キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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コナンvs怪盗キッド


ハーフ


鈴木財閥60周年記念クイーンセリザベス号船上パーティー。
の、前に諸々の下準備を終えた俺は、件の探偵ボウズのことを調べることにした。
江戸川コナン、この春小学校入学予定。
両親は海外在住、阿笠博士の遠縁にあたるため彼を頼りに米花町にやって来たものの、毛利探偵事務所の居候として住み込むようになる。


「眠りの小五郎の影響、か…?」


でもコイツ、なーんか不自然なんだよな…。
上手く言えねーけど「毛利探偵事務所に転がりこんだ江戸川コナン」を前提に作られたような状況に感じる。
俺の直感はよく当たる。
だからって普通に考えてそんなわけあるはずがない。
だってそうだろう?
たかが6歳のガキ、なんのためにそんなことするんだ、って話だ。
でも、この違和感は覚えていて損はないはずだ。
そうこうしてる間に、4月19日当日。
前もって会長夫人には先に乗船して偽物の黒真珠の確認をするように言っていたため、あおいちゃんたちと現地集合する園子ちゃんと会長夫人だけが先に鈴木家を出発。
それを見届け会長に今日のパーティーは2時間遅らせるとと電話。
これで心置きなく、俺は鈴木財閥の会長になれるってわけだ。
そして予定通り、園子ちゃんがあおいちゃんはじめ蘭ちゃん、眠りの小五郎、そして探偵ボウズを連れてやってきた。


「これはこれは鈴木会長。お招きありがとうございます」
「あおいさん、蘭さんも、それからキミは確か…」
「コナン。江戸川コナンだよ!」


なーにが、江戸川コナンだよ!だ。
オメー、杯戸シティホテルで俺に名乗った時とぜんっぜん違うじゃねーかよ。
これが猫被りって奴か。
おっかねーなぁ、最近の小学生は。
…なんて思ったら、異常なまでに視線を感じるからそっちを見たらあおいちゃんからの視線で。
あー、やっぱりそのドレス似合うわー、痴女が選んだあんな肩も胸も出てるようなドレスと大違いだ、俺の彼女が世界一可愛い、マジお姫様、なんて思わず見返しちまったんだけど、その間もジーーーーッと俺を見つめるあおいちゃんに、


「どうかしましたか?」


思わず声をかけちまった…。
…俺の変装バレたとか?
いや、そんなわけねーよな、他の人間誰も気づいてねーし。
だけどあおいちゃんのことだからわかんねーよな…。
なんて内心焦ってたら、この前の誘拐事件の時の礼を言われた。
…なんだよ、バレたわけじゃねーのか。
そりゃそうか、なんてホッとしながらその場を離れた。


「我が鈴木財閥も今年で早60周年、」


会長挨拶は事前に秘書から渡された文面を暗記して話すだけ。
…てゆーか、世界に名だたる大財閥の鈴木家がたった60年しか経ってないってのもすげーよな。
こんな穏やかそーなオッサンなのに、経営センスがエグそう、このオヤジ。
あっちにいるおっかねー会長夫人といい、さすが「あの」園子ちゃんの親なだけある。
園子ちゃんはきっと2人を上手い具合にブレンドして生まれてきたに違いない。


「会長?どちらに行かれるのです?」
「少し用を足しに、」
「着いて行きましょうか?」
「直ぐ戻るので大丈夫ですよ」


ここの秘書は便所まで着いてくんのかよ…。
いや、これだけ警官がうじゃうじゃしてて、犯行予告出てる現場だからか…。


「会長業も楽じゃねーなぁ…」


トイレに篭って変装を解き、もう1人の変装相手になるべく、その時が来るのを身を潜めて待つことにした。
さぁて、こっからいかに自然に蘭ちゃんだけ会場外に呼び出そうか、と思っていたら、ちょうど良いタイミングで蘭ちゃんが会場から出てきた。
…しかもラッキーなことに蘭ちゃん1人。
あおいちゃんがついてきてたらどーしようかと思ったが、いい感じに空気読んでる気がした。
可愛いだけじゃなく、仕事がスムーズにいくようにしてくれるとかさすが俺の彼女(本人にそのつもりは一切ないけどな)
そして会場外でウロウロしている蘭ちゃんを眠らせ、何食わぬ顔で会場に入った。


「蘭もたまに方向音痴発揮するからねー!」
「どうせ方向音痴ですよ!」
「蘭!」


会場に戻ると、まさに俺、いや「私」の話題をしているところだった。
まさか蘭ちゃんをそこら辺に捨てとくわけにもいかねーし、すぐには見つからないように、寒くないように救命ボートに隠して来たものだから、戻りが遅くなっちまったが、これくらいはギリ許容範囲だろう。
…なんて思っていたら、またジーーーーッとあおいちゃんがこっちを見てきた。


「なぁに、あおい?」


俺を、いや「毛利蘭」を見たあとで少し考え込むような素振りをするあおいちゃん。
いったいどうしたのかと思ったら、ジェスチャーつきで耳を貸せと言われた。
蘭ちゃんと比べても背の低いあおいちゃんに、身を屈めて耳を傾けた。
直後、


