キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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時は満ちて


2年先の未来も


あおいちゃんは小さい。
でも、すげー柔らかい。
例えるならマシュマロみたいな?
そう言ったら、あおいちゃんには、そこまでぷにぷにしてない!って言われたけど。
そーいう意味じゃなくて、ただハグするだけで俺にはない柔らかさや温かさがあって気持ちいいし落ち着く。
だからかこうやって寝るようになってからはもう無意識的にあおいちゃんに抱き着いて寝ている自分がいた。
そこまで寝相が良い方じゃない自覚はあったけど、あおいちゃんを抱きしめて寝ると存外寝相が良くなることに気づいた。
目が覚めて1番最初に見るのが、俺の腕の中で気持ち良さそうに寝ているあおいちゃんの顔、って言うのは何度経験しても口元が緩む。
髪を触ってみたり、顔にキスしてみても起きる気配のないあおいちゃん。
…昨日なかなか寝つけなかったっぽいし、先に朝ごはんでも作っておくか。
そう思って、起こさないようにベッドから抜け出た。


「んー…、なぁに作ろっかなぁ」


昨日急遽来ることになったから、冷蔵庫の中にはあまり買い置きがない。
けどまぁ、パンあるし、卵も牛乳もあるし。
俺が甘いの好きだからか、あおいちゃんちは何故か生クリームだけは常にストックがある。
ならフレンチトーストにせっかくだから生クリーム使ってー…、余った卵液でプリンもいいなー。
なんていろいろと考え出したら、時間もあるしどーせなら全部作っちまえとか。
そんなこと思って一通り作り終えたのは実に40分後で。
温かいうちに食べてほしーなぁ、とか思った俺は、あおいちゃんを起こしに行くことにした。
ドアを開けると、ベッドの上に座り今起きたてです、って感じに目を擦ってるあおいちゃんがいて、まさにナイスタイミングって思った。


「おはよう、ハニー」


ベッドサイドまで行って手を差し出すと、眠そうな目のままその手を取ったあおいちゃん。
腕に力を入れて立ち上がらせ、おはよう、とキスをした。


「…おはよ…」


あまり開かない目のまま俺に抱き着いてくるあおいちゃんをメシに誘って部屋を出た。


「ふぅおお!!美味しそう!!」
「あおいちゃん起きて来なそうで時間あったから、張り切っちゃった」
「すごーい!!」
「食後にプリンもあるからな」
「やったぁ!!」


明らかにテンションが上がったあおいちゃんは、顔を洗ってくると忙しなく動き始めた。
…昨日は暗かったけど、少しでも元気出てきた感じで良かった。


「「いっただっきまーす!」」
「……美味しい!」
「それは良かった」


あおいちゃんは本当に美味そうに食べてくれるから、作る方も作り甲斐がある。
こういう顔を見れるなら、毎日だって作ってもいい。
そんなこと思っていたら、


「こんな朝ごはんなら毎日食べたいなー」


同じタイミングで似たようなことを考えていたらしいあおいちゃんがそう言ってきた。


「じゃあ一緒に暮らしちゃう?」
「……………えっ!?」


冗談半分でそう言った俺を、飛びてるんじゃねーかってくらいに目を見開いて見てきた。


「けどまー、あおいちゃんの言い分的には?俺ら『まだ高校生』だからダメってことだし?なら2年後、卒業したら一緒に暮らそ」


2年後というのは、あおいちゃんが言う1年後のその先のことなわけで。
未来のことを口にした時どんな反応見せるのか、見てみたかった、って言うのはあったけど、


「…」


あおいちゃんは何かを言いかけては口を閉じ、を、数回繰り返し後で完全に口を閉じた。
…やっぱりこの子は、少なくとも2年後にはここにはいないと思っているってことだろう。


「でもその前に、2年後まであおいちゃんに愛想尽かされないようにしねーとなー」
「あ、愛想なんて尽かさないよ!」


戯けたように言った俺の言葉を、あおいちゃんは強く否定した。


「だってそんな、快斗くんに愛想なんて、」


それでも。
2年後もここにいるとは、言わずにいる。


「俺は2年後も、2年だけじゃなくてその先もずっと、あおいちゃんとこうやってメシ食ってたいと思うよ」
「え?」
「これから先も俺が作った奴、美味そーに食ってくれるあおいちゃんの顔見ながら、メシ食っていたいと思うけど?あおいちゃんは?」


それは自分の意思でのことなのか、それとも自分ではどうにもできない…、それこそ「運命」というものなのか…。


「わ、たし、は、」
「うん。私は?」
「………私、も、快斗くんとずっと、ご飯食べたい、よ?」
「なら良かった」


それを聞けて、少し安心したのは事実だ。
あおいちゃん自身は少なくともここにいたいと思ってくれている。
やっぱり、本人の意思とは関係ない何かが1年後に起こる、ってことだ。
マンションの契約が切れる、ってことだけじゃない。
何が起こるのか…。
もう少し別の角度からも見ていく必要があると思った。

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bkm

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