キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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岐路


更なる深淵


「みなさーん、転校生を紹介します!」
「白馬探です。よろしく」


連休だってーのに、あおいちゃんに会えずにいた。
いや、会ってはいた(もちろん連絡は毎日取ってた)
土井塔でだったり、怪盗キッドとしてだったりで、会ってはいた。
でも肝心の黒羽快斗としては会えずにいた連休が終わり
、連休明け初日に、また変なのが俺のクラスにやってきた…。
アイツこの前、コスプレで現場いた奴じゃね?


「どうせ日本にいるなら、君の近くで君の行動を見ていようかと思いまして」
「オメーの言いたいことがわかんねーけど、俺は可愛い彼女に一途な男だから、俺狙いなら諦めろ」
「おや、君には恋人がいるんですか?」
「そうだよー!快斗には帝丹にいるあおいちゃん、て言う彼女が、」
「青子!」
「な、なによ?」
「人の個人情報ベラベラ喋ってんじゃねーよ!」


フン、と鼻息荒く、その場を離れた。
あのコスプレ野郎は確か、白馬警視総監の息子で、工藤新一とはまた違う形で警視庁にコネのある高校生探偵だ。
…はっきり言って、面倒な奴がまた1人増えた。
俺やっぱり帝丹にすりゃー良かったのかも…。
いや、帝丹は帝丹で1番面倒な奴がいるんだったな…。
てゆーかアイツどーなったんだろ。
あおいちゃんも何も言わねーし、復学したのか?
なんて思ってた時、紅子が近づいてきた。


「大変ね、あなたも」
「るせぇ」


紅子が他人事のように言う。
紅子は何が大変かは言わない。
俺も何が大変なのか聞かない。
でも俺もコイツもわかっている。
厄介な高校生探偵が増えたものだ、と。


「悩める仔羊を更なる深淵に招待してあげるわ」
「あ?」
「あなたの子猫ちゃん、今岐路に立たされてるようよ」


紅子の方を見ると、弧を描くように笑っている。


「何?何か聞いてんのか?」
「いいえ。聞いたわけじゃないわ」
「だったら何だよ」
「揺らめいているのよ、魂が」
「たましいぃ?」


また紅子がお得意の、わけわからねーことを口にし始めた。


「魂は生きとし生ける物の根源。普通ならあそこまで顕になるのはあり得ないことだけど、あの子は違う。流れる故の物なのかしらね」
「過去一言ってる意味わかんねーけど、大丈夫か?」


俺の言葉にジロッと睨みつけるように俺を見る紅子。


「あなたがもし、あの子の全てを背負うつもりでいるのなら、また違う道が拓けるかもしれない」
「は?どーいう意味だよ?」
「でもその覚悟も力もないなら、見て見ぬフリをするのが賢い生き方よ」
「何だそれ?俺があおいちゃん見捨てるような言い方だけど、」
「一応、忠告はしたから。あとは黒羽くん。あなたが決めるだけよ」


そう言って紅子は去って行った。
…待ってくれ。
マジで過去一意味不明だぞ?
何、どーいうこと?
あおいちゃんの全てを背負う覚悟がないなら見て見ぬフリしろって?
そんなんできるわけねーだろ。
そもそもあおいちゃんの全てって何のことだよ?
しかもそれを背負う?
どーいうことだ?


「あの女、マジで更なる深淵て奴にご招待しやがった…」


考えても考えても深みにハマるだけで、わかるわけない。
そんな独り言を思わず呟いたわけだけど。


「僕も君からの招待状には驚きましたけどね」
「え?」


いつから何を聞いていたのか、いつの間にか白馬が俺の近くにやってきた。


「どういうつもりか知りませんが、あんまり舐めた真似しない方が身のためですよ」
「何がだよ?」
「…まぁ、当日を楽しみにしてますよ」


白馬は口の端を持ち上げ、笑いながら去って行った。
…俺からの招待状?
オメーを招待した覚えはねぇぞ。
いやそもそも誰であれ「招待」するようなことなんてしてねぇぞ。
紅子に続いてアイツまでわけわかんねーこと言い始めたな…。
でもアイツが言う「君」ってーのは恐らくキッドのことなはず。
て、ことは、キッドからの招待状を受け取った、ってことか?
考えられるのは誰かがキッドの名前を語って何かしようとしてる、ってことで。


「めんどくせーこと増やしてんじゃねぇよ」


どこのどいつか知らねーけど、俺の名前語ったからには高くつくからな。


「は、はい?」
「あおいちゃーん、俺限界」
「えっ?限界?」
「あおいちゃんに会わなすぎてしんどい。会いに行ってい?」
「そ、れは、もちろんいいけど」
「んじゃあ放課後行く」
「今日?」
「駄目?」
「ううん!ダメじゃないよ」


昼休みに堪らずあおいちゃんに電話して、放課後会う約束をした。
待ってるね、と言ってくれたあおいちゃんから、黄昏の館の話を聞くことになるのは、それから数時間後のこと。

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bkm

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