「次は、瞳の色も変えた方がいいですよ、怪盗さん」


俺にしか聞こえない声で、はっきりとそう言ってきた。
…「怪盗さん」?
は?え、何この子、今の一瞬で蘭ちゃんじゃないって見抜いたってことか!?
え!?でも俺と蘭ちゃんなんて、瞳の色そこまで違わなくね!?
よく見ねぇとわかんねーレベルじゃねーの!?
この子他人をよく見すぎじゃね!?!?
…て、言葉をグッと飲み込み、


「なんの話?」


って聞いた。
俺の言葉にあおいちゃんは両手を振りながら、


「う、ううん!違うならいいんだけど、ただちょっと、気になっちゃったから」


ごめん、と俺から目を逸らし、呟くように言った。
…駄目だ、これ完全にバレてる。
嘘だろ、今の今まで、キッドの変装を一瞬で見破る奴なんていなかったぞ!?
え、俺の彼女すごくね?
ヤバくね?この観察眼!!
…もしかして鈴木会長の時も気づいてた、とか?
いやでも、あの人の時はカラコン入れた上でメガネもしてたぞ?
じゃああれは偶然か?
チラッとあおいちゃんを見ても、別に誰かに言うような素振りは全くない。
この子はキッドを「恩人」と言っていた。
その「恩人」のためになることをしている、ってことか?
…この子はキッドの敵じゃない。
それはわかる。
でも決して味方にしちゃいけない。
それも、わかっている。


「合言葉です!側にいる方とペアを組んで2人だけの合言葉を決めてください!」


どーしたもんかと思ってるうちに、合言葉を決めるって流れになったから、隣にいた探偵ボウズと合言葉を決めた。
直後、会長夫人が予め用意していた偽キッドが現れる。
真田一三、特に女性に人気のイケメン若手マジシャン、って話しだったか。
…まぁ、キッドの敵じゃあねーけどな。
でもあおいちゃんはマジック好きだし、こーいう奴も喜ぶのかなー、とか思ってチラッとそっちを見たけど。


「…」


待って、それどういう感情?って言うくらい、無表情に真田一三を見ていた。
この子の興奮ポイントがわからねー…。
けどまぁ、少なくとも真田一三には興味ねーのはわかった、うん。
それどころか、


「あの人ちょっとイケメンじゃない?」
「んー…、快斗くんの方がイケメンかなー」
「出たぁ…。あんたほんっと、旦那ラブよね」


園子ちゃんとの何気ない会話が聞こえてきた。
…尊い。
俺の彼女、可愛い上マジで尊い。
きっと天使とサキュバスのハーフに違いない。


「では最初にカードマジックを」


そして真田一三がカードマジックを見せる、って時、客にカードを切らせてるからカードが床にバラけるように仕向けた。
さり気なくそのカードを拾い集め、真田一三に近づく。


「ありがとう、お嬢さんたち。お礼にカードを一枚差し上げましょう」
「ええ?いいんですか?」
「待った!その前に私の透視眼でキミたちの心を透視して選ぶカードを透視しよう!」
「ドキドキしちゃうね!」


ニコッと笑ってあおいちゃんを見ると、どこか興奮してるような顔をしていて。
やっぱりマジック自体は好きなんだろうと思った。


「うーん…。鳩?はと、はーと…。じゃあ、ハートのエースっていうことで!さ、お好きなカードを一枚引いてください?」
「蘭!右!右!右のヤツ!!」


園子ちゃんの指示通り、カードを引く…フリをする。


クレオパトラに魅了された 
シーザーのごとく 
私はもう 貴方のそばに 
怪盗キッド


「キッドだ!キッドが現れた!」


ざわつく会場。
…さぁ、ショーの始まりだぜ!


「あおい嬢からのご忠告、次回から気をつけさせて頂きますよ」


一応、あおいちゃんに礼を伝えてから、次の行動に移った。


「ち、ちょっと蘭!胸の真珠どこいったの?」
「え?嘘?…あ、すみませーん、誰かその真珠拾ってください!」


…スリー…ツー…ワン!


「し、真珠だ!真珠が爆発した!!」


火薬が仕込まれていた偽真珠が破裂し、一気に会場がパニックに陥った。


「大丈夫ですか?」
「え、ええ。ありがとう、蘭ちゃん」
「…あれ?ママのもなくなってるわよ、黒真珠!」
「あーーー!!!キッドよ!キッドにブラックスターを盗まれましたわ!!!」


混乱に乗じて、会長夫人の黒真珠を盗むことに成功。
後はここから離れるだけ。
…って、時に、


「蘭姉ちゃん!僕らも捕まえに行こう!!」
「ちょ、ちょっとコナンくん!」
「わかったんだよ!怪盗キッドの正体が!!」
「ええ!?」


まさかの探偵ボウズに腕を引っ張られる事態に陥った。
まぁ…、杯戸シティホテルの屋上に現れたコイツがどんな推理をしたのか、拝聴してやろうじゃねーか。

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