キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

彼女と幼馴染


後悔


どのくらいそうしていたのか、涙も乾いて、冷静になってきた私は、


「…うん?どーした?」
「顔、洗ってくる」


泣き腫らした顔を隠すように俯きながら快斗くんから離れようとした。


「本当に顔洗ってくるだけ?」
「え?」
「もう逃げない?」


驚いて顔を上げた先に、泣きそうな顔をしている快斗くんがいた。
…快斗くんと出逢ってもう3年、おつきあいするようになって2年になるけど、こんな顔するところ、初めて見た。


「せい、ふく、も、シワになっちゃう、し、」
「うん」
「着替えて、顔洗ってくる、だけ、だよ」
「…うん、わかった」


私の言葉にやっと納得したらしい快斗くんは、私を抱き締めていた手をゆっくりと離した。
…快斗くん、あんな顔、するんだ…。
傷ついた?
中森さんのこと、嫌いって、言っちゃったから、とか…。
私が快斗くんでも、きっと、嫌な思いすると思う、し。
だって自分が仲良くしてる人のことを、否定されたら、それはやっぱり、嫌だなぁ、と思うし…。
部屋着に着替えて、顔を洗って、鏡に写るのは、さっぱりとしたはずの私の顔ではなく、やっぱりちょっと、腫れぼったくて、全然さっぱりなんてしていない。


ぱちん!


情けない自分にカツを入れようと、両頬を叩いたけど、元々そんなに根性がない私にはただ痛いだけだった…。


「さっぱりした?」
「うん?うー、ん…」


着替えて戻ってきた私に、快斗くんが聞いてきたけど、やっぱり答えは「うーん」だと思う。


「快斗くん、風邪は?大丈夫?」
「おー。ずっと寝てたし、ちょっと咳出るけどまぁ、すぐ治るだろ」


ハチミツ生姜も飲んでるし、と快斗くんが笑った。
…でもやっぱり、快斗くんのその笑顔も、いつもとはちょっと違っていて、どこか寂しそうに感じた。


「あおいちゃん」
「う、わっ!?」


うん?と言おうとした私の腕を快斗くんが引っ張って抱き寄せてきた。


「本音言うとさ、」


そのままソファに倒れ込むように、2人で横になった。


「あおいちゃんが2度と口聞いてくれねーんじゃねぇかって、マジで怖かった」


私の髪を梳きながら快斗くんがポツリ、ポツリと話しだす。


「俺きっとあおいちゃんに捨てられたら立ち直れねーよ」
「そ、んなことは、」
「え?ないとか言っちゃうの?俺がどんだけあおいちゃん好きかナメてね?」


快斗くんは笑うけど、私の背中に回されていた手に、力が入ったのが伝わった。


「俺の『トクベツ』は今もこれからも、あおいちゃんだけだよ」


そう言うと今度は両手でぎゅっと抱き締めてきた。
…やっぱり、快斗くんを悲しませちゃったんだろうなぁ、って。
傷つけちゃったんだろうなぁ、って。
あと1年。
どうしてもっと上手く出来ないのかな…。
あと1年。
あんなに悲しい顔させちゃうくらいなら、いっそ友達のままでいれば良かったのかな…。
そうすればきっと、快斗くんの「特別」は、中森さんのままだったんじゃないかな…。
快斗くんにぎゅっとされて、嬉しいはずなのに。
この日初めて、自分の選択を後悔した。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -