キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

集められた名探偵


確定された死


「オードブルのフォアグラのマーブル仕立てトリュフ入りジュレ添えでございます。どうぞお召し上がりください」


メイドさんがテーブルに料理を並べ、そう言った。


「ねえ、メイドさん?もしかして料理をテーブルに置く順番も御主人様から言い付けられていやしなかったかい?」
「あ、はい。白馬様から時計回りに、と」
「…いやね。ゲームは始まったばかりなのに、最後の晩餐と言うのが私にはちょっと腑に落ちなくてねぇ…」


そう言う千間さんに、大上さんは一笑した。


「ハハハ、毒なんか入っちゃおらんよ!料理はワシが作ったのだから!」
「でも、それを口に運ぶフォークやナイフやスプーン。それにワイングラスやティーカップも予め食卓に置かれていましたし」


白馬くんの言葉に思わず絶句する大上さん。
その大上さん構わず、白馬くんは話を続けた。


「僕達はこの札に従って席に着きました。まあ、彼が殺人を犯すとは思いませんが、僕達の力量を試す笑えないジョークを仕掛けている可能性はあります。自分のハンカチでグラスやフォーク等を拭いてから食べた方が賢明でしょう」
「違ぇねーな。奴のペースで事が進むのも気にくわねーし!何ならジャンケンでもして席替えするか?」


…でも毒はスプーンとかにじゃなくて…。
話がまとまって、席を替えて料理をいただくことになったんだけど、私の正面に大上さんが座ることになってしまった…(隣はコナンくんだった!)
もう私料理しか見ない…!!


「お、美味しいね…!」
「そうだね」


食欲がないかもーとか思ってたわりに、出されたものはそりゃーもう美味しそうに見えてしまい。
なら少しだけ…、って手をつけたら「美味しそう」じゃなくて、「美味しい」料理で気がつけばペロリと平らげてしまっていた…!


「どうかね諸君。私が用意した最後の晩餐の味は?」
「そぉら、おいでなすった」


そして食後の飲み物が出された時、再び、マネキンから声が響き、その声に茂木さんが答えた。


「では、そろそろお話ししよう。私が何故大枚をはたいて手に入れたこの館をゲームの舞台にしたかを!」


そしてここに呼ばれた経緯が語られる。
食器類に刻まれた、烏丸蓮耶の紋章。
彼が残した財宝を見つけるために集められた探偵たち。


「まあ、闇雲にこの広い館内を捜させるのは酷だろうから、ここで1つヒントを与えよう。『二人の旅人が天を仰いだ夜 悪魔が城に降臨し、王は宝を抱えて逃げ惑い 王妃は聖杯に涙を溜めて許しを乞い 兵士は剣を自らの血で染めて果てた』」


その暗号の内容は、さっきこのマネキンから聞いた話。


「そ、それはさっきの…」
「まさにこれからこの館で始まる、命懸けの知恵比べに相応しい名文句だと思わないかね?」
「馬鹿ね。殺し合いって言うのは相手もそうだけど、こっちもその気にならなきゃ…」


その槍田さんの声に、答えるようにマネキンは言う。


「無論、このゲームから降りる事は不可能だ。何故なら君達は、私が唱えた魔術にもう既に掛かってしまっているのだから」
「「「っ!?」」」


マネキンの言葉に、みんな固唾を呑んだ。
無機質なマネキンから発せられる真意を探ろうと、「探偵たち」の空気が変わった瞬間だった。


「さあ、40年前の惨劇と同じように、君達の中の誰かが悲鳴を上げたら知恵比べの始まりだ。いいかね? 財宝を見つけた者は中央の塔の四階の部屋のパソコンに財宝の在り処を入力するのだ。約束通り、財宝の半分と此処からの脱出方法をお教えしよう」


そしてその直後、


「うわぁぁぁぁ!!!」


茂木さんの悲鳴が辺りに響く。
…そしてこの後…。


「も、茂木さん!?」
「う、あぁぁぁぁぁぁ!!!…な、なーんてな」
「…全く、悪いおじさんね」
「悪い悪い。悪いついでに俺は降りるぜ?宝探しには興味が無いんでね」
「だ、だが此処からどうやって…!」
「心配いらねぇよ!此処は海の真ん中の離れ小島じゃねえ。山ん中を駆けずり廻りゃ、なんとかなるだろ。じゃ、あばよ!探偵諸君」


そうして片手を上げて茂木さんが去っていこうとした瞬間、


ガターン!


「ぐぅっ…!?」


イスが倒れる音と同時に大上さんが声にもならないような、悲鳴を上げた。


「ぐ、あ、ああああ!!?」
「おい、おっさんよ。2度目はもうウケねーぜ?」
「…22時34分51秒、心肺停止確認。この状況下では蘇生は不可能でしょう」


白馬くんが事務的に告げる。
槍田さんの簡単な検視も始まり、青酸カリを飲んで死んだと断定された。


「さぁ!犀は投げられました!自らの死を持ってこの命がけの知恵比べを華々しくスタートさせてくれた大上探偵のためにも財宝を探し」
「テメーッ!」


快斗くんや新一くんに怪我させたくないっていう思いだけで、大上さんの死を確定させてしまったこと。
それはあまりにも身勝手なことなのかも、とか思うけど。
でももし大上さんが生きていたら、きっともっと、快斗くんを傷つけて、苦しめることになる。
それこそ本当に、快斗くんを殺そうとするかもしれない。
だったら私はやっぱり、何度でも、この選択をすると思う。
それが今の私にできる最善の道だと思うから…。


グイッ


「え?」
「あおいはあっちに行ってろ。お前が見るもんじゃねぇよ」


大上さんの遺体を前に、おじさんが、…快斗くんが、私の肩を掴み、あっち、とメイドさんの方を指しながらそう言ってきた。
遺体を見なくていい場所に行け、って。
黙って頷いて、メイドさんの隣に動いた。
…ええーと、この後はみんなで車を見に行って、メイドさんの車で橋が無事か確認に行って…。


「おい、あおい!」
「え?あ、な、なに?」
「…みんなで車見に行くことで話がまとまったからお前もついて来い」
「あ、う、うん」


おじさんの言葉に頷いて答え、みんなの後に着いて行こうとした時、


「わっ!?」


おじさんが私の腕を掴んだ。


「大丈夫か?」
「え?あ、あぁ、うん…」
「…いいか、よく聞け。ここから先は、あのボウズ以外誰も信じるな」
「ボウズ、って、コナンくん?」
「あぁ」


私の言葉におじさん、…快斗くん、は、大きく頷いて肯定した。


「わ、わかった…!」
「よし、じゃあ行くぞ」


そう言って、快斗くんは歩き出した。
…快斗くんはこの段階で、コナンくんを犯人じゃないと思ってるからこう言ったのかな?
それとももっと別の…、コナンくんを「信用できる」と思ってるからこう言ったのかな…。
その真意はわからないけど、それでも快斗くん自身もきっと、犯人探しに入ってるんだと思った。
そして駐車場に着いて、みんなの車が燃えていて。
メイドさんの車は別の場所に止めてるから、って、みんなで裏門にある、メイドさんの車が止まっているところに向かった。

.

prev next


bkm

×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -