巡ったら、そう口から出ていた。
あおいちゃんの肯定の言葉を聞いて、電話を切った。
米花町に着いた頃には「夕方」と言われるような時間帯になっていた。


「い、いらっしゃい!」
「おっじゃまっしまーす!」


快斗くんお腹空いてるかもって思ったけど食べる物があんまりなかったから今買ってきたとこなの、と俺を出迎えてくれたあおいちゃんが言う。
何それ優しい。


「あおいちゃん、また巻き込まれて怪我しなかった?大丈夫だった?」


あおいちゃんの肌はモチモチしていて気持ち良い。
もし俺があおいちゃんに変装することがあったとしても、この肌を再現するのは難しいと思う。
化粧水とか何使ってんのかさり気なーく見てみたけど、プチプラなどこにでも売ってる奴だから、この肌の気持ち良さはあおいちゃんが持って生まれたものなんじゃとすら思う。
だから思わず触ってしまったり、キスしちまうけど、嫌がられないってことはしていいんだろう。
あおいちゃんがお茶やらお菓子を出すって言って準備を始めたから、先にソファに座ってテレビをつけると、未だ黄昏の館の報道がされていた。
それを見たら思い出したくもない顔を思い出しちまうし、さっきのあおいちゃんの言葉も蘇ってきてしまい、


「白馬。会ったんだろ?なんか話した?」


あ、俺今イラッとしてるわ。
って声でそう聞いていた。


「黄昏の館ではそんなに話してないんだけど、警視庁で少しね」
「何話したんだよ?」


そうだよな…。
あの場所ではそんな接触はなかったはずだ。
なのにどこをどうして「英国紳士」で「カッコいい」になったのか謎だ。


「え、っと…、大したこと話してないんだけど、ちょうど佐藤刑事といる時だったから白馬くんが知り合い?って聞いてきて、佐藤刑事が私のことを、園子の誘拐事件の時にキッドに助けられた子なんだよー、って言ったんだけど、」
「言ったんだけど?」
「白馬くん、おもしろいこと言ってたんだよね」
「何?」
「ええーっと、卵と鶏がどーした、みたいな?」


…誘拐事件の話の後で卵と鶏?
卵と鶏…、もしかしてそれって…。


「卵が先か鶏が先か?」
「あー!それだ!それだよ、そうそう。よくわかったね」


恐らく白馬はこう問いたかったんだろう。
「キッドとして出逢って黒羽快斗の恋人になった」のか「黒羽快斗の恋人がキッドに助けられた」のか。
ただ順番が違うだけに見えても、それは大きな違いだ。
これアイツの中で、あおいちゃんがキッドの共犯者として見られる可能性すら出てくる奴じゃねーか。

「で?」
「え?」
「話したのはそれだけ?」


うーんと、と1度唸った後であおいちゃんは口を開いた。


「そう言えば快斗くんに伝言あったんだ」
「何?」
「確か、『君のその感情はいずれ見えないナイフとなり必ず周囲に突き刺さる』みたいなこと言ってたよ?意味わかんないよね?」


白馬の言う「その感情」ってのは、間違いなくあおいちゃんに対する想いだ。
「周囲に」と言っているが、万が一、キッドに何か起こった時、それが見えないナイフとなりあおいちゃんに刺さるっていう忠告だろう。


「ねぇ」
「うん?」
「もう白馬に近づかないで」


あの野郎、今回のことで更に俺=怪盗キッドって言う考えを強めやがった。
それは仕方ないことだ。
俺自身、そうなる可能性も理解した上で行動した。
…けどアイツは、実害あってもおかしくねー位置にいやがる上、「家族」と言い切った工藤新一の時と違って、カッコいいとまで言われてる。


「近づくもなにも、そもそも会わないような?」
「そーなんだけど近づかないで」


俺の言葉に、


「きらい?」
「え?」
「白馬くんのこと」


俺の顔を覗き込むようにあおいちゃんが見てきた。


「べ、つに、嫌いとかじゃねーけど、」
「けど?」
「あおいちゃんにあることないこと吹き込みそーだから嫌い」


俺の頬に触れながら、


「なんで怒ってるの?」


あおいちゃんがそう尋ねてきた。


「別に怒ってねーけど」
「怒ってるよー。白馬くんの話になってから、快斗くんピリッてしてるじゃん!」


ジーーーーーッと俺を見てくるあおいちゃんに根負けして、その手を握りながら、


「怒ってるわけじゃねーけど、… あおいちゃん、アイツのこと褒めただろ。気づいてないのかもしれねーけど、あおいちゃん、俺の前で他の男のこと褒めることなかったんだよ、今まで!」


一気にそう言った。
快斗くん以外褒めたら不貞腐れるとか心狭くない?って思われたな、なんて思うと、自然とあおいちゃんから目を逸していた。


「それで怒っちゃった?」


少し俺の方に身を乗り出してあおいちゃんは聞いてきた。


「だから怒ったわけじゃ、」
「怒っちゃった?」


ジーーーーーーッと、俺を見つめながら聞いてくる。
…もうほんと誰だよ、この子に奥義あざとかわいいを教えたクソヤローは…!


「お、こっ、た、けど、」
「…そっか。ごめんね」


もうイエスの選択肢しかない俺の返事に、まるで子供をあやすように頭を撫でてきたあおいちゃん。
何その子供扱い、って口を開こうとした瞬間、さっき俺があおいちゃんにそうしたように、あおいちゃんは俺の頬を包み込むように触れ顔中にキスしてきた。
…いやこれはズリーだろ!
イエスしか言えなくなったどころか、俺もう何も言えねーじゃん!
何この子、なんでこんな俺を従わせる手段知ってんだよっ!
そんな俺の思いに気づくはずもなく、あおいちゃんはそのまま、俺の頭に抱きつくように手を回し、しばらく頭を撫でいた。

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bkm

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