キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

集められた名探偵


イケメンは正義


黄昏の館が見えてきた、と思った直後、


「ん?あっ!?」
「っ!!?」


キィィィィィィ!!!


車が音を立てて止まった!!
あ、あああああ危ない!
そろそろかも、って予めドアのところに掴まってたから良かったけど、掴まっていなかったらフロント部分に激突してた…!!
チラッと前を見ると、傘を差して立っている千間さんがいた。


「ひぃ!?山姥っ!!」
「初対面の女性を前にして随分なご挨拶だね」
「あ…、どうもすみません」
「おばあさん、こんなところでどうしたの?」


原作通り、千間さんに事情を聞いて、相乗りして黄昏の館に向かうことになった。
そしてここまで原作に忠実でいようと思ったわけでもないんだけど、


「ねぇおじさん、まだつかない?」


原作の蘭同様に、トイレに行きたくなった…。


「あともうちょいだ。どうかしたか?」
「ト、トイレに、ちょっと…」
「お嬢ちゃん。余計なことだけど私の町の学校の校長がよく言ってたよ。成功する人間は決してチャンスを逃がさない人間だって、」
「その話、知ってます!チャンスの神様は前髪しかなくて後ろツルッパゲだから、前髪掴み損ねると掴む髪がもうなくて、チャンス掴めないんですよね!!」
「ぶふっ!」


私の言葉にオジサン(に扮した快斗くん)が噴き出して、コナンくんは、


「もうちょっと、言い方あったでしょ…」


盛大に呆れた顔をした(千間さんに至っては無になってた)


「神と髪をかけてんのか!お前はおもしれーなぁ!」


オジサン(に扮した快斗くん)はひーひー言って笑っていた。
…私の言葉を笑い飛ばしてくれる優しい人、快斗くんしかいないじゃん!
この優しさだよ。
わかる?
この優しさが快斗くんにはあるのっ!!


「それよりおばあさんも黄昏の館に行くの?」


気を取り直したらしいコナンくんが千間さんに尋ねた。


「ええ、そうよ。私も探偵として呼ばれたのよ」
「探偵?」
「私は千間降代。あなたと同じ探偵よ?眠りの小五郎さん?」
「せ、千間降代!?」
「安楽椅子に座ったまま事件の話を聞いただけで解決しちゃうっていう探偵さんですよね!」
「あら、お嬢ちゃんにも知られてるなんて、私もなかなかね」


私の言葉にご満悦そうな声を出した千間さん。
…だって、私に直接的に何かするわけじゃないけど、さっきの無の表情を見てしまった以上、この人(犯人)には少しでも好印象を植えつけて、私害ないですよー、大丈夫ですよー、って教えておかないと、うっかりアクシデント的に間違いが起こったら大変だし!


「さぁ!黄昏の館は目の前よ!びゅんびゅん飛ばしてちょうだい」


灰皿も無事千間さんに回収され、降りしきる雨の中黄昏の館へと向かった。
途中いかにも!っていう感じの橋を越え、黄昏の館に到着。
もちろん、真っ先にすることと言ったら、


「わ、私トイレに行くね!」


そう言ってカバン片手に館へと駆け出した。


「すみませーん!!」
「はい。…毛利様のお連れ様、でしょうか?」
「そうです!そうなんですが、とりあえずトイレ貸してください!!」
「あ、はい、お手洗いはそちらの廊下を、」
「こっちですね!?」


メイドさんに教えてもらった場所にバタバタと駆け込んで、用を足した。


「ふぅ…」


やっと一息つけた。
手を洗い髪形や服装をチェックする。
…いや、だって念のため…念のため…。


「すみません。大変お待たせいたしました」


私がトイレから戻るとみんなが玄関に集まっていた。


「お招きした探偵は全部で6名様です」
「おいおい、あと2人も居るってのか?」


えぇ、っと…。
あの人は確か、茂木、さん…?


「は、はい。女の方と少年が」
「少年、ですか?」
「もしかして、平次兄ちゃん?」


コナンくんのその言葉に、メイドさんは首を横に振った。


「いえ、御主人様に頂いたお呼びするリストには服部様のお名前も入っていたのですが、中間テストが近いからと服部様のお母様からお断りのお電話を頂きまして…。そしてもう一方、工藤新一様もお呼びする予定でしたが連絡が取れなかったため、毛利様の御家族を2人お呼びするのに、御主人様からOKが出たんです」


そこまで言ったメイドさんに茂木さんが質問を投げかけた。
…どきどきどき。
快斗くんは、カッコいい。
それはもう揺るがない。
でもさ、園子じゃないけど、やっぱり彼氏以外のイケメンも、目の保養なわけで。
やっぱりちょっと、見てみたいじゃん…?
なんてことを思ってるなんて快斗くんにバレたら、きっと怒られると思うから、あくまで冷静に、いつも通りに、普通に、普通に、と言い聞かせていた。


「気をつけなベィビィ。多分そいつは古い血の跡だ」
「じ、冗談だよ、な?」
「冗談じゃ無いわよ」


オジサンの声に、もう1人女性探偵が現れた。


「扉に対し、ほぼ45度の入射角で付着した飛沫血痕よ。扉だけじゃ無いわ。壁には流下血痕、床には滴下血痕。一応拭き取ったみたいだけど、この館内の至る所に血が染み込んだ跡が残ってるわよ。どうやらこの血痕の主、1人や2人じゃ無いみたいね」
「…流石ですね!」


声がした瞬間、勢いよくその方向に目を向けた。


「ルミノール。血痕に吹き付けると血液中の活性酸素により酸化され、青紫色の蛍光が放出される。流石、元検視官。良い物をお持ちだ。槍田郁美さん?」
「お褒めに預かりどうも…、坊や?」
「白馬探と言います。宜しく」


…白馬くんっ!!!
柔らかそうな髪に、長い手足、日本人にしては色素の薄い肌。
…ほんとにモデルみたいな人だ!


「君たちは?」


白馬くんがコナンくんと私を見て聞いてきた。
オジサンの情報は持ってても、私たちの情報なんて早々ないだろうし、そりゃあそうだと思う。


「コイツはうちの居候のコナンと、こっちがコナンのお守りの予定だったうちの娘の代打できた子だ」


オジサン(に扮した快斗くん)が簡単に白馬くんに紹介したけど、あまりにも簡単すぎたから(なにせ名前を言われてない!)改めて自己紹介した。


「芳賀あおいです」
「え?」
「え?」


私が名乗りながら頭を下げたら、白馬くんが驚いた声を出して、ジーッと私の顔を見てきた。


「失礼ですが、あおいさんは帝丹生ですか?」
「そう、ですけど…?」
「もしかして『帝丹のあおいちゃん』ですか?黒羽くんの恋人の」
「えっ!?な、なななななんで知って、」


私の言葉に白馬くんは、やっぱり、と頷いた。


「はじめまして、あおいさん。黒羽くんのクラスメイトの白馬です」
「かっ、快斗くんのクラスメイト、」
「お噂はかねがね聞いていますよ。お会いできて光栄です」


ナチュラルゥに、白馬くんは私の右手を取って、ちゅっ、て手の甲にちゅうしてきた。
…手の甲にちゅう!?
快斗くん以外にもそんなことする高校生いたのっ!?
出会い頭に手の甲にちゅうする高校生存在するのっ!?!?
ふぅおおおお、ってなってる私を、すっごい冷たい目で見てる人が(しかも2人も!)いるなんて、気づくわけがなかった。

.

prev next


bkm

×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -