キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

時は満ちて


惑う道の先


蘭と別れてマンションに帰ってきた私は、快斗くんに連絡した。
…新一くんはきっと、予定通り、江戸川コナンになった、と、思う。
それは快斗くんにとって良いことだと思っても、でもまず2人が協力関係になるまでは、江戸川コナンは怪盗キッドの宿敵だった。
それはつまり、快斗くんが危ない思いをするってことで…。
もしこの世界で怪盗キッドの味方になってくれる人を探したとしたら。
紅子ちゃんは私との契約があるから味方かもしれないけど、そういうことじゃなくて、力を貸してくれる人、力になれる人がいるのだとしたら、それはやっぱり、新一くんしかいないと思う。
だからこれは、必要なことなんだ。
…なんて言い聞かせても、やっぱり新一くんがツラい思いをしてしまったことも、快斗くんがこれから大変な思いをするかもしれないことも「必要なことだ」とは言い切れなくて…。
ただ、快斗くんに会って、ぎゅってしてほしかった。
私はただ、快斗くんに肯定してもらいたかったんだと、思う。


「ごめん、タオル貸してくれる?途中で降ってきちまって濡れちまっ」


抱きしめた快斗くんの服は濡れていて、3月の雨は、春と言うにはまだ早い、そんな冷たさを含んでいた。


「あおいちゃんも濡れちまうぜ?」


快斗くんは優しい。
そして私に甘い。
もしここで、全てを、洗いざらい話してしまったとしても、快斗くんなら受け入れてくれそうな気も、どこかでしていて。
けど自分が楽になりたいからって、それはしてはいけないことだと思った。


「とりあえずさ、さすがに少し寒くなってきたから部屋に入れてもらえると嬉しいんだけど?」
「ごっ、ごめ、」


快斗くんが、雨酷いし泊まっていいか?って聞いてきたから、頷いたら、うちに置いてたままにしているスウェットに着替えることになった。
脱いだ服を乾かして、風邪引かないようにと温かい飲み物を用意してる時、快斗くんがテレビをつけて。
テレビからはトロピカルランドの事件のことが聞こえてきた。
これだけ大きく報道されてるんだ。
もし、あのコースターに乗らなかったとしても、新一くんは事件解決に向かったと思う。
…そうしたらやっぱり、ジンとウォッカの取り引き現場に辿り着いてしまったんじゃないかな…、なんて。
全部全部、自分を正当化しているだけな気がしてきてもう頭がパンク寸前だ。


「あおいちゃん、こっちおいで」


そう言って抱き寄せてくれる快斗くんの身体は雨に濡れたとは思えないほど温かい。
快斗くんは、たまに指先こそ冷たい時があるけど、体温は高めだと思う。
だから今はこの体温がとても心地よく感じる。


「快斗くんはさ、」
「うん?」
「…自分がした選択で、誰かの運命が決まってしまったら、その選択は正しかったって言い切れる?」


私がした選択で、新一くんの、そして蘭の、何より快斗くんの運命が決まってしまった。
それはほんとうに良いことだったのか…。


「例えばさ、」
「うん?」
「俺はあおいちゃんが好きなわけ。信用も信頼もしてる」
「うん」
「だからもし、あおいちゃんが選択したことで俺の運命が決まったとしても、俺はそれを受け入れるし、あおいちゃんが考えて選択したならそれは正しいって言えるよ」


真っ直ぐ私を見つめる快斗くんの綺麗な青い瞳は、いつ見ても、星空に落ちるようなそんな気持ちにさせる瞳をしている。


「けどまー、俺としては決断下す前に一旦話しは聞きてぇけどな?」
「…でも話せないこともあるよね?」
「んー…、でもだからこそ、話してほしいけどな。話せないような内容を、1人で抱えてたってことだろ?ならやっぱり、決断下す前に、…例え全部じゃなかったとしても、話しは聞きてぇと思うよ」
「…でも…」
「それに、1人より2人で知恵出し合えば、案外違う解決策も出るかもだしな!」


快斗くんは笑う。
…でもそれは、言える内容の話しだからだよ、なんて、言えずにいた。
その夜。
快斗くんがベッドで眠りについた後で、なかなか寝つけない私は水でも飲もうとベッドから抜け出た。
その時にケータイを見ると2件、メール受信の通知が着ていた。
1件は紅子ちゃんから。
光の魔人の力が急激に弱まったけど、何か知ってる?というもの。
そしてもう1件は蘭。
博士の親戚の子を預かることになったけど、昔の新一に似てる気がする、っていうもの。
…まだ、本人には会っていないけど。
それはもう確定したようなものだ。
明日、は、快斗くんがいるから無理だけど、明後日、学校帰りにでも会いに行こう。
きっとその先で、今日のこの決断で良かったのかどうか…、少しでもわかるはずだから。
そう思いベッドに戻った私を、寝ているはずの快斗くんがぎゅって抱きしめてきた。

.

prev next


bkm

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -