キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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コナンvs怪盗キッド


4月1日


あおいちゃんの友人でもあるし、何より俺自身も関わりがある園子ちゃんちのモノを狙うのはどーしても気が引けて。
でも確かめないわけにはいかず、鈴木財閥に向けて予告状を出したのは3月も終わりに差し掛かった頃のこと。
まぁ違ったら丁重に返却するし、と軽い気持ちで考えていたわけだが。


「園子のお家の家宝がキッドに狙われてるから、どんな宝石かみんなで見に行こう、ってなったの」


まさかその犯行現場を見に行くと言われるとは思いもしなかった。
それまでの俺たちの会話に怪盗キッドの話題がこういう形で出たことがなかったから、勝手に思い込んでいた。
クラスの奴らやメディアに踊らされてる奴らと違って、キッドの犯行に興味がないんだろう、と。


「興味なくないよ?ほら、だって助けてくれた人だし!」
「いやまぁそーなんだけど、そういう…犯行現場に行くようなことしないと思ってた」
「今回はほら、園子のお家の宝石だし、」
「…まぁ、なぁ…」


その言い方だと、キッドの犯行に興味があるというより、鈴木家所有の宝石だから、ってことだ。
…園子ちゃんち、財閥なだけあって、これだけじゃねーんだよな、確認してー宝石…。
でもあおいちゃんが犯行現場うろつくようになると、それはそれでやりにくくなりそうだ(工藤新一がいたりする可能性あるし)
…どーすっかなぁ…。
一応見に行くメンバー聞いたら、園子ちゃん、蘭ちゃん、蘭ちゃんの父親の眠りの小五郎と、蘭ちゃんちの居候のガキ、ってことだ。
そこに名前が出てない奴について聞いたら、


「新一くん、今ちょっと…厄介な事件?でいなくてさ。学校も1年の終わりに休学届け出したんだよ」


予想外の言葉が返ってきた。
…学校を休学しなければならないほどの厄介な事件?


「ヤバくね?それダイジョーブなの?」
「大丈夫みたいだけど、学校には来れないみたい?」
「え、それあおいちゃん関わらないでね、マジで」
「私は関わらないよー」
「いやー、わっかんねーぞー…。あおいちゃん、めちゃくちゃ事件に巻き込まれやすいからマジで気をつけて」


何に巻き込まれたか知らねーが、アイツのことだ。
自ら、あおいちゃんを巻き込むようなことしないだろーが、今までを振り返っても、巻き込む気がなくとも巻き込まれる可能性が高すぎる。
…これ以上ややこしい話を持ち込むのだけは勘弁してくれ。


「キッドファンの子、最近多いよね」
「… あおいちゃんは?」
「え?」
「ファンなの?キッドの」


結局この子にとっての怪盗キッドはどういう位置づけなのか、確認しておきたかった。
けど、


「ファン、ていうか、恩人?」


まぁ…、そうだよなー、って返事。
確かにあの園子ちゃん誘拐事件の時に助けてもらったから、恩人には違いない。
恩人、か…。
微妙なラインだな…。
キッドファンであるなら、見えないボーダーラインが引かれているが、恩人となったらそのラインが薄まる。
これ以上「キッド」として、安易に近づくとヤベーかもな…。
そんなことを思い悩み始めた犯行予告直前の夜。


「闇夜に鉄のカラスが3羽、…さらに2羽!おーとっと!装甲車まで用意してやがる!さすが警視庁!気合い入ってんじゃねーか!」


東都タワーから米花博物館を見下ろせば、随分と物々しく警備体制が敷かれているのがわかる。
世界に名だたる大財閥の宝石。
どれだけの警備になるかと思えば、今までのそれとは明らかに数が違う。
鈴木財閥と、そして警視庁のメンツって奴か。
…まぁ、誰が来ようが俺は俺の仕事をするだけだ。
ジイちゃんに見送られ、米花博物館へ向かう経由地とした、杯戸シティホテルの屋上に降り立つ直前、屋上で動く物体…ガキの姿が見えた。
…この時間に、そもそもシティホテルの屋上になんであんなガキが?
そう思った時、フッとさっき別れたジイちゃんに言われた言葉が蘇る。

