キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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集められた名探偵


見ないように


「え?この3人で1部屋なの?」
「まぁ…誘われたの蘭姉ちゃんだったしね」


1度部屋に荷物を置いてくることになって通された部屋は、私、おじさん、コナンくんの3人1部屋っていう割り当てで。
…確かにさ。
確かにだよ?
どうせこの部屋には泊まらないよ?(泊まらないってより、泊まれない)
でもさぁ、いっくら泊まらないからって、つまり私と快斗くんと新一くんが同じ部屋ってことでしょ!?
何その地獄への招待状みたいな空間…!


「ねぇ、おじさん。コナンくんも」
「ん?どーした?」
「なぁに?」
「…着替えるから出てって」


カバンを置いてやれやれ、ってなってるおじさん(に扮した快斗くん)とコナンくんは部屋から出る気配はなく。
でもまさか「晩餐会」にこんなラフな格好で出れるわけない私は着替えたいけど、この2人はそんなことこれっぽっちも考えてないみたいで。
仕方なく口にしたら、2人ともハッとしたようにいそいそと部屋から出て行った。
…これほんと泊まることにならなくて良かった。
文化祭の時のアレが再びみたいな空間になるところだったよ…。
いや、今2人とも違う人だからそれを出さないだろうけど。
出さないだろうけどさ!
そこがポロッと出そうじゃん!
特にコナンくんとかコナンくんとかコナンくん!!(快斗くんには揺るがない信頼がある)


「あれ?待っててくれたの?」
「あおい姉ちゃん迷いそうだったからね」


晩餐会まで、みんなでトランプゲームやビリヤードをしようってなったんだけど、その部屋まで迷うと思われていた私を、コナンくんが部屋の外で待っていてくれた。
ちなみにおじさん(に扮した快斗くん)は、たまたま出会した白馬くんと先に行っちゃったらしい。
…まさか白馬くんはすでに疑ってる、とか…?
そしてみんながいるプレイルームに着いたんだけど、千間さんをチラッと見るとおじさん(に扮した快斗くん)とチェスしてるから近寄れなかった。
…だってほら、ちょっとでも好印象持ってもらおうかな、ってほら…。
でもチェスなんて出来ないし、近寄らないと決めた私は、コナンくんと槍田さんの3人でトランプをすることにした(ちなみにビリヤードもやったことないから近寄らない)


「見て見て!ストレート!!私の勝ちだね!!」


ポーカーしたことないですーって言ったら、わざわざ2人がかりでルールを教えてきたからポーカーをやらざるを得なくなったけど、私もしかして才能あるのでは!?
なんて思うゲーム内容だった。


「待って。ズルは駄目よ、あおいちゃん」
「え?」
「ホラ、左端のジャック!2枚重なってるじゃない?」


そう言えば原作もそんなだった気がする…。


「ご、ごめんなさい!気付かなくって…。でもこれ、最初からくっついてたみたいですけど…」


そう言いながら2枚のトランプを剥がす。
…あれ?このトランプって、確か…。
そう思ってフッと剥がしたトランプに目をやると、そこには数十年経過して色が変色してしまっているが、古い血の跡が残っていた。


「キャーーーーー!!!」
「ど、どうした!?あおい!!」


私の叫び声に真っ先におじさん(に扮した快斗くん)が駆けつけてくれた。
…モ、モロに見ちゃった、血の塊っ!!


「おやおや、此処にも血が飛んでたみたいだねぇ…」
「そう言えばメイドが言ってたぜ?この館の物は犯行当時のまま、殆ど動かして無えってな」


待って。
なんでみんな血の塊みても何も思わないの?
おかしくない?
普通他人の血の塊なんて日常生活で見ることなくない??
なんでみんな、あーここにもあったかー、みたいな軽い流れになってるの!?
…わかりあえない。
この軽い流れ、わかりあえるわけがない!
そんな私の戸惑いをヨソに、用意が出来たからと、メイドさんが呼びに来てみんなでそっちに向かうことになった…。
ここから、事件起こるんだよ、ね。
…なにかを食べるって気分じゃないんだけどなぁ。
そう思いながら、食堂へと向かった。
メイドさんが食堂の扉を開け、中に通される。
中には館の主人(マネキン)が既に席に着いていた。
…ここからは私口出ししないようにしよう、うん。
下手に動いてうっかり死んだ、なんて洒落にならないから、大人しく周りの動向を見守ることにした。


「崇高なる六人の探偵諸君」


その時館の主人(マネキン)から声が響いた。


「我が黄昏の館によくぞ参られた!さあ座りたまえ、自らの席へ」


…これもアニメ見た時から思ってたけど、生で見ると気味悪い…。
指定された席に座ると、大上さんが料理を出すようにメイドさんに指示をした。
なるべく大上さんの顔を見ないように、見ないようにしてる私は、徐々に目線が下がっていた。
だってさ…、うっかり目が合って会話しちゃった人が数分後に殺されちゃうとか…さすがに嫌じゃん…。
でもこの人を助けることで、快斗くんや新一くんが怪我したり、下手したら殺されちゃったりするのはもっと嫌じゃん…。
ならやっぱり、このまま見ないように、見ないようにするしかないと思う。
そして予定通り橋が爆破された音が聞こえ、館の主だと思ってたのはスピーカーをつけたマネキンだと判明した。


「だ、誰が…。一体誰がこんな事を!?」


おじさん(に、扮した快斗くん)の言葉に槍田さんが口を開いた。


「あら、毛利さんともあろう方が、知らずに来たんですの?」
「え?」
「ちゃんと招待状に書いてあったじゃない。『神が見捨てし仔の幻影』って」


その槍田さんの言葉に付け加えるように茂木さんが言う。


「『幻影』ってーのはファントム。神出鬼没で実態が無え幻ってこった」
「人偏を添える『仔』と言う字は、獣の子ども。ホラ、『仔犬』とか『仔馬』とかに使うでしょ?」
「『神が見捨てし仔』とは、新約聖書の中で神の祝福を受けられなかった『山羊』の事。つまりこれは『仔山羊』を示す文章」


茂木さんの後を千間さん、大上さんが引き継ぐ。
そして、


「英語で山羊はGoatですが、仔山羊の事はこう呼ぶんですよ。…Kid」
「な、何!?」
「こう言えばもっと分かりやすいでしょうか?Kid the Phantom thief」


私たちの向かい側に座っている、ってのはあるけど…。
白馬くんはその名前を口にする時、確かに私の方を見た。


「狙った獲物は逃がさない。その華麗な手口はまるでマジック」
「星の数ほどの顔と声で警察を翻弄する天才的犯罪者」
「我々探偵が生唾を飲んで待ち焦がれるメインディッシュ」
「監獄にぶち込みてーキザな悪党だ」
「そして、僕の思考を狂わせた唯一の存在。闇夜に翻るその白き衣を目にした人々はこう叫ぶ。…怪盗キッド!」


千間さん、槍田さん、大上さん、茂木さん、そして白馬くんの順でキッドについて語る。
…白馬くんはもう、私を見てはいなかった。
でもやっぱり、白馬くんは、快斗くんがキッドだと思ってるんだと思った。

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bkm

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