■尊敬するマジシャン
「えっ!?蘭行かないの!?」
「うん。お父さん、別の事件入っちゃったから、コナンくんも一緒にそっちに行くの」
「コナンくんもっ!?」
園子が言ってたオフ会数日前。
蘭が驚きの発言をした。
…待って、蘭が来ないってどうするの?
事件どうなるの!?
待って待って待って待って。
この事件を最初から思い出すから!
蘭が来ない(必然的にコナンくんもいない)ってことは、推理できる人がいないわけで。
犯人は、わかってる。
事件の起こるタイミングも、ばっちり覚えてる。
…ならここは、私がやるしかないのでは!?
コナンくんに頼れないなら、私が私にできることをするしかないのではっ!?
「どいとうさん」
「そうなのー!きっとイケメンよ、彼!」
というわけで、園子と2人、雪山に向かうことになったのだけど。
そのチャット内で仲良くなった、どいとうさんが話術もあるし優しいし、イケメンに違いないって言う園子。
…それはだって、快斗くんだからだよっ!!
って叫びたいくらいだ。
やっぱり快斗くんの王子臭は電波に乗っても隠しきれないんだな…。
「いらっしゃい、魔法使いの弟子さん」
そして雪山到着(今回は鈴木家手配の車で向かった)後、このロッジのオーナーのおじさんに出迎えられ、オフ会に集まった人たちを紹介された。
…いた!
この事件の犯人のイカサマ童子、田中喜久恵さん。
とても人を殺せるような感じの人には見えないけど…。
「あの、克樹さん…、レッドへリングさんてまだ来てないんですか?」
どーーしても、快斗くん、いや、マジックの出来るイケメンを見たい園子は、土井塔さんが気になるらしく。
「彼なら2階に、」
「あ!来た来た!」
その声に誘われるように、のっしのっし、と、階段を降りてきた男性、
「あれっ?もしかして魔法使いの弟子さん?僕ですよ。土井塔克樹」
もとい、変装した快斗くんが現れた。
…ううーん、すごいな、やっぱり。
知ってても快斗くんなんて思えないし、ほんとに身体重そうに歩くし、声なんて全く違うし…!
でも柔らかい話し方は、ちょっと快斗くんが入ってる気がする。
あまりにも土井塔さんを見過ぎたのか、目が合ってニッコリ微笑まれた。
「君は?魔法使いの弟子さんのお友達かな?」
「は、はい!芳賀あおいです」
一応、自己紹介してその場を乗り切った。
そして夕飯の時間。
尊敬する日本のマジシャンの話しになった。
「私は黒羽盗一さんが好きだったな。夢のあるステージだった」
快斗くんのお父さんは、こういうところで名前が出るくらい、すごい人だったんだと思う。
…1度でいいから、見てみたかった、なんて。
快斗くんに言ったら、どう思うかな。
その後も木之下吉郎さん、九十九元康さんていう名前があがる(もちろん聞いたことない人たちの名前ばっかり!)
「何よ、みんな亡くなった人ばっかり!私は今超人気の真田一三さん。あなたたちは?」
そう言って話しを振られた。
…そんなさー、私に「尊敬するマジシャン」なんて聞いちゃダメだって!
だってそんなの、
「黒羽快斗ですっ!!」
「ごふっ!?」
「出たぁ…」
1択しかない。
私の言葉に、食べてたステーキでむせたらしい土井塔さん。
そしていつものような反応を見せた園子。
「黒羽?」
「え?でも、カイト?って誰?」
「あ、気にしないでください。この子ちょっと病気なん」
「さっきお話に出てた黒羽盗一さんの息子です!!」
私の言葉に、園子と土井塔さん以外の人が驚いた顔をした。
「黒羽盗一さんのお子さんがデビューしたの?」
「うっそ!そんな話し知らないわよ!?」
「デビューはまだですが、絶対します!そのうち世界屈指のマジシャもがっ!?」
「はーい、ストーップ!…ほんとスミマセン。この子の彼氏なんですよー」
私が熱弁をふるい始めたら、園子が私の口を手で抑えて強制的に黙らされた…!
「あおいちゃんの彼氏、ってことはまだまだこれからの子ね」
「私たちと同級生なんです」
「なるほど。なら本当にこれからに期待な子だ」
あははー、とそのまま談笑。
に、入る直前に小声で園子から
「あんた、今くらいあの尻フェチ忘れなさいよっ!」
怒られてしまった…。
…でもそんな、私に「尊敬するマジシャン」なんて聞いてきたのが悪いんじゃん、とか。
そんなこと思った。
そしてなかなか来ないボードリーダーに電話をかけるものの、電話線自体が切られてるから無理なわけで。
…ボードリーダーが来ない、ってことは、田中さんはもう、1人手をかけてしまったのかもしれない。
だからもう、遅いのかもしれない。
だけど…。
「じゃあ仮のリーダーでも決めましょう」
田中さんの提案通り、浜野さんのマジックで仮のリーダー、宴会部長、風呂焚き係を決めることになった。
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bkm