キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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時は満ちて


最善の道


「クラスメイトとトロピカルランド?」
「そう、園子の提案で」


バレンタイン騒動も無事終わったある日。
園子の、最近暇よねーパーッと遊びたいわ、って発言から、新一くんが、あ、そーいや蘭トロピカルランド行きてーとか言ってたよな?って言って、そーだよ新一連れてってくれるって言ったのにまだ連れてってくれないじゃん!て蘭が愚痴ったから、どーせならみんなで行こうぜ!って中道くんが乗っかって、いやそれはちょっと、って言った私に、工藤の奢りだぜ!って被せてきた相沢くんの言葉でみんなでトロピカルランドに行くことになった(ちなみに新一くんはオメーらふざけんな、ってキレた)


「それメンバーは?」


だからやっぱり前もって快斗くんには伝えておこう、って言ったら、案の定メンバーを気にされた…。


「私と、園子と、蘭と…」
「蘭ちゃんと?」
「…新一くんと中道くんと相沢くんです」
「…………」


その言葉を伝えると、快斗くんは無になった。
ブスッとする、とか、イラッとする、とかじゃなく、無になった表情をした。
………それはどういう気持ち?


「うん、まぁ…、みんなと行くなら」
「…えっ?行っていいの?」
「行きたいんでしょ?」
「え、う、うん。そりゃあ、うん」
「但し、工藤新一とじゃなくて、蘭ちゃんと帰って来いよ?」


快斗くんは今度はちょっと拗ねた顔でそう言った。


「帰り道的に、蘭と新一くんと帰ってくると思うよ」
「蘭ちゃんと帰って来て」
「えっ、い、いや、帰り道的に」
「蘭ちゃんと帰って来て」
「………わかった、蘭と帰って来る」


米花駅からみんなで行ってみんなで帰って来るのに、新一くんだけ駅に捨ててくるとか出来るかわからないけど、とりあえず蘭と帰って来よう、うん。
私の言葉に快斗くんは満足したのか、


「トロピカルランドかー、俺たちも今度行こうぜ?」


あおいちゃん絶叫系好きそー!って快斗くんは言う。
そう言われると、快斗くんとテーマパーク行ったことないなぁ、って。
せっかくバイクの免許も取ったのに(私も取れた!)勿体ないなー、なんて思った。
そして3月に入ってからの3度目の土曜日。


「さぁ、今日は遊ぶわよー!!!」
「「「おー!!!」」」


園子の号令に答えたのは、私と中道くんと相沢くん。
蘭はニコニコと笑ってるけど、新一くんに至っては、


「くあぁぁ…ねみっ…」


ものすごい大あくびしていた。
…少しはデリカシーを学んでほしい。
そうこうしながら、みんなできゃっきゃっパーク内を回っていたんだけど。


「ショー見に行こうって!」
「えー、ジェットコースターだよー」
「じゃあ、ここらで一旦、解散しとく?」


ショーを見たい園子と蘭。
ジェットコースターに乗りたい私。
そしてフリーフォールに乗りたい相沢くんで意見が分かれた。


「んじゃあ、俺がコイツにつきあうから、園子と蘭でショーに行って、中道は相沢につきあってやってくれ」
「おぅ、いいぜー!俺もフリーフォール好きだし!」
「はいはい、なら時間勿体ないから、新一くんの提案通り、一旦分かれてー…そうね、2時間後に集合でどう?」
「オッケー!じゃあ後でなー」


あっ!という間に次の行動が決まってしまって、2人ずつに分かれることになった。
え、でも蘭は新一くんといたいんじゃないの?って思ってチラッとそっちを見るけど、すでに園子とショーの話で盛り上がっていて。
…わからない。
蘭がわからない、ってなっていた。


「ほら、置いてくぞー」
「あ、うん、行く行く!」


そして新一くんとジェットコースターに乗る列に並んだ。


「な、なんか、新一くんとテーマパークに来るの、久しぶりってほどでもない気がするのなんで?」
「オメーがクロバに泣かされて、可哀想に思った俺が連れてきてやったからだろ!」
「あー!博士のオマケでただで来たからか!」


そうだ、そうだ。
あれもまだ1年くらい前のことだもんね。
…なんだかんだで私、新一くんと出かけてるな…。
今もきっと、快斗くんが知ったらこの状態嫌がるよね…。
え、つまりそれって、快斗くんが中森さんと出かけてるのと同じ状況じゃない!?
えっ!?それダメだよ、ダメだ!


