キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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岐路


少年探偵団


連休最終日。
珍しく博士からメールが着て、家で一緒にご飯食べないかー、って誘われた。
快斗くんと約束のなかった私は、博士の言葉に甘えさせてもらうことにした。


ピンポーン


「はいはい」


返事と共に出てきたのは、


「…博士が言ってた人?」
「え?あ、たぶん…?」


灰原哀ちゃんだった。
どうぞ、と中に入るよう促された私は、お邪魔させてもらうことにしたんだけど、


「あれ?コナンくんもいたの?」
「あおい姉ちゃん、こんにちは」
「あ、うん、こんにちは…?」


そこにはコナンくんがいて。
コナンくんがいるってことは、


「そのお姉さんがコナンくんと博士が言ってた人?はじめまして、吉田歩美です!」
「僕は円谷光彦です」
「小嶋元太だぞ」
「この子は灰原哀ちゃん!」
「あ、私は、芳賀あおいです?」


少年探偵団も、当たり前のようにいた。


「な、なんか、久しぶりに博士の家に来たら、子供増えたね」
「おぉ、そうなんじゃ、そうなんじゃ。哀くんが住むようになったら、どんどん賑やかになってのぉ」
「良かったね、博士」


博士もこんな広い家で1人だから、子供たちが増えて嬉しそうに見えた。
なぜ哀ちゃんと暮らすようになったのか知っている私は、深くツッコミを入れなかったけど、特に説明もなかったあたり、コナンくんも哀ちゃんもそのことをどう思ってるのかは謎だ。


「みんながいるのに、私お邪魔しても良かったの?」
「コナンくんが、あおいお姉さんも誘おう、って言ったんだよ!」


博士に聞いたつもりが、歩美ちゃんが答えてくれた。


「そうなの?」
「あおい姉ちゃんが1人でご飯食べてるようなら誘ってやって、って、新一兄ちゃんが言ってたから」
「そっか。じゃあ後で新一くんにお礼言っておかないとだね」


快斗くんの時もそうだったけど、新一くん=コナンくんて知ってるのに知らないフリして話す私と、新一くん=コナンくんだとバレてないと思ってるコナンくんが話す内容はなんだか不思議な感じがする。


「コナンくんが言ってたんですが、あおいさんは『あの』工藤新一さんの家族なんですか?」


今日は子供たちが作ってくれたカレーじゃ!って言う博士の言葉通り、子供も安心して食べれる甘口よりなカレーを食べてる最中、コナンくんが教えてくれた、って、光彦くんがそう聞いてきた。


「ほんとの家族じゃないんだけど、ね。家族、みたいな人だよ。弟みたいな?」
「え!?あおい姉ちゃんが妹なんじゃないの!?」


そう言ったのはもちろんコナンくん。


「えっ?で、でもさぁ、あの人『オメーみてぇな馬鹿な妹いらねぇ』とか言いそうじゃん?」
「…姉の方が要らねぇだろ」


ボソリ、と呟いたコナンくんの言葉に、哀ちゃんがふっ、と笑ったのがわかった。
…なんかむかつく!こにゃんのくせに!!


「そ、それより『あの』工藤新一ってなに?」
「新一さんは高校生探偵で有名ですから」
「なるほど」


小学生にですら知られてる新一くんは、やっぱり「日本警察の救世主」なんだろうな…。


「でも俺たちには負けるよな」
「うん?」
「えぇ!僕たち少年探偵団ですから!」
「新一お兄さんみたいに刑事さんのお手伝いしてるしね!」


元太くん、光彦くん、歩美ちゃんの順で言う。
そうか、博士の家に出入りしてる、ってことは、もうこの子たちは少年探偵団として活動してるんだ。


「えらいねー、刑事さんのお手伝いしてるなんて!」
「「「えへへー」」」
「でも新一くんみたいに警部の銃奪って、ぶっ放すような人になっちゃダメだよ」
「えっ」


私の言葉にコナンくんが声を裏がしたのがわかった。


「新一お兄さん、警部さんの銃奪ったの!?」
「そうだよー。キッド狙ってさぁ、」
「ええ!?キッドって怪盗キッドですか!?」
「そうそう。動いてるヘリの中からだから、キッドに当たってもおかしくなかったのにさぁ、」
「でもよー、キッドって泥棒だからしかたねーんじゃねぇの?」


元太くんが、新一くんの行動を肯定しようとした。


「キッドは泥棒じゃなくて怪盗だよ」
「キッドさんは怪盗紳士って言われてるじゃない」
「江古田の時計台とか、キッドのお陰で不正が判明した物もありますしね」


キッド派である私、歩美ちゃん、光彦くんが口々に言う。
元太くんは私たちの言葉に、圧倒されたように唸った。


「『キッドさん』は人気なのね」
「ははっ…」


哀ちゃんとコナンくんの声が耳を掠めた。


「これからは子供たちとこうやって食事してみるのも悪くないじゃろ?」


食べ終わったお皿を片づけていたら博士が声をかけてきた(ちなみに子供たちは公園に遊びに行った)


「んー…、でも邪魔じゃないかなぁ…」
「まさか!さっきコナンくんも言っとったぞ。あおいくんは子供ウケがいいみたいだ、って」
「え、でも、」
「うん?」
「哀ちゃんは…」
「あの子はまぁ、のぉ?」


今日の会話で、玄関から招き入れた時しか哀ちゃんとお話できなかった私。
なのに子供たちと定期的にご飯とか、それちょっとツラい気がしなくもなく。


「まぁ人見知りというか、少し人に対して警戒心が強い子じゃが、良い子じゃよ。そのうちあおいくんとも話すようになるじゃろ」
「そうかなぁ…」


博士の言葉にううーん、と考えてみるけど。
答えなんて出るはずもなく。


「まぁほれ、新一も心配しとるし、たまにはこうして顔を出してくれるとワシも嬉しいしの」


考えといてくれ、と博士は言う。
…少年探偵団とのつきあい方、それも考えないといけないことだ。
あの子たちは快斗くんの邪魔はしない。
でも、快斗くんの犯行現場にはわりといるようになる。
何より哀ちゃんは、コナンくんの助けになり、そしてそれは間接的に快斗くん助けにもなる可能性もある。
コナンくんと哀ちゃんてコンビになる以上、助けになるだけじゃなく、その逆の可能性だって十分あるんだけど…。
仲良くしていた方がいいのか、少し距離を取っていた方がいいのか…。
ここでもまた、分岐点が見え隠れしている気がした。

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bkm

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