キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

彼女と幼馴染


彼の部屋に


「蘭がキッド様だったの!?」


快斗くんが変装した蘭と一緒に会場を飛び出したコナンくんは、本物の蘭と、ブラックスター片手に戻ってきた。


「ちょっ、蘭!キッド様見た!?」
「それが気がついたら寝てたから覚えてないのよねー…ふぁあ…」


薬で眠らされたらしい蘭は、まだどこか眠そうだ。


「なんなのよ!蘭もあおいもキッド様に会ってズルいでしょ!?」


自分だけ会ってない!って、園子はダン!ダン!て地団駄踏んでるけど、たぶん蘭より園子の方がキッドと仲良いと思うのね…。


「コナンくん、偉いね。ブラックスター取り返してきて」
「え!?…え、えへへー」


新一くんにだったら絶対にしないけど、目の前にいるのが私より小さいコナンくんだと思うと、自然と頭を撫でていた。
私の行為に一瞬驚いた顔をしたけど、まんざらでもなさそう。
さすがコニャン!


「でも危ないから1人で会おうとしちゃダメだよ」
「え?」
「キッドはほら…良い人だから、コナンくんを傷つけることないけど、これが例えば凶悪犯だったら大変なんだよ?だから犯人がわかっても1人で行っちゃだめ。わかった?」
「…はーい」


ごめんなさーい、ってぶりっと可愛らしく言うコナンくんが新一くんと同一人物だとは誰も思うまい。
女優の血、恐るべし…!


「それでキッドは、」
「うん。逃げたんだけど、どうやって逃げたかまでは…。ボートも出てないし、ハンググライダーも飛んでないって話だし、もしかしたらまだ船内のどこかに隠れてるのかも、って中森警部が」


なら快斗くんはちゃんと逃げれた、ってことだ。
…この4月の海を泳いで…。
快斗くん…、風邪…引くよね、普通…。
明日お見舞い…、でもいきなり行っても不自然だし、だけど行かないって選択肢もないわけだけど、自然にってどうしたら…。
とりあえずメールだけでもしておこう、かな。


to:黒羽快斗
sub:ドレス
本文:似合ってる、って言われたよ!貸してくれてありがとう!クリーニングに出して返すね。パーティーでマジシャンを見たら快斗くん思い出しちゃった…。快斗くんとお話したいです


不自然じゃないよね?
大丈夫だよね?
よし…!送った!!
あとは返事を待つだけだけど、当然のことながら、返事は来なくて。
今も…泳いでるのかな…とか。
途中で溺れたりしてないかな…とか。
そんなこと考えてたら気が気じゃなくて、自宅に着いてからもケータイを握り締めてウロウロウロウロと、部屋の中を彷徨っていた。


ピロン


そんな時、メール着信の音が鳴ったから、バッ!と画面に食いついた。


from:黒羽快斗
sub:無題
本文:風邪引いたかも


その一言だけだった。
でもたった一言でも、無事に岸にたどり着いたんだ、って思ったらホッとため息が出た。
日曜日だし、起きたらお見舞いに行くよ、とメールを返してその日は眠りについた。
そして20日の日曜日。
私の昨日のメールには、玄関開けとくからそのまま入ってきて、と返信が着ていた。
…快斗くんの部屋から玄関開けに来れないくらいマズい状態なのかもしれない。
快斗くんちに行く前に、念のためと、市販の風邪薬と冷えピタ、ポカリなんかを用意して向かった。
4月の空にバイクの風はまだちょっと冷たいけど、でも急がなきゃ、って、バイクを飛ばした。
ちなみにこのバイク、快斗くんのお母さんから譲ってもらった物だ。
そんな悪いです、って言ったら、乗らない方がもったいないから、って言われて。
なんでも若い頃に乗っていた思い出のバイクらしく、捨てたくないんだとか。
だからそれはそれはありがたく丁寧に乗らせてもらっている。
そしてこのバイク、お母さんの性格を表すかのように、なんていうか…、めちゃくちゃスピードが出るバイクだ。
ほんとにお母さんの若い頃のバイクなの!?ってくらい今も簡単にスピードが出る(私はそんなにスピード出さないけど)
だから今日も江古田までバビューン!とひと息だった。
快斗くんちに着いて、バイクを止めて、玄関に手をかけるとほんとに鍵が開いていて…。


「お、お邪魔しまーす…」


どこか小声でそう言っていた。
…ほんとはこの時点であれ?って思ったんだと思う。
見たことないサンダルが一足、玄関にあったから。
でもこの時そのサンダルは私の目の端に写るだけで、とにかく快斗くんが心配だから、って快斗くんの部屋に向かった。
…のが、間違いだった。


「もー!ほんっと馬鹿じゃないの!?バ快斗!」
「…ルセェなぁ、頭に響くから怒鳴るなら帰ってくれよ…」


部屋に近づくと、誰かの話し声が聞こえてきて。


「たまたま青子が、頂き物のお裾分けに来たから良かったものの、そんな熱出してるのに快斗1人でどーするつもりだったのよ!?」
「別に呼んでねーだろ…」
「だいたい玄関の鍵開けっ放しだったじゃない!不用心でしょ!」
「だからそれにはちゃんと理由があって、」
「鍵閉め忘れただけでしょ!?」


快斗くんの部屋の扉は、少し開いていて。
中からちょっと鼻声の快斗くんと、もう1人…中森さんの声が聞こえてきた。
何を、どう、思ったのか、正直よく覚えてない。
私はただ、今この場所から離れなきゃ、ってそう思った。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -