キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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集められた名探偵


それでも


「ぐ、あ、ああああ!!?」
「おい、おっさんよ。2度目はもうウケねーぜ?」


…いや、これは…。


「22時34分51秒、心肺停止確認。この状況下では蘇生は不可能でしょう」


大上のオッサンに駆け寄った白馬が、心肺停止していることを確認。
槍田さんも軽い検視を始め、青酸カリで死んだと断定した。
…大上のオッサンが服毒して死んだ、ってことは、確実にもう1人いる。


「さぁ!犀は投げられました!自らの死を持ってこの命がけの知恵比べを華々しくスタートさせてくれた大上探偵のためにも財宝を探し」


この晩餐会の真の主催者、神に見捨てられた仔がな。
…俺は探偵じゃねーんだから、こんな犯人探し得意じゃねーんだけど、どーしたもんか。
そう思った時、目の端にどこか…やるせない顔をしているあおいちゃんが映った。


グイッ


「あおいはあっちに行ってろ。お前が見るもんじゃねぇよ」


この子がこのオッサンの死を悔やむ必要なんてない。
むしろこのまま近づかず、関わらずを貫いていい。
そう思い、部屋の隅にいたメイドを指してそちらに行くように促した。
そしてこの後どうするか話し合いの結果、みんなで車を確認しに行くことになったが、あおいちゃんは頭を抱えるような仕草をしていた。


「おい、あおい!」
「え?あ、な、なに?」
「…みんなで車見に行くことで話がまとまったからお前もついて来い」
「あ、う、うん」


俺の言葉に、目を泳がせながら答えるあおいちゃん。
…まぁ、目の前で殺人事件が起こったら、普通こうなるよな…。
そう思ったら思わず腕を掴んでいた。


「わっ!?」
「大丈夫か?」
「え?あ、あぁ、うん…」
「…いいか、よく聞け。ここから先は、あのボウズ以外誰も信じるな」
「ボウズ、って、コナンくん?」
「あぁ」


もし俺に万が一のことがあったとしても、あのボウズの側なら安全だ。
だからこそ、そう伝えた。


「わ、わかった…!」
「よし、じゃあ行くぞ」


そして車を駐車していた場所に行くと、見事全車炎上中で。
…真犯人は、マジで俺たちをここに閉じ込める気らしい。
裏門に止めたメイドの車が生きてるかもしれないと、みんなで裏門に行き、車を確認。
その車を使って本当に橋が落ちたのか確認に行くことになった。
ボウズの提案でコイントスで行く人間を決める、ってなったんだが…。


「あら、おチビちゃん。気が利くじゃないの!」


そうか…。
あんただったのか…。
烏丸の亡霊に取り憑かれたもう1人の犯人は…。
その犯人と、茂木のオッサンと共に、橋を見に行くことになった。
そして案の定、千間のバアサンが乗ってるはずの車が炎上して橋の下へ落ちた。
そして茂木のオッサンと2人、館へ戻る道中。


「そんなに欲しいもんかねぇ?烏丸の財宝とやらは!」


茂木のオッサンがボヤくように言った。


「さぁなぁ…。俺には考えられねぇけどな。まだ見ぬ財宝よりも今日の酒だ」
「違いねぇ」


そんな会話をしていた時、探偵ボウズがやってきた。


「お?お前1人か?」
「そうだよ。車はやっぱり爆破しちゃった?」
「あぁ。車を弄ると爆発するよう仕掛けがしてあったみたいだぜ?」
「うん?『やっぱり』?」
「気づいたんでしょ?オジサンたちも。さっきのコインで」


…あぁ。
やっぱりコイツが探偵・毛利小五郎の名前を世に知らしめたんだな…。
館に居残り組はとっくにバアサン確保に向けて準備してるそうで。
俺たちが死んだフリをするのは、まぁいいとしよう。


「あおいとメイドはどーするつもりだ?」
「あおい姉ちゃんたちには眠ってもらおう、って。槍田さんがそういう薬持ってるってさ」


睡眠薬、か…。


「おい」
「うん?わっ!?…なにこれ?スプレー?」
「睡眠スプレーだ。… あおいは前に薬負けしてるからな。それなら大丈夫だから、それを槍田さんに渡してくれ」
「……わかった」


それは己の首を絞める行為であることは重々自覚している。
恐らく今のこれで、このボウズは俺の正体に確信を持っただろう。
それでもあの子が苦しむところは見たくねーし、いざとなったら途中で逃げるくらいのつもりで、ボウズに睡眠スプレーを放るように投げ渡した(もちろん指紋なんて着いてない奴)
そして館に戻って、千間のバアサンのことを話し、それぞれ屋敷内を見回ることにした(ボウズが槍田さんにスプレー缶を渡したのも確認した)
そしてピアノの置いてある部屋に辿り着く。


「ピアノの縁に引っ掻いた様な真新しい傷がついてるな」
「そいつは恐らく鷹の爪痕だ。あの兄ちゃんもこの部屋に探りを入れたってわけよ」
「…あれれ?ピアノの鍵盤の間に、何か挟まってるよ!」


あれれ?じゃねーよ!
今さら猫かぶってんじゃねーっての!
誰に、なんのための猫かぶりだ。
ほんっと末恐ろしいガキだよ、コイツは。
そしてピアノに書かれた血文字。
切り札…トランプ…?そう、か、なら財宝は…。
俺とほぼ同時に「それ」に思い至ったらしいボウズの目つきが変わったのがわかった。


パン パァァン!


そして「予定通り」銃声が鳴り響いた。


「じゅ、銃声!?」
「中央の塔の方だ!」


駆けつけた先には、これも「予定通り」白馬が倒れていた。


「だ、誰かが階段をっ!!ヤローッ!!」


そう言い駆け上がっていった先に、犯人が指定した謎の答えを入力するパソコンがあった。
ここでも「予定通り」槍田さんが倒れていた。


「宝の在り処をパソコンに入力した奴が、部屋を出ようとしたら毒殺される算段になってたんだ」
「し、しかし犯人は一体何処に!?」
「惚けんな!この姉ちゃんが自分で仕掛けた罠に掛かる訳ねーし。あの若い姉ちゃんとメイドは、トイレでおねんねしてたぜ?あの銃声がフェイクだとしたら、殺しが出来るのはあんたと俺の二人だけだ…。俺じゃねぇって事は、」


バンッ!!


「…あんたしかいねぇだろ?」


そして俺も「予定通り」銃に撃たれ倒れた。
…これでバアサンに逃げられたらタダじゃおかねーぞ。

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bkm

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