ー盗一様が常々言っておられました。客に接する時、そこは決闘の場。決して奢らず侮らず、相手の心を見透かし、その肢体の先に全神経を集中して、持てる技を尽くしなおかつ笑顔と気品を損なわずー


「いつ何時たりとも、ポーカーフェイスを忘れるな…。…ガキだろうが、気抜くな、ってね」


誰に言うわけでもない言葉を呟いて、夜の静寂の中、杯戸シティホテルに降り立った。
俺の気配に気づいたガキの方へ1歩ずつ、歩みを進める。
…ガキだってのはわかってたが、近づいてみてもマジでガキじゃねーか。
小学…1〜2年くらいか?


「よぉ、ボウズ。何やってんだ?こんなところで」


問う俺に背を向け、


ヒューー パァン!


「花火だよ」


そのガキはロケット花火を打ち上げやがった。


「あー!ほら、ヘリコプター!こっちに気づいたみたいだよ?」
「…ボウズ、ただのガキじゃねぇな?」
「江戸川コナン。探偵さ」


その見た目とは不相応な顔で俺を見てくるガキは、探偵と言った。
…探偵、ねぇ。


「それよりいいの?怪盗キッドさん?早く逃げないとヘリコプター来ちゃうよ?」
「…ふむ」


このガキがどういうつもりでここにいるのかは知らねーが、こんなガキに捕まるような俺じゃないんでね。


「あー、こちら茶木だが」
「なっ!?」
「杯戸シティホテルの屋上に怪盗キッド発見。米花、杯戸町近辺の全車両及び米花町上空の全ヘリ部隊に告ぐ。速やかに現場に直行し、怪盗キッドを拘束せよ!」


茶木警視の声色を出した俺に、驚きを隠せないコイツは、目を見開いて俺を見てきた。


「えー、ワシだ。中森だ。杯戸シティホテル内を警戒中の各員に告ぐ。怪盗キッドは屋上だ!総員直ちに突入、キッドを取り押さえろ!」


俺が無線を使い終わったと同じタイミングで、米花町上空を警戒していたヘリが屋上に着き、そのライトで俺たちを照らし出した。


「これで満足か?探偵くん?」
「動くな!キッド!」
「これはこれは中森警部。お早いお着きで」
「ふん!何を言う!ワシが貴様の予告状を解いて、ここを張っていたのを知っていたくせに!」


中森警部は「怪盗キッド」とのつきあいが長いだけあり、イイとこついてくる。


「今夜は貴方方の出方を伺うただの下見。盗るつもりはありませんよ」
「何ぃ!?」
「おや?ちゃんと予告状の最初に記したはずですよ?エイプリルフール。ウソ、ってね」


飛び立つ素振りを見せた俺に、その場にいた全員が「そうなる」と思い警戒する。
…だからこそ成立するトリック。


「よぉ、ボウズ。知ってるか?怪盗は鮮やかに獲物を盗み出す、創造的な芸術家だが、探偵はその後を見て難癖つける、ただの批評家に過ぎねーんだぜ?」


閃光弾で目くらましをして、本当の予告状を飛ばして近くの刑事に紛れ込んだ。
…それにしても、だ。
江戸川コナン、探偵、つったか。
俺の知ってる最たる探偵、って言ったら言わずもがなアイツなわけで。
このガキは、こんなナリのくせに、俺を見てきたあの目は間違いなく、あのクソ野郎を彷彿とさせる。


「探偵なんかしてると、みんな同じよーな目になっちまうのかねー…」
「何か言ったか?」
「いえ!何でもありません!」


どーやって入り込んだのか知らねーが、屋上にいたガキを置いて、近くにいた刑事と共にその場から離脱した。

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bkm

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