「あおい、どーした?」
「や、やややややっぱり帰る?」
「は?」
「いいいいいや、だってやっぱりそんな新一くんと2人でってやっぱりそんな」
「おい」
「だってそうじゃない!?全然悪いことしてないけど、でもさ、それってどうなのって思うよね思うでしょ私なら思うし!」
「落ち着け!」
「いだぁぁ!?」


私がパニックになりかけたところ、すかさず新一くんが頭をチョップしてきた。


「オメー、今どーせまたクロバがどうとか考えてんだろーけど、来たからには楽しめって前も言っただろ!」


ハッ!と鼻で笑って、新一くんは列を進んで行った。


「楽しめ、って言うけどさぁ、だいたいなんでこんなこと悩んでるか、ちょっとは考えてよ」
「はー?んなこと考えなくてもクロバのせいだろ?」
「ちっ、違うでしょ!なんでもっとちゃんと推理しないの!?」
「こんなことでいちいち推理なんてしてられるかよ!」
「こんなこと!?こんなことって言った!?こんなことじゃないし!全然わかってないじゃん!新一くん、ほんとに探偵!?今までの推理も実は当てずっぽうなんじゃないの!?」
「ばっ、なに言うんだよ!俺の推理は当てずっぽうなんかじゃねぇよ!」
「ほんとかなぁ?」
「ほんとだって!例えば…そうだな、人の手握ればその人がなにやってるか大体わかるぜ?」


この段階で、あれ?って思ったんだ。


「例えばほら、こんな風に」
「え?」
「あなた体操部に入ってますね?」
「ど、どうしてそれを…?」
「ほらな」


…だって今日は、都大会優勝のお祝いじゃないよ?
え、待って待って待って。
このお姉さん、パールのネックレスしてるよ!?
えっ!?だってそれってつまり…。


「し、新一くん、新一くん。やややややっぱり、やめよ?」
「オメーまだんなこと言ってんのかよ?たかがジェットコースター乗るくらいでゴチャゴチャ言う男、ほんとさっさと別れて」
「いやもうそれでいいから!!快斗くんがごちゃごちゃ言うから止めようっ!!」
「だーから、なんでオメーがそこまでアイツに」
「おい」


新一くんを説得しようとしたら、私たちの後ろの方から黒ずくめの2人組の1人が、


「乗らねーならサッサと退きな」
「あ、すみませーん!乗ります乗ります!ほら、行くぞ!」
「あっ、ちょ、」


後ろの男の人に怒られたから、新一くんは私の手首を掴んで前に進む。
…ウォッカとジン!!
嘘だって、今ここにいるの蘭じゃないし、だってそんなあの2人と関わるとかそれって新一くんが大変なことに巻き込まれちゃうってことでしょ!?
だって新一くんがこのまま縮んだら…


「…そう、だ…」


新一くんがここで「縮まなかった」ら、怪盗キッドと江戸川コナンが出逢うことはなくて。
ライバルだけど、手を借りることもあった2人の関係が、生まれない、ってわけで…。
それはつまり、快斗くんにとっても、新一くんにとっても、不利益なことが起こるかもしれなくて…。


「やーっと、次の次だな!」


今ならきっと、止められる。
お腹痛いとかなんだとか言って、ここから抜けることがきっとできる。
…でも…。


「足元に気をつけて、ご乗車ください!」


それがほんとにこれからの未来で良いことなのか、わからない。
だからやっぱり、起こるとわかっている未来を、ただなぞるしか、ないのかもしれない。


「おい!」
「え?」
「…オメー、マジで大丈夫か?止めるか?」


うん、て、一言頷けば、きっと新一くんは乗るのを諦めてくれる。
でもそれがほんとに、いいことなのか、すべきことなのか、わからない。
だって、江戸川コナンになることが、結果として新一くんの、そして快斗くんの力になることなんだから。


「た、例えば、さ、」
「うん?」
「な、何かを、選ばなきゃいけない時に、ほんとにそれが正しい道なのかわからない時、新一くんならどうする?」


なんでそんなこと、本人に聞くんだろ、って。
でも新一くんだから…。
探偵・工藤新一だから、きっと答えを出してくれる、って、そう思ってしまったんだと思う。


「オメーに、いい事教えてやるよ」


ニヤリと笑い、新一くんは言う。


「人ってーのは、その時々で常に自分にとって最善の道しか選べないように出来てんだよ」
「最善の道?」
「結果的にそれが遠回りになったとしても、それは自分にとっては必要な出来事で、常に、その時に経験すべき出来事を体験できるような選択しか出来ないようにできてんだぜ?」
「経験すべき出来事…」
「そー思えば、迷わず選べるだろ?」


例え、遠回りになったとしても。
きっとこれから新一くんは、ほんとうにいろいろなことを経験する。
…それはきっと、未来の探偵・工藤新一には必要なことだ。
そして江戸川コナンだからこそ出逢えた人たちがいる。
その人たちがきっと、コナンくん、そしてこれからの新一くんの助けになる。
…そして、江戸川コナンだからこそ、快斗くんの力にも、なってくれる。


「うん。乗ろう」
「は?オメー、乗るか乗らないかで迷ってたのかよ!」


今がきっと、運命の分かれ目。
だけどその運命はきっと、悪いことばかりじゃない。
きっとこれが、今の私が取れる最善の道。
そして、辿るべき運命と共に、ジェットコースターが動き出す。

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