キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

集められた名探偵


見えないナイフ


「あおい姉ちゃん!あおい姉ちゃん!」
「んー…ふぁああ…」


どのくらいそうしていたのか、目が覚めたら、オメーいい加減起きろよって感じの顔のコナンくんがいた。


「…あれぇ?私どうしたんだっけー?」
「槍田さんにスプレーかけられて眠らされたんだよ!」
「んー…おじさん、コナンくん、おはよう?」


とりあえず目の前にいる2人に挨拶をした後で、コナンくんに言われたことを脳内で繰り返した。
…槍田さんにスプレーかけられて眠らされた?
ん?眠らされた?
え?なんで?私なんにも、あっ!今黄昏の館か!!


「じっ、事件は!?」
「…解決したよ。今は白馬の兄ちゃんが呼んだ警察のヘリに乗って、みんなで帰るところだよ」
「そっか…」


コナンくんの(超簡単な)説明で黄昏の館事件が解決したことがわかった。
コナンくんの後ろに立っているおじさん(に扮した快斗くん)を見ると、


「…」


ホッとしたような、でもどこかスッキリしきらないそんな表情をしていた。
じゃあお前の荷物は俺が持ってやるからついて来いって言うおじさんに続いて、ヘリが止まっているところに歩き出した(メイドさんは槍田さんと荷物を取りに行った)

クィッ


「え?」


歩き始めてしばらくして、コナンくんに袖を引っ張られた。
なんだろ?と思って、コナンくんを見ると、ちょっと耳かせみたいな仕草をされたから、コナンくんの方に少し耳を傾けた。


「あおい姉ちゃんて、もしかしてキッドと連絡取れたりするの?」


その言葉が直ぐには理解出来なくて、咄嗟に言葉が出てこなかった私に、


「僕思い出したんだけど、園子姉ちゃんが誘拐された時の事件で、キッドに助けられた園子姉ちゃんの友達って、あおい姉ちゃんだよね?あの時からキッドと直接連絡取れたりすの?」


コナンくんはそう聞いてきた。


「な、ないないないない!『キッド』とはないよ!」
「そっか…。キッド『とは』ないのか…」
「そ、そうだよ!キッドと連絡取れるわけないじゃん!コナンくん、どーしたの突然!」
「んー…、僕ちょっと勘違いしたのかなぁ?」


ごめんね、と笑うコナンくん。
それはもしかしたらとても小さなものなのかもしれない。
でもこの時初めて、キッドに対するコナンくんの、…新一くんの疑惑を投げかけられたものだから、ただただ、なんでいきなりそんな聞き方するの!?ってちょっとしたパニックになっていた。


「あおい姉ちゃんは僕の隣、後ろでいいよね」


ヘリに乗り込む時、コナンくんが私の席を指定してきた。
千間さんが飛び降りる時、なんなら年齢的にも若い私が代わりに飛び降りようかと思っていたけど、座席指定されたら、そんなこの距離から茂木さん突き飛ばして飛び降りれるわけないし、え、なら千間さんがほんとに飛び降りてくれるように祈るしかないパターン?そんな賭けみたいなことして大丈夫?快斗くん逃げれる?


「ほらあおい、さっさと乗れー」
「あ、う、うん」


どうしようか本格的に悩み始める前に、おじさんが早く乗るように促してきた。
コナンくんも早く、早く、って感じに後列に座るから、もう千間さんを信じるしかないと思ってヘリに乗り込んだ。


「どうしても解いてほしかったんだよ。父が私に残したあの暗号を。私が生きてるうちに、あなたたちのような名探偵が集まる機会なんてもう2度とないと思ったから」


少しずつ「その時」は近づいてきて。
…だ、大丈夫!
千間さんを信じる。
千間さんはやってくれる。
快斗くんを逃してくれる…!はず!!


「どうやら、烏丸蓮耶にとり憑かれていたのは私の方だったのかもしれないね」


そう言った千間さんがドアに手をかけた。
ほんとに一瞬の出来事だった。
ドアに手をかけた、と思った瞬間、千間さんは飛び降りて、隣にいた茂木さんを押し退けておじさん…快斗くんが飛び降りた。
その数秒後、バッ!と白い翼が空に広がった。


「…チッ!」


千間さんの手を離し、ヘリとは違うルートに飛び去ったキッドに対して、悔しそうなコナンくんの舌打ちが聞こえた。
でも私は、誰にも聞こえないようにホッとため息を漏らした。


「逃げられちまったな」
「まさかあそこで千間さんが落ちてしまうとは予想外でしたから仕方ないですよ」
「それよりも凄いわね、烏丸蓮耶の財宝…」
「『黄昏の館』の由来とでも言いましょうか…。館全体が黄金だったとは…」


白馬くんの言葉で、黄昏の館を見ると、来た時には考えられないほど、黄金に光り輝き出す本来の、黄昏色の館の姿が目に写った。
槍田さんの1000億は下らないって声が耳を掠めた。
そしてヘリってこともあって、あっ!という間に警視庁に到着。
千間さんは出迎えた刑事さんたちに連れて行かれ、私たちも事情聴取があるそうで、各々刑事さんに聴き取りされることになった(ちなみに警視総監の息子だからか、警視庁の人たちみんな白馬くんのこと知ってた)


「あら?あおいちゃん?」
「佐藤刑事!お、お久しぶりです!」
「あなたも巻き込まれたの?大丈夫?」
「はい!また寝てる間に事件が終わってました!」
「そう。『また』寝てるうちに終わったの」


ははっ、と佐藤刑事に苦笑いされた時、


「あおいさんは警視庁に知り合いがいるんですか?」


白馬くんが話しかけてきた。


「知り合い、っていうか、前に事件でお世話になって、」
「事件?」
「白馬くんは知らないかしら?以前、鈴木財閥の令嬢誘拐事件があったのよ。その時、キッドに助けられた子がいたんだけど」
「あぁ、そう言えばそんなニュースありましたね。その時はロンドンにいたんで、リアルタイムでは知りませんが」
「その時のキッドに助けられた子、って言うのがあおいちゃんなの」
「え?」


白馬くんはそれを聞いて驚いたように私を見てきた。
それはそれは凝視して見てきた。
…イケメンに黙って見つめられるとなんかいたたまれなくて、恥ずかしいんだけどっ!!


「卵が先か鶏が先か」
「え?」


白馬くんが呟いくように言った。


「あなたとも長いつきあいになるかもしれませんね」


そう言うと白馬くんは今までで1番の笑顔で私を見てきた(ちょっと顔が熱くなってきた!)


「あぁ、そうだ。黒羽くんに会ったら伝えてください」
「うん?」
「『君のその感情は、いずれ見えないナイフとなり必ず周囲に突き刺さる』と」
「み、見えないナイフ?」
「彼にはそれで伝わるはずです」


では僕も聴取があるので、と白馬くんは去って行った。


「あおいちゃん、白馬くんがイケメンだからってちょっと見惚れてたでしょ?」
「えっ!?ち、違いますよ!だってそんな、イケメンだけど、」
「イケメンなのは認めるのね」
「か、快斗くんの方がイケメンです!」
「あー、園子ちゃんが言ってたあおいちゃんの彼氏のことか!」


白馬くんが最後に言った言葉の意味がわかるような、わからないような私は、それを頭の隅に追いやり、佐藤刑事の後について行った。

.

prev next


bkm

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -