キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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集められた名探偵


命懸けのゲーム


「え?この3人で1部屋なの?」
「まぁ…誘われたの蘭姉ちゃんだったしね」


1度部屋に荷物を置いてくることになって通された部屋に、あおいちゃんが驚いた声を上げた。
…まぁそうだろう。
何が悲しくてこんなオッサンとクソガキと同じ部屋に寝泊まりしなきゃなんねーんだ、って話だもんな。
けど部屋替えてもらってあおいちゃん1人にさせるのもそれはそれで心配なんだよな…。


「ねぇ、おじさん。コナンくんも」
「ん?どーした?」
「なぁに?」
「…着替えるから出てって」


さぁどーしたもんか、って思ってる時、あおいちゃんから出てけ宣言を出されたものだから、ボウズと一緒に部屋から出た。
直後、


「あぁ、毛利さん。ちょうど良かった」


白馬のヤローが近寄って来やがった。
なんでもビリヤードやチェスがあるから晩餐会までみんなでプレイしないか、って誘いだった。
…誰が「俺」かわからない以上、そーいうところで心理戦繰り広げて当たりつけてーだろうしな。
俺が行くと言うと、あおいちゃんが着替え終わったら一緒に行くとボウズが言った。
まぁコイツが共犯なわけねーから、コイツといるなら安心だ。


「そう言えばさぁ、なんで白馬の兄ちゃんは、あおい姉ちゃんが黒羽の兄ちゃんの恋人だってわかったの?」


なら俺と白馬で先に行ってるか、となった時、ボウズが白馬に聞いてきた。


「あぁ…。彼の幼馴染から聞いていたんですよ。『帝丹高校』で『小柄な黒髪』の『芳賀あおい』さんのことを。同姓同名で外見も似ているだけの可能性もありましたが、念のため聞いてみようかと思っただけです。そしたら同姓同名で、外見もマッチしていて、高校まで同じなんて、それはもう本人でない可能性の方が低いでしょう?」
「なるほど」


やっぱり青子の奴、ベラベラ喋りやがったな…。
あのヤロー、覚えてろよ!


「白馬の兄ちゃんはさぁ、どう思う?あおい姉ちゃんの彼氏」
「黒羽くんのこと、ですか?」


何を思ったのか、探偵ボウズは白馬に俺のことを聞いてきやがった。


「僕はあおいさんと今日会ったばかりですが、彼女の雰囲気からして、はっきり言って黒羽くんは彼女の手には負えない人間だと思いますよ」
「だよね。僕もそう思う」


白馬の言葉にうんうんと頷き答える探偵ボウズ。
…コイツら、俺が聞いてねぇと思って好き勝手抜かしやがってっ!!


「…僕の言うことと、君の言うことは、若干異なるとは思いますが、彼女には別の人をお薦めしたいですけどね」
「おい、お前らその辺にしとけ。人の恋路を邪魔する奴は地獄の埋立地に強制連行って言うだろ」
「…いや、馬に蹴られるだけで、」
「地獄に埋め立てられるわけでは…」
「おら、プレイルーム行くぞ」


知ってたけど、改めてわかった。
俺は探偵って呼ばれる奴と合わねぇ!


「あら毛利ちゃんも来たの。ちょうどいいわ。チェスでもどうかしら?」
「へいへい。おつきあいしますよー」


白馬の近くにいたくねー俺は、千間さんの誘いに乗ってチェスをすることにした。
…のは、いいが、俺今へっぽこ探偵なわけだから、バアサンに勝つわけにいかねーし、不自然さなく負けるしかないわけで。
ストレスだけが溜まっていく…。


「キャーーーーー!!!」
「ど、どうした!?あおい!!」


精神的にやつれ始めた俺に、あおいちゃんの叫び声が響いた。


「おやおや、此処にも血が飛んでたみたいだねぇ…」
「そう言えばメイドが言ってたぜ?この館の物は犯行当時のまま、殆ど動かして無えってな」


烏丸蓮耶の隠し財産、か…。
今回もこんな血生臭せぇことになんなきゃいいが…。
そうこうしてるうちに、準備が出来たと食堂に移ることになったが…。


「崇高なる六人の探偵諸君」


館の主人らしい人物からの声が響いた。
…大上の共犯者か?
それともこれは大上が予め用意した物か?


「我が黄昏の館によくぞ参られた!さあ座りたまえ、自らの席へ」


とりあえずいきなりどーこーとはならないはずだし、俺とボウズの間に座ってるならどーとでもなるはずだ。
そう思い、指定された場所に座った。
そして語られる、こんな晩餐会を開いてまで、これだけの探偵を集めた理由。
…命懸けのゲーム、ね。
概ね予想通りってところだ。
爆音と共に橋も落とされたらしく、退路は絶たれた、と。


「だ、誰が…。一体誰がこんな事を!?」


バカにしてるわけじゃねーが、コイツらほんとに気づいてここにいるのかと話題を振った。


「あら、毛利さんともあろう方が、知らずに来たんですの?」
「え?」
「ちゃんと招待状に書いてあったじゃない。『神が見捨てし仔の幻影』って」
「『幻影』ってーのはファントム。神出鬼没で実態が無え幻ってこった」
「人偏を添える『仔』と言う字は、獣の子ども。ホラ、『仔犬』とか『仔馬』とかに使うでしょ?」
「『神が見捨てし仔』とは、新約聖書の中で神の祝福を受けられなかった『山羊』の事。つまりこれは『仔山羊』を示す文章」


なるほど、なるほど。


「英語で山羊はGoatですが、仔山羊の事はこう呼ぶんですよ。…Kid」
「な、何!?」
「こう言えばもっと分かりやすいでしょうか?Kid the Phantom thief」


皆さんちゃーんと、理解した上で来てるわけね。


「狙った獲物は逃がさない。その華麗な手口はまるでマジック」
「星の数ほどの顔と声で警察を翻弄する天才的犯罪者」
「我々探偵が生唾を飲んで待ち焦がれるメインディッシュ」
「監獄にぶち込みてーキザな悪党だ」
「そして、僕の思考を狂わせた唯一の存在。闇夜に翻るその白き衣を目にした人々はこう叫ぶ。…怪盗キッド!」


なら「俺」がどう動こうとも、誰も不思議には思わねぇ、ってことだよな?
そうこうしてるうちに、料理が運ばれてきた。


「ねえ、メイドさん?もしかして料理をテーブルに置く順番も御主人様から言い付けられていやしなかったかい?」
「あ、はい。白馬様から時計回りに、と」
「…いやね。ゲームは始まったばかりなのに、最後の晩餐と言うのが私にはちょっと腑に落ちなくてねぇ…」


そう言う千間のバアサンに、大上のオッサンは一笑した。


「ハハハ、毒なんか入っちゃおらんよ!料理はワシが作ったのだから!」
「でも、それを口に運ぶフォークやナイフやスプーン。それにワイングラスやティーカップも予め食卓に置かれていましたし、僕達はこの札に従って席に着きました」


そこまで言うと白馬は真っ直ぐ前を見つめ、


「まあ、彼が殺人を犯すとは思いませんが、僕達の力量を試す笑えないジョークを仕掛けている可能性はあります」


あたかも「俺」を知っているかのような口ぶりでそう言った。
…オメー、そんなに俺のこと知らねーだろうが。
ったくよぉ、なんなんだ。
そして茂木のオッサンの提案でじゃんけんで席を決め直し、着席した。
俺の斜め前があおいちゃんなわけだけど、食欲なさそうな顔してたのに、目の前に出された料理に本能が勝ったらしく、すっげー美味そうに食ってた。
…もうほんと俺の癒やし。
こんな探偵ゴロゴロいるところに舞い降りた穢れなき天使だ。


「どうかね諸君。私が用意した最後の晩餐の味は?」
「そぉら、おいでなすった」


美味そうに食うあおいちゃんに釣られて、俺もガッツリ食って、あとは食後のコーヒーのみ、って時再び館の主の声がした。


「では、そろそろお話ししよう。私が何故大枚をはたいて手に入れたこの館をゲームの舞台にしたかを!」


そして俺の予想通り、烏丸蓮耶の財宝を探せ、ってことだ、と。


「まあ、闇雲にこの広い館内を捜させるのは酷だろうから、ここで1つヒントを与えよう。『二人の旅人が天を仰いだ夜 悪魔が城に降臨し、王は宝を抱えて逃げ惑い 王妃は聖杯に涙を溜めて許しを乞い 兵士は剣を自らの血で染めて果てた』」
「そ、それはさっきの…」
「まさにこれからこの館で始まる、命懸けの知恵比べに相応しい名文句だと思わないかね?」
「馬鹿ね。殺し合いって言うのは相手もそうだけど、こっちもその気にならなきゃ…」


槍田さんの声に、答えるように館の主は言う。


「無論、このゲームから降りる事は不可能だ。何故なら君達は、私が唱えた魔術にもう既に掛かってしまっているのだから」


魔術、か…。
だがこのメンバーで、宝を独り占めしようと殺し合いになんてなるか?


「さあ、40年前の惨劇と同じように、君達の中の誰かが悲鳴を上げたら知恵比べの始まりだ。いいかね? 財宝を見つけた者は中央の塔の四階の部屋のパソコンに財宝の在り処を入力するのだ。約束通り、財宝の半分と此処からの脱出方法をお教えしよう」


直後、


「うわぁぁぁぁ!!!」


茂木のオッサンの悲鳴が辺りに響いた。


「も、茂木さん!?」
「う、あぁぁぁぁぁぁ!!!…な、なーんてな」
「…全く、悪いおじさんね」
「悪い悪い。悪いついでに俺は降りるぜ?宝探しには興味が無いんでね」
「だ、だが此処からどうやって…!」
「心配いらねぇよ!此処は海の真ん中の離れ小島じゃねえ。山ん中を駆けずり廻りゃ、なんとかなるだろ。じゃ、あばよ!探偵諸君」


そうして片手を上げて茂木さんが去っていこうとした瞬間、


ガターン!


「ぐぅっ…!?」


イスが倒れる音と同時に大上のオッサンが声にもならないような、悲鳴を上げた。

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bkm

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