キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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財閥令嬢誘拐事件


魔法使いの新魔法


from: あおいちゃん
sub:大変だったの!
本文:園子を狙った誘拐事件に巻き込まれて、怪盗キッドに助けられたんだけど、交番に迎えに来てくれた刑事さんが検査しなきゃダメって言ってパトカーで病院直行して検査してました。問題なしだったから帰ろうと思ったら園子の家の執事さん?が迎えに来てて、今園子の家にいます


帰宅後いつまで待ってもあおいちゃんから連絡が来ねーからどーしたのかと思ってたら、いろいろツッコミどころ満載なメールが着た。
出だしからしておかしいだろ…。
いや、俺が助けたんだから事情知ってっからいいけど、それでもこの説明おかしくねーか?
まぁ… あおいちゃんだから…で終わってしまうのがこの子のすげーところだ。
とりあえず今