キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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秘密


「彼氏」


快斗くんは言った。
私の全部の時間を、自分だけが知ってたい、って。
それはきっと、世間で言う束縛ってこと、に、近い、と、思う。
そんなこと快斗くんが考えていたなんて、思いもしなかった。
なんて言うか…快斗くんはいつもにこにこしてて、爽やかで、優しくて。
だからそんな風に思ってたなんて、考えもしなかった。
だってそれはまるで、中森さんから逃げ出した自信のない私のようで、快斗くんが私みたいにそんなことで悩んでるなんて考えられなかったし、話しを聞いた今ですら、やっぱりちょっと、考えられずにいる。
クリスマスの時にも思ったけど、恋愛のマニュアルなんて当てにならないし、正解なんてないんだなって思った。


「君が芳賀さんか?」
「は、はい!芳賀あおいです!」
「…隣の、どっかで見たことあるような顔をしてるお前は誰だ?」
「嫌だな、中森警部。以前庁内で会った高校生探偵の工藤ですよ」


そんなこと考えてたら、あっという間に警視庁に呼ばれた日になり、新一くんと2人で中森警部に会いに行った。


「探偵ぃ?そんな奴がなんでここにいる?」
「コイツと同級生なんで、今日は付き添いです」


中森警部は新一くんが(というか探偵が)嫌いなのかな?ってくらい胡散臭そうに新一くんを見た。


「まぁ邪魔しないならなんでもいい。少し騒がしいがこっちに」


そう言って二課の隅の方にある来客用か何かのソファの席に通された。
村井警部補がお茶を出してくれたから、頭を下げたところで、


「それで早速聞きたいんだが、まずキッドはあの場所で何をしていたんだ?」


中森警部が本題に入った(村井警部補も同席して、4人で話し合う形になった)
私の知ってること、気づいたこととかをいろいろ聞かれたけど、結局寝てて目覚めたら空の上だったし、そこからすぐに交番付近に届けられたから、警部にとっては大した役には立たなかったと思う。
最も中森警部の役に立つってことは、キッドにとってはよろしくないことなわけで、警部には申し訳ないけどちょうど良かったんじゃないか、って思う。
そして一通り話しが終わり、村井警部補が玄関ホールまで送ってくれることになった(中森警部とは二課で解散)


「今日はありがとう!助かったよ」
「い、いえ!あ、あんまり良いこと言ってない気もするんです、が、」
「ははっ!確かに『良いこと』は言ってないけど、僕らは少しでも奴の情報がほしいからね。工藤くんも、わざわざありがとう」
「いえいえ。コイツだけじゃ絶対道に迷うんで!」


そう言って新一くんは私の頭をコツンと叩いた。


「ねぇ、もしかして2人って恋人同士だったりするの?」
「えっ」
「違います、全然違います、私の彼氏もっとカッコいいです」


村井警部補の言葉を即座に否定した。
新一くんは予想外のことを言われて驚いたのか、咄嗟に答えられず、即座に否定した私をジロッと見てきた。


「なに」
「何じゃねーよ、何じゃ!あのなー、いつも言ってんだろ?あんな奴のどこがカッコいいんだよ!」
「はっ!?どこが!?全てだよ全て!わかる?いるだけで人を癒やしてくれるようなあの存在がもう」
「オメー、変な薬飲まされたから頭ヤラレちまったんじゃねーか?いや、元々まともか?って聞かれたらそーでもねーから薬のせいじゃねーか…」
「ちょっと!人をバカみたいに言うけど」
「みたい、じゃなくて、バカなんだよオメーは!」
「ひっ、酷いっ…!!」
「はははっ!」


私と新一くんが話してたら、村井警部補が笑いだした。
その声に私と新一くん、同時に村井警部補を見た。


「あぁ、ごめんごめん。…今の高校生カップルはほんとに仲良いなー、って思っちゃって」
「だっ、だからカップルなんかじゃ」
「警部にも高校生のお嬢さんがいるんだけどね。よく現場にお弁当とか持ってきてくれるんだけど、いつも一緒についてくる幼馴染の男の子と同じような会話よくしてるよなー、って思って」


微笑ましいよ、と村井警部補は言う。
…中森警部のお嬢さんて言うのは、中森青子さんのことで。
その幼馴染の男の子が誰か、なんて…、1人しかいないわけで。
その男の子が「いつも一緒に」現場に現れるって。


「警部にそんな大きいお子さんいらっしゃったんですね」
「そうそう。きっと会ったら驚くよ。警部に全っ然似てなくて可愛いし愛想良いし、すごくしっかりした子なんだから」


現場の人間に人気なんだよね、と村井警部補は言う。


「でもいっつも彼氏連れで、若い刑事とか本気でがっかりしてる奴もいるくらいだよ」
「へー。ほんとに人気あるんですね、警部のお嬢さん!」
「そうだね。でも傍から見ても彼とお似合いだし、下手に僕ら同僚の誰かとどうこうなるより警部は安心だろうけど」


村井警部補はおかしそうに笑いながら話す。
…この人から「彼氏」と思われるような雰囲気で、その男の子は中森さんと現場に現れるんだ。
周りから見て「お似合い」って思われるような存在なんだ。


「じゃあ気をつけて」
「はい、失礼します!」


村井警部補に頭を下げて警視庁を出た。


「あおい」
「うん?」
「オメー、どうかしたか?」
「え?」
「なんか…さっきと比べて顔色悪ぃからさ」


新一くんが私の顔を覗き込んでそう聞いてきた。


「う、ううん。なんか疲れちゃったから、早く帰りたいな、って」
「おー、そうだな。雨も降って来そうだし、早く帰ろうぜ」


そう言って新一くんと2人、家路に着いた。

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