キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

怪盗キッドvs四名画


キス魔


「い、いらっしゃい!」
「おっじゃまっしまーす!」


バビューンと、江古田から飛ばしてきたらしい快斗くんは、私がコンビニから帰ってきた直後に現れた。


「あおいちゃん、また巻き込まれて怪我しなかった?大丈夫だった?」


そう言うと快斗くんは私の両頬を包み込んで、顔にちゅっちゅっしてきた。
…快斗くんてキス魔なんじゃって思う。
それも軽く触れるちゅうがお好みのキス魔だと思う!
くちびるにだけじゃなくて、ちゅっちゅっちゅっちゅっとそこら中にキスしてくる快斗くんに、いつからかそんなこと思うようになった。


「なんか寝てる間に終わってたんだよねー」


あははー、と笑う私に、快斗くんは困ったように笑った。


「テレビ見て驚いたんだけど」


快斗くんのちゅっちゅっタイムも終わり、2人でソファに座りテレビをつけたら、当然のように、黄昏の館の特集が組まれていた。


「帰る時にヘリの上からチラッと見ただけだったけど、すごい黄金だったよ!」


テレビに映し出された黄昏の館は、ほんとうに全部が黄金で出来ていて。
遠く離れた場所からでも、その存在感は伝わるほどの輝きを放っていた。


「それで?」
「うん?」
「白馬。会ったんだろ?なんか話した?」


チラッと私を見ながら快斗くんは言ってくる。
…ん?


「黄昏の館ではそんなに話してないんだけど、警視庁で少しね」
「何話したんだよ?」


私の言葉に間髪入れずに快斗くんが聞いてくる。
…間違いない、快斗くんご機嫌ナナメだ!
さっきご機嫌にちゅっちゅっしてたのに!?


「え、っと…、大したこと話してないんだけど、ちょうど佐藤刑事といる時だったから白馬くんが知り合い?って聞いてきて、」


なんでなんで、って思いながら、警視庁での出来事を思い返していた。


「佐藤刑事が私のことを、園子の誘拐事件の時にキッドに助けられた子なんだよー、って言ったんだけど、」
「言ったんだけど?」
「白馬くん、おもしろいこと言ってたんだよね」
「何?」
「ええーっと、卵と鶏がどーした、みたいな?」


私の言葉に快斗くんは1拍間を置き、


「卵が先か鶏が先か?」


そう聞いてきた。


「あー!それだ!それだよ、そうそう。よくわかったね」


私の言葉で快斗くんよくわかったなー、って思ったけど、当の快斗くんは、ふぅん、とだけ口にした。


「で?」
「え?」
「話したのはそれだけ?」


快斗くんは相変わらず、ご機嫌ナナメオーラをちょっぴり放っていた。


「そう言えば快斗くんに伝言あったんだ」
「何?」
「確か、『君のその感情はいずれ見えないナイフとなり必ず周囲に突き刺さる』みたいなこと言ってたよ?意味わかんないよね?」


白馬くんの伝言を伝えた私に、


「ねぇ」
「うん?」
「もう白馬に近づかないで」


快斗くんはそう言ってきた。


「近づくもなにも、そもそも会わないような?」
「そーなんだけど近づかないで」


ピリッとした空気で快斗くんが言う。


「きらい?」
「え?」
「白馬くんのこと」
「…べ、つに、嫌いとかじゃねーけど、」
「けど?」
「あおいちゃんにあることないこと吹き込みそーだから嫌い」


え、だからそれは嫌いってことなんだよね?ってことを快斗くんが言う。
別に何か吹き込まれるようなことないと思うけどなー、そもそも近くにいないし、なんて思うのは私だけで、快斗くんはむすーっとしていた。


「なんで怒ってるの?」


ペタリ、と、隣に座る快斗くんの頬を触る。
体温高めな快斗くんの頬は気持ちがいい。


「別に怒ってねーけど」
「怒ってるよー。白馬くんの話になってから、快斗くんピリッてしてるじゃん!」


私がそう言うと、快斗くんは頬に触れていた私の手を握り、スーッと私から目を逸した。


「快斗くん?」
「…別に怒ってねーけど、」
「うん」
「怒ってるわけじゃねーけど、」
「けど?」
「… あおいちゃん、アイツのこと褒めただろ」
「えっ」


私からスーッて目を逸した快斗くんは、怒ってるんじゃなくて、どこか罰の悪そうな顔をしていた。


「気づいてないのかもしれねーけど、あおいちゃん、俺の前で他の男のこと褒めることなかったんだよ、今まで!」


快斗くんに言われて、今までを振り返るけど、私そもそも快斗くんが1番カッコいいと思ってるわけで。
実際は他の人たちだってすごいなー、カッコいいなー、とか思うけど、快斗くんと比べると私の中では快斗くん優勝!!ってなっちゃうから、快斗くんの前で他の男の人を褒めることないよな、確かに、ってなった。


「なのに白馬には英国紳士だとかカッコいいとか言うだろ?」
「えっ、でもそれは、」
「アイツは純日本人だし、ただキザなだけだろ!」


白馬くんて、モデルみたいな人で。
私が思うってより、世間一般からカッコいいって言われる人だと思うのね?
あの振る舞いも、イギリスに住んでるだけあって、スマートだし。
だから私は褒めてる、ってより、事実を言っただけなんだけどな、なんて思うけど、それでも快斗くん的にはアウトらしく。


「それで怒っちゃった?」
「だから怒ったわけじゃ、」
「怒っちゃった?」
「………………お、こっ、た、けど、」


快斗くんの頭をよしよし、と撫でた後で、さっき快斗くんがしてくれたみたいに顔にちゅっとしたけど、快斗くんはどこか複雑そうな顔をしていた。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -