キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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秘密


ごめんね


「ゲホッ、ゴホッ…」


警視庁からの帰り、1月の冷たい雨に降られた私。
途中新一くんがうちで風呂入ってけって言ったけど、さすがにどうかと思うし早く1人になりたかった私はそのままマンションへ向かった。
…の、だけど。
元々足が遅い+走る元気もなかった私は、家に着く頃にはすっかり濡れていて。
そこからお風呂に入っても時既に遅く、翌日を待たずに寒気に襲われ、現在絶賛咳が止まらずにいる。
寒気、は、だいぶ治まったけど、身体が熱い。
これきっと熱出てる。
今日会う約束してた快斗くんには、昨日の段階で体調悪いからとお断りの連絡をしていた。
だから今日は、1日寝てればいいだけだ。
…昨日聞いたことは、寝て忘れるんだ。
…………………
………………
……………
…………
………
……



ー警部にも高校生のお嬢さんがいるんだけどね。よく現場にお弁当とか持ってきてくれるんだけど、いつも一緒についてくる幼馴染の男の子と同じような会話よくしてるよなー、って思ってー


止めて


ーいっつも彼氏連れで、若い刑事とか本気でがっかりしてる奴もいるくらいだよー


止めて止めて


ー傍から見ても彼とお似合いだし、下手に僕ら同僚の誰かとどうこうなるより警部は安心だろうけどー


知ってるから、お願いもう止めて!


ーあおいちゃん?ー


かい、と、くん


ー苦しい?大丈夫?ー


快斗くん、


ー病院行ける?連れてくからー


快斗くん、どこにも行かないで


ー俺はここにいるよ。だから泣かないでー


あと1年だけだから、お願い側にいて


ー…なんで後1年?ー


そうしたら、ちゃんと中森さんに返すから


ー中森、って、青子のことか?何、どういうこと?ー


あと1年で、元に戻るから


ー…それって運命どーのの話?ー


うん
1年後には、ぜんぶ、忘れるから


ー忘れるって何で?ー


そうなる運命だから


ーだからその運命って何のこと?俺は離れる気もねーし、まして忘れるなんてー


かいとくん、邪魔して、ごめんね


ー邪魔、ってあおいちゃんはー


でも私、キッドに会えて、ほんとに嬉しかった


ー…え…ー


私、ここに来たいって言ったの、間違えだったね


ーなんでそんなこと言うのー


ごめん、本当に、ごめんね


ーだからあおいちゃんは俺にとっていてくれなきゃ困る存在で、ってあおいちゃん?あおいちゃん!ー


快斗くんの声が聞こえる。
夢なのか現実なのか、快斗くんがすごく慌ててる声だ。
…快斗くんがこんなに慌てることなんてないから、きっと夢かな。
快斗くんに会いたくて、会いたくて、…申し訳なさすぎて…。
快斗くんは優しいから、そんな思いを抱えてる私の夢に、出てきてくれたのかな。
たぶん、きっとそう。
あぁ、本当に私、快斗くんに悪いことしてる。

……
………
…………
……………
………………


「…っ…」


どのくらい寝てたのかわからないけど。
気がついたら全然知らない天井の部屋で寝ていた。
動ける範囲で首を動かしたら、腕に点滴をされていてここが病院だってことに気がついた。
そして点滴をしていない方の手を見ると、


「…」


快斗くんが私の手を握りしめたまま、ベッドサイドのイスに俯くように座ってた。


「あおいちゃん!気がついた!?」


少し身動ぎした私に、快斗くんも気がついた。


「大丈夫?わかる?」
「なん、で?」
「…来なくていいって言われたけど、やっぱりあおいちゃんが心配で来たら、玄関鍵かかってなくてさ。そのまま上がらせてもらったんだよ。そしたらすっげー熱でゼェゼェ言って意識ねーからビビッて救急車呼んだの!」


私昨日、チェーン掛けたかは覚えてないけど、鍵はかけた、と、思うけど?
…あれ?掛けなかった、っけ…?


「肺炎になりかけって言われたぜ?ったく、あおいちゃんひとり暮らしなんだから、すぐ呼んでくれよ。そのままぶっ倒れてたら、最悪のことだってあり得たんだからな」
「…ご、めん…?」
「あ、いや、謝ってほしいわけじゃ、」


そこまで言って快斗くんは押し黙った。


「快斗くん?」
「俺は謝ってほしいんじゃなくて、あおいちゃんに元気でいてほしーの。わかる?」


真っ直ぐ私を見て言う快斗くん。


「あおいちゃんに、いつも笑っててほしい。そのために出来ることなら俺なんでもするから」


私のほっぺに触る快斗くんの手は、いつもよりも少し、ひんやりしていた。


「だからいつでも俺を呼んで。すぐ来るし、…俺はずっと、あおいちゃんの側にいる」


快斗くんの手は、細くて綺麗で、正直に言うと、私の女性としての手よりも綺麗なんじゃない!?ってちょっぴり嫉妬するレベルだ。
その綺麗で優しい手が、私に触れてくる瞬間がすごく好き。


「ありがとう、快斗くん」


私の言葉に、快斗くんは柔らかく笑った。

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bkm

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