キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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時は満ちて


最善の道にするには


あおいちゃんがトロピカルランドに行くそうだ。
園子ちゃん、蘭ちゃん、そして工藤新一と。


ー俺の1番の願いを叶えさせてくれた女、特別じゃないわけないだろー


アイツはもう1人の俺だ。
あおいちゃんの、…自分のトクベツのためならきっと、なんでもするだろう。
きっと、そういう奴だと、今ならわかる。
だからほんとはそんな奴とテーマパークなんて行ってほしくねーってのはあったけど、でも仲間内でってなら、あんまり束縛彼氏になりたくねーし?
行ってこい、って見送ったけど。


from: あおいちゃん
sub:無題
本文:電話したいです


トロピカルランド行ってたはずのあおいちゃんからそんなメールが着た。
いつもならタイトルもつけてメール寄越してくれるのに、珍しいなーなんて思いながら速攻電話をかけた。


「快斗くん」
「どーした?何かあった?」
「いつ会える?」


あおいちゃんはこういうこと言う時はだいたい柔らかく「会いたいなぁ」とか、そういう言い方をする。
こんなに切羽詰まった感じに会いたいなんて言わない。


「これから行くよ」


これ絶対何かあった。
この子がこんなに弱って頼ってくるなんて、珍しいなんてもんじゃない。
だから気がついたらそう言っていた。
いつもならたぶんあおいちゃんは、いいよ悪いよ、と断るだろう。
でも今日は、


「うん。待ってる」


そう言った。
そこからはもうバイクぶっ飛ばして米花町に向かった。
途中雨に当たって、だいぶ濡れちまったが、無事あおいちゃんちに着いた。
チャイム鳴らして玄関ドア開けてもらった。


「ごめん、タオル貸してくれる?途中で降ってきちまって濡れちまっ」


言い終わる前にあおいちゃんが抱きついてきた。
咄嗟に言葉が出ずにいたら、玄関ドアが閉まる音が辺りに響いた。


「あおいちゃんも濡れちまうぜ?」
「……」



濡れることも構わないようで、何も言わずに抱きついてるあおいちゃんを見て、俺も抱きしめ返した。


「どーした?楽しくなかったのか?トロピカルランド」
「……」


黙って俯いているあおいちゃんは、泣いてるのか泣いてないのかわからなかった。


「とりあえずさ、さすがに少し寒くなってきたから部屋に入れてもらえると嬉しいんだけど?」
「ごっ、ごめ、」


そう言って離れたあおいちゃんの目が少し、赤い気がした。
部屋に入って濡れた服乾かすって言われて、じゃあもういっそ泊まっちまえとあおいちゃんちに置いておいたスウェットに着替えた。
俺が着替え始めたら、服を干してくれたり、温かい飲み物を用意してくれたりと、パタパタ動くあおいちゃん。
先に手持ち無沙汰になった俺は、テレビをつけることにした。


「…ットコースターが走行中に、男性の首が切断される事件が起こり、当面の間このテーマパークでのジェットコースターは全て運行中止になる模様です」
「…は?」


途中から見た物だから、一瞬話しが掴めなくて声が出ちまった。
…ジェットコースター走行中に首切断?
え?なんで??怖くね??
しかも事故じゃなくて事件っつったよな?
首切断の事件???
えっ、てか、テーマパークってもしかして…。


「あおいちゃん、この事件てもしかして、」
「…うん、トロピカルランドだよ」


これかっ!!
新一くんが解決したんだ、って、この子もしかしてもしかしなくても切断された首見ちまったとかか!?
うわぁ、それなら納得いく…。


「あおいちゃん、こっちおいで」
「うん?」


飲み物を用意してソファに座ろうとしたあおいちゃんを横抱きになるような格好で抱き寄せた。
首切断された遺体かー…。
俺も見たくねーわ、それは…。
てゆーか、事件巻き込まれすぎだろ。
どんな確率で事件に遭遇してんだよ!
間違いなく、工藤新一が死神なんだって。
アイツの近くにいるから事件(しかも殺人事件)に巻き込まれんだって!
なんて思ってても弱ってるあおいちゃんにそんなこと言えるわけもなく。


「快斗くん寒くない?」
「あおいちゃんがこうしてくれるから寒くねーよ」


全く違うことを話していた。
あおいちゃんは俺の言葉を聞いて、俺の身体に頬をすり寄せてきた。


「快斗くんはさ、」
「うん?」
「…自分がした選択で、誰かの運命が決まってしまったら、その選択は正しかったって言い切れる?」


俺にぴたり、とくっつきながらあおいちゃんは唐突に聞いてきた。
…「俺」に対して運命どーのって言ってくるのは初めてだ(発熱した時は除いてな)
その「運命」が何を指しているのか、今の会話からはわからないけど。


「例えばさ、」
「うん?」
「俺はあおいちゃんが好きなわけ。信用も信頼もしてる」
「うん」
「だからもし、あおいちゃんが選択したことで俺の運命が決まったとしても、俺はそれを受け入れるし、あおいちゃんが考えて選択したならそれは正しいって言えるよ」


少し身体を起こして、俺の目を見て話しを聞いていたあおいちゃんの黒曜石の瞳は少し、揺れた気がした。


「けどまー、俺としては決断下す前に一旦話しは聞きてぇけどな?」
「…でも話せないこともあるよね?」
「んー…、でもだからこそ、話してほしいけどな。話せないような内容を、1人で抱えてたってことだろ?ならやっぱり、決断下す前に、…例え全部じゃなかったとしても、話しは聞きてぇと思うよ」
「…でも…」
「それに、1人より2人で知恵出し合えば、案外違う解決策も出るかもだしな!」


そう言った俺に、あおいちゃんはどこか複雑そうな顔をした。

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bkm

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