キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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彼女と幼馴染


焦り


「ぶぇーくしょん!!」


あのクソガキのせいで4月の海を泳がされた俺は、見事に熱を出した。
そりゃーそうだろう。
4月の、それも夜の海を泳いだんだ。
例え俺がアスリートだったとしても風邪引くって話しで。
起きたらお見舞い行くね、って言ってくれたあおいちゃんの優しさが身にしみる。
俺の彼女、やっぱり天使の割合も高いサキュバスとのハーフだ、なんて思ってた。
ジイちゃんから貰った薬が効いてんのか、熱のせいなのかわかんねーけど、とにかく瞼が重い。
あおいちゃんには玄関開けとくから入ってきてと伝えてあるし、このまま寝ていよう。
…そう思ったのが間違いだったと後にして思う。
額にヒヤリと冷たい感触がして目を開けると、


「快斗、気がついた?」


目の前に青子がいた。
…え?なんで?


「何度もチャイム鳴らしたし、玄関も開いてるのに快斗出てこないから心配になって上がらせてもらったの!そしたら快斗、熱出してるし慌てて家から冷えピタ持って来たのよ!」


青子に感謝してよね、と言う。
…駄目だ、青子を追い返そうにも気力がわかねー…。


「快斗、昨日クイーンセリザベス号見に行くとか言ってなかった?何でそんな熱出してるのよ?」
「…近くで見ようとして、海に落ちちまったんだよ」
「もー!ほんっと馬鹿じゃないの!?バ快斗!」
「…ルセェなぁ、頭に響くから怒鳴るなら帰ってくれよ…」


なんでコイツここにいるんだっけ?


「たまたま青子が、頂き物のお裾分けに来たから良かったものの、そんな熱出してるのに快斗1人でどーするつもりだったのよ!?」
「別に呼んでねーだろ…」
「だいたい玄関の鍵開けっ放しだったじゃない!不用心でしょ!」
「だからそれにはちゃんと理由があって、」
「鍵閉め忘れただけでしょ!?」


…うるせぇ…。
青子のキンキン声が頭に響く…。


「今何時?」
「今?10時になるとこだけど?」
「…まだ10時かよ…。オメー、用済んだら帰って…俺寝てっから」
「はいはい、もう帰るわよ!鍵もかけておいてあげるから、」
「あー、それはいい。人来るから開けといて」
「開けとけ、って、ほんと不用心ね」


青子が盛大にため息を吐いたのが聞こえた。
あおいちゃんは米花町からだと早くても昼頃だろう。
その前にもうひと眠りしとこ。


「…っ、」


どのくらい寝たのか、次に目を覚ました時には日も傾き始めようとしていた頃だった。
…すっげー寝たからか、だいぶ身体が楽になった。
ケータイ見たら昼頃にあおいちゃんから、今日行けなくなった、とだけメールが着ていた。
俺の身体も楽になったし、移しても悪いし、わかったと返信をしてからリビングに降りた。


「なんだ?この袋…」


リビングテーブルの上には、市販の風邪薬、冷えピタやポカリが入った袋が置かれていて。
青子の奴、気が効くじゃねーか、なんて思った。


「熱、も、37.3度。ま、許容範囲だな」


夜になる頃には熱も下がって、明日は普通に学校行けそうだと、早めに寝ることにした。
そして翌日。


「快斗、おはよー!熱下がったの?」


朝家を出ると青子がいて、一緒に学校に行く流れになった。


「そー言えば、リビングに置いた袋わかった?」


歩いてる途中で青子が聞いてきた。


「おー、あれありがとな」
「え?あれ青子じゃないよ?」
「え?」


その言葉に青子の顔を見た。


「快斗の家に行った時はなかったんだけど、青子が帰る時玄関に置いてあったんだよ。快斗も人が来るって言ってたから、その人かと思ってリビングに置いたんだけど」


青子の言葉がゆっくりと脳に伝わる。
…あれは青子じゃない?
でもあの袋は明らかに俺が風邪を引いてるって知ってる人物からなわけで。
青子の言い方だとつまり、その人物は、青子がうちにいる時に来た、ってことで。


「え!?ど、どうしたの!?」


そこまで思い至って、速攻ケータイであおいちゃんに電話をかけた。
…案の定、コールすらしねーってことは、電源切ってやがる!


「青子!」
「な、なに?」
「俺今日風邪で欠席な!」
「…は、はぁ!?」


何かを叫ぶ青子に背を向け、自宅に戻った。

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bkm

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