キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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奇術愛好家殺人未遂事件


マジシャンの弟子


あおいちゃんちのマンション前で、探偵ボウズー江戸川コナンに会ってから2日後。
相変わらずあおいちゃんは、どこかよそよそしかった…。
あの探偵ボウズは、俺に嫌われたくないから話せないって言っていたが、今はもうそれ以前の問題なわけで。
何か1つでもきっかけがあったらいいんだけど。
そんなことを思っていた時、


「奇術愛好家のオフ会?」


あおいちゃんがまさかの発言をしてきた。
なんでも俺が「レッドへリング」として元々いたチャットに、園子ちゃんが「魔法使いの弟子」として参加するようになって、今度あるオフ会に行くから一緒に行くことにしたんだとか。
マジかー…。
女の子が無理矢理オッサン風に見せようとしてんだろーな、って思ってた魔法使いの弟子って園子ちゃんかよ…。
女子高生1人で会ったことない奴らの集まりに行こうとしてたってことか?
あの女、怖いもんなしかよ。
いやでも、空手で都大会優勝した親友に、世界大会にまで出れるほどの猛者が恋人なら、向かうとこ敵なしな怖いもの知らずになっても仕方ねーのかもしれない…。


「園子ちゃん、行動力エグいな」
「園子だからね」


でもやっぱり、1人で行くのは気が引けて、あおいちゃんに話しが回ってきた、と。
…あの集まり、なんか起こりそうだから行ってほしくねーんだけど(しかも俺も行くし)ここで駄目って言ってこれ以上この空気が微妙になるのもどーかと思うよなー。
なんて思っていた時、


「で、でね!奇術愛好家、って言う人たちの集まりだし、私も何かマジックできた方がいいのかなー、って思って、」


あおいちゃんが驚くべきことを言った。
マジックする、って?
あおいちゃんが?
オフ会に本当に行く、行かないは別として、マジックに興味持ってくれるのは、俺としては大歓迎だし。


「じゃあ俺が教えようか?」
「で、でも難しい奴は出来ないよ」
「うん。時間もないし、簡単な…コレとかは?」


て、ことで、手から花を出すっていう、初歩も初歩のマジックを教えることにした。
…の、だけど。


「で、できたよね!?今できたでしょ!?」


あ、この子センスないかも…。
って、いうのが、正直な感想だった。


「あおいちゃん」
「どう?どうだった?」
「5点」
「ごっ!?」
「やるなら真剣にやろうぜ」


奇術愛好家、っていう集まりに行くためにマジック覚える、ってーことは、そこで披露するかもしれない前提で覚えるってわけで。
…こんなん披露したら笑い飛ばされるだろ、アイツら性格悪いし。


「わ、わわわ私真剣に、」
「そ?じゃあもっと真剣にやろうぜ」


俺の言葉に、キッ、と手元の花を見てもう1度手から花を出した(ていうより、手から花が隠れてなくてそもそも出てた)


「えいっ!」
「あおいちゃん」
「な、なにっ!?」
「その気合いの声いらない。8点」
「…はい」


「えい!」なんてさー、俺的には可愛いよ(むしろその声に点数つけた)
でもさー、駄目だろマジシャンとしてそれは。


「ど、どう!?」
「35点」
「さんじゅう、」
「だからな、右手首の向きが、」


元々あおいちゃんは要領が少し、悪いところがある。
…に、しても、だ。
これはやっぱりこの子、センスねぇな…。


「こ、こここ今度はどうですか…!?」
「んー…、大目に見て50点」
「ついにっ…!」
「でもようやく半分だからな?」
「…はい」


ようやく手に持ってる花が、仕込みの段階でバレるってことがなくなった。
うーん…、概ね出来てる感じなんだけどなー…。
俺となにが違うんだろ…。


「…」


そして何度目になるのか…。
あおいちゃんが手から花を出した。


「おー、今のでようやく80点、まぁまぁ及第点、てとこかな」


まだどこかぎこちなくはあるけど、奇術愛好家、って言う奴らに見せても、あー女子高生が頑張ったな、ってレベルにはなっただろう。
そう思って言った及第点に、


「良かったぁぁぁ!!!!」


あおいちゃんはそれはもう全身で喜びを表すが如く、あの日以来久しぶりに、ガバッ!と俺に抱き着いてきた。


「わっ、私もう一生お花出し続けなきゃいけないんじゃないかってだって快斗くんすごいハイレベルな要求するしもうなにが違うのかよくわかんないしでもお花出し続けなきゃだし私もう快斗くんがこんなに鬼だなんて知らなかったからでもお花出し続けなきゃでもうお花もくっしゃくしゃだしだってそんなお花がもうお花なのに」


あっれ、いつの間に泣くほど切羽詰まってたの?とか。
今さり気なく鬼って言われたけど、そこまで厳しくなかったよな?とか。
そんなこと思うより先に、久しぶりにこの子から俺に触れてきたことに胸が震えた。


「うん。頑張った頑張った」
「か゛い゛と゛く゛ーん゛!!」


頭を撫でる俺に、わんわん泣くあおいちゃん。
…ぶっちゃけ俺も少し、泣きそう。


「快斗くんはプロマジシャンになっても、お弟子さん取らない方がいいと思う!」


ギュッと俺の首に抱き着きながら、泣きやんだあおいちゃんはそう言ってきた。


「えー、なんで?俺教え方上手いと思うけど?」
「上手いとか上手くないとかじゃないの!」
「あおいちゃんは厳しいなぁ」


笑う俺に、ぐりぐりっ、と、頬をくっつけてくるあおいちゃん。
いつも通り、今まで通りのその行動に、心底ホッとした。

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bkm

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