キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

集められた名探偵




黄昏の館とは、かつて烏丸連蓮耶が所有していた山奥の別荘で、彼の隠し財産が眠っているらしい館を指すらしい。
現在の所有者は、


「大上祝膳、ね」


また1人、探偵の名前があがる。
…コイツが主催者か。
いや、でも1人とは限らねーか。
けどまぁ、だいたい予測はつけられるな。
あの烏丸蓮耶の隠し財産ってことなら、それはそれは莫大なものだろうし、恐らくそれを見つけてほしい、ってところだろう。
でもじゃあなんでキッドの名を語るのかって、そんなの1つしかない。


「呼びつけた探偵殺して、独り占めする気じゃねーだろうな、このオッサン」


全ての罪をキッドになすりつけるためだ。
別に俺は義賊のつもりはない。
ただ意に反することをする気は毛頭ない。


「行かれるのですか?黄昏の館に」


調べるのを手伝ってくれたジイちゃんが心配そうに聞いてくる。


「トーゼン!キッドの名前を汚すようなことされて、黙って見てるつもりはねーよ」
「お気をつけください。何やら嫌な予感が、」
「まーた始まった!ジイちゃんは直ぐそれだ!」
「しかし快斗坊っちゃん!」
「今回は特に気は抜けねーし、まぁ何かあったら直ぐ連絡するって!」


ジイちゃんは年のせいか心配性がすぎる。
テキトーにあしらって『その日』のための準備をした。
少なくとも、あの探偵ボウズに白馬だろ?それから主催者の大上祝膳の3人。
まぁ、それで済むわけねーし、倍はいるかもな。


「ま、そうなったとしても、推理はあの探偵ボウズに任せるけどなー」


眠りの小五郎について調べるとおもしろいことがわかった。
眠りの小五郎は元々腕のある探偵と言うわけじゃなく、1人の少年が現れてから探偵として頭角を表し始めた人物だ。
1人の少年、江戸川コナン、だ。
つまり眠りの小五郎は、あの探偵ボウズの力を借りてる可能性が大きい。
本来ならあり得ないことだろう。
でもそこは、俺自身がIQ400ある、いわゆるギフテッドって奴だから、あのボウズも恐らくそれであるなら、何も不思議なことはない。
つまり今回、俺はあのボウズの指示通り動けばいーってことだ。
思ってたよりは楽だけど、だからこそ気を抜いちゃいけないってのは、よくわかってる。
そして晩餐会当日。
あおいちゃんたちが乗る車に、途中のサービスエリアで近づき、頃合いをみてパンクするよう細工を施し、黄昏の館に行く途中のガソリンスタンドに先回りした。


「お、っと!トイレ使っていーっすか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「ん?て、俺の顔ふぁあ…」


眠りの小五郎が良いタイミングでトイレに来たものだから、そのまま本当に眠りの小五郎になってもらい、顔を拝借。
車に戻り黄昏の館に向かう。
… あおいちゃん助手席に乗せた初ドライブが、まさかこんなオッサンの顔の時になるとは思いもしなかったぜ。
バイクデートも良いけど、車でデートってのも良いよなー。
まぁまだ車の免許ねーから先の話しなんだけど。
なんて思いながら運転してたら、道は悪ぃはすげー雨降ってくるはで最悪だ!
道がガッタガタなせいなだけであって、俺の運転技術が悪いとかじゃねーから、なんて誰に言うわけでもないことを思った。
そうこうしてる内に、黄昏の館がその姿を見せはじめる。
…ほんっと山奥じゃねーか!
もっと街中に建てろよ!
なんて思っていたら、


「ん?あっ!?」
「っ!!?」


キィィィィィィ!!!


突然、目の前に何かが現れた。
なんだ!?と思い顔を上げた瞬間、


「ひぃ!?山姥っ!!」
「初対面の女性を前にして随分なご挨拶だね」
「あ…、どうもすみません」


思わず本音が出ちまった…。
なんだよ、バアさんかよ。
マジで山姥かなんかだと思っちまったじゃねーか…!
話しを聞くこのバアさんも黄昏の館に行くそうで。
て、ことは、恐らくこのバアさんも探偵ってことだろう。
これで4人、か。


