キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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時は満ちて


そして時は満ちる


「それでは、行ってらっしゃーい!」


お姉さんの声に見送られ、ジェットコースターは動き出す。


「き、やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ジェットコースターが動き出した瞬間から、目を瞑ってる。
だってこれはもう目を瞑る1択でしょ!?
原作史上なかなか類を見ないグロい殺され方なんだよ!?!?


「きゃーーーー!!」
「ど、どうして岸田くんが…!」
「ひどいわ…」


速度を落としたジェットコースターでは、何が起こったのかはっきりとわかって。
周りの声に反応してうっかり見ないように、必死に目を瞑っていた。


「オメー、そのまま目開けるんじゃねぇぞ!」


隣の新一くんの声に、ぶんぶんと首を縦に振って答えた。
ジェットコースターから降りる時も、見ないようにって、新一くんが着てたジャケットを私の頭に被せてきた。


「いいか?良いって言うまでオメーは絶対こっち見んなよ?」
「わ、わかった…!」


新一くんは警察が来るまでの間、いろいろと現場を調べ初めていた。
…人の首吹っ飛んでるのに、なんで平気で推理なんかできるの!
あの人のメンタルどうなってるのっ!?
そうこうしているうちに、警察が到着。
遺体には無事ブルーシートがかけられ、私もようやくジャケットから頭を出せた。


「おい、早くしてくれ。俺たちは探偵ごっこにつきあう気はないんだぜ?」


…遺体だけじゃなく、目合わせちゃいけないのがここにもいたんだった!!
もうヤダ。
早く立ち去りたい。
こんな殺伐としたとこヤダ。
快斗くんに会いたい。


「よーし、その女性を容疑者として連行しろ!」
「待ってください警部!犯人はその人じゃありません!」


新一くんが閃いたようで、事件は終わりに差し掛かる。


「でたらめよ!何を証拠にっ!!」
「ネックレスはどうしました?乗る前につけていた、真珠のネックレスですよ」


お姉さんがわかりやすくネックレスつけてたから、私もすぐにわかったけど、これ今後うっかり事件に遭遇した時に犯人わからなかったらどうしよ…。
巻き込まれてザクッ!とか…。
見られたならグサッ!とか…。
え、無理っ!
死ぬなら快斗くんにぎゅってされて死にたい。
快斗くんいないところでうっかり巻き込まれた事件であっけなく殺されるとか絶対死んでも死にきれないじゃんかっ!!!


「もう泣くなって…」
「だって殺されたくないもんっ!」
「事件解決したし、殺されねーだろ…」


今日帰ったら絶対電話しよう。
快斗くんに会いたいって言おう。


「ごめんあおい!みんなと先に帰っててくれ!」
「しっ、新一くん、気をつけて!」
「おぅ!オメーもな!」


私が快斗くんを恋しがってたら、新一くんが駆け出した。
…それはきっと、江戸川コナンになるということで。
なら今、私ができる事って言えば…。


「あおいおっそーい!って、新一くんは?」
「それが事件見つけたから先帰ってって言ってたよ」
「はぁ!?新一ってば何考えてるのよ!」
「まーまー、雨降りそうだし、先帰れって言うなら帰ろーぜー」
「そーそー。行こーぜ」


みんなを安全に、米花町まで連れて行くことだ。
運がいいことに雨も少し降り出してきたから、そのままみんなで帰ることになった。
そして米花駅で解散、帰り道が同じ方向の蘭と歩いていた。


「あ、あの、さ、」
「なにー?」
「こんなこと、聞いていいのかわからない、けど、」
「うん?」
「蘭、て、好きなんじゃない、の?新一くんのこと」


江戸川コナンになる、ということは、工藤新一はしばらく姿を消すと言うことで。
今日だって蘭が一緒に周れば良かったのに、流れで私と新一くんがパークを周ったし。
これからのことも考えて、今ここで、蘭の気持ちを聞いておきたかった。


「…そう、見えた?」
「えっ?…う、うん、ちょっと、だけど、」
「そう」


私の言葉に蘭はクスッと笑った。


「あおいにもバレちゃうくらいなのに、アイツは気づかないんだよねー」


あはは、と蘭は笑う。


「私ね、お父さんとお母さんを見てるからか、どんなに相手のことを口悪く言っても、側にいなくてもずっと思ってくれる人を好きになるって思ってたんだ」


蘭はぽつりぽつりと語る。


「でもさー、それって『私を好きになってくれること』が前提でしょ?…だから、気づくの遅くなっちゃったんだよね」
「蘭…」
「アイツと出逢って10年かかったんだ」
「え?」
「好き、っていう自分の気持ちに気づくの」


ふわっと蘭は綺麗な顔で笑う。


「だからきっと、…新一が私を好きになってくれるなら、それも10年くらい、かかると思う」
「そ!んなこと、ないでしょ、」
「あるよ。…新一には好きな子が…、ううん、『特別な女の子』がもう、いるから」


蘭は悲しんでるわけでもなく、穏やかな顔で笑っている。


「最も?その子に振り向いてもらうってのは絶望的なんだけどねー。…でもきっと新一は、その子が本当に、心から幸せだ、ってならない限り、きっと他の子は見ないと思うよ」
「…そ、んなこと、」
「だから気長に待ってあげることにしたの!どーせ、気づいたら新一、1人ぼっちでなーんにも出来なくて慌てそうだしね!」


それまで私に向き直ってた蘭は、クルッと回って家の方に歩き出した。


「蘭は、それでいいの?」


そう聞くと蘭は、


「今は告白すらさせてもらえないから、仕方ないんだよ」


困ったように笑った。


「告白すらさせてもらえないってなに!?」
「俺には特別な奴がー、とか、なんとか?聞いてもないのに、先に言われたら出来ないでしょ」


もうちょっと新一にもデリカシーほしいよねー、なんて蘭は言う。
蘭は、待つと言う選択をした。
例え遠回りになっても、それが自分にとっての最善だから…。


「あ、あー、そう言えば!これ新一くんの預かってたんだけど、蘭もしかして時間あったりする?」
「え?ジャケット?」
「そうなの、返し忘れちゃってさー!でもほら、快斗くんが心配してるからそろそろ連絡入れなきゃで、」
「あー、なるほど。いいよ、新一の家に届けておくよ」
「ありがと!」


新一くんから預かっていたジャケットを蘭に渡しマンションに向かった。
…これで蘭が、今日、江戸川コナンに会う、はずだ。
大きく1つ、息を吐いて、家の扉を開けた。

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bkm

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