「ねぇおじさん、まだつかない?」


旅は道連れ、バアさんを乗せて黄昏の館に向かっていたら、あおいちゃんが顔を赤らめてどこか恥ずかしそうに尋ねてきた。
何その顔、可愛い。


「あともうちょいだ。どうかしたか?」
「ト、トイレに、ちょっと…」


黄昏の館までもう少しなんだけど、雨の中山道あんま飛ばしたくねーしな、なんて思っていた時、


「その話、知ってます!チャンスの神様は前髪しかなくて後ろツルッパゲだから、前髪掴み損ねると掴む髪がもうなくて、チャンス掴めないんですよね!!」


あおいちゃんがまた語録を増やしてきた。
後ろツルッパゲなチャンスの神様って!
もうほんとこの子飽きねーわ!!
でも爆笑してるのは俺だけで、バックミラーに写る2人はニコリともしてなかった(ボウズは苦笑い気味ではあったけど)


「それよりおばあさんも黄昏の館に行くの?」
「ええ、そうよ。私も探偵として呼ばれたのよ」
「探偵?」
「私は千間降代。あなたと同じ探偵よ?眠りの小五郎さん?」
「せ、千間降代!?」


またここでも知名度のある探偵を引っ張ってきやがったな。
やっぱり推測通り、隠し財産を見つけろ、ってことなんだろう。


「さぁ!黄昏の館は目の前よ!びゅんびゅん飛ばしてちょうだい」


タバコ禁止令を出したバアさんに急かされ、黄昏の館を目指した。
まぁ俺自身吸わねーから禁止令は願ったりだ。
そして館に着くと茂木遥史がいた。
これで5人。
メイドが俺たちを出迎え、曰く招いた探偵は全部で6人。
…まぁ、想定内だな。
さて、問題は大上祝膳だけの単独犯行なのか、共犯がいるのか、だ。
共犯者と言うなら探偵ボウズと白馬は除外だろう。
なら残るは、千間降代、茂木遥史、槍田郁美、そしてあのメイドの4人。
いや…、メイドは除外かな。
あの態度が演技とは思えねーし、恐らく本当にこのためだけに雇われた、ってところだ。
てことは残る3人。
…まぁちょっと忙しなくなるが、監視できない人数じゃねーな。
この館内で大上と共犯者が接触するとは思えねーし、気引き締めていきますかねー。
なんて思っていたら、


「君たちは?」


白馬くんが近づいてきやがった。


「コイツはうちの居候のコナンと、こっちがコナンのお守りの予定だったうちの娘の代打できた子だ」


誰がオメーにあおいちゃんを紹介してやるかよ!
そう思いあえて名前を伝えなかった俺に、


「芳賀あおいです」


律儀な俺の彼女はフルネーム名乗って白馬に頭を下げた。
優しい。
俺の彼女、こんな奴にも優しい天使(とサキュバスのハーフ)


「失礼ですが、あおいさんは帝丹生ですか?」


唐突に白馬がそんなことを口にした。
…帝丹、て知ってるってまさか、


「もしかして『帝丹のあおいちゃん』ですか?黒羽くんの恋人の」
「えっ!?な、なななななんで知って、」


青子のバカヤローがぁぁぁぁ!!!!
個人情報ベラベラ喋んなって言ったのに、なんであおいちゃんのこと喋ってんだよっ!!


「はじめまして、あおいさん。黒羽くんのクラスメイトの白馬です」
「かっ、快斗くんのクラスメイト、」
「お噂はかねがね聞いていますよ。お会いできて光栄です」


イラッとした俺の一瞬の隙をついて、白馬はあおいちゃんの手を取り、手の甲にクチビルを落とした。
…な、殴りとばしてぇ!!
このヤロー、俺の目の前で何してやがる!とは思うものの、当のされた本人は、顔を赤くして恥ずかしそうに俯いていて。
… あおいちゃんは、俺のことを「王子様」なんて言う子だ。
一般人が思う「王子様」的な行動に対して弱くても何も不思議じゃない。
しかもそれをスマートに出来る男にトキメイたとしても仕方ない………わけねーだろっ!
はっ?白馬にトキメイた?
ふざけんなよ!?
工藤新一が消えたと思ったら、予想外のとこから出てくんじゃねーよっ!!
しかもまた探偵!
敵か?
オメー敵だな?
完っ全に俺の敵だよな?
今に見てろよ、このキザ探偵がっ!


「イラッとすんなー…」
「さっきも言ったけど、私の前でタバコはダメよ」
「へーへー、わーってますよー」


俺の呟きを聞いてたらしい千間のバアさんに注意された。
吸わねーよ、タバコなんて!
でも吸ってみるのも有りなのかも、なんて思うくらい、このイラつきどーしてくれようかと思った。

.

prev next


bkm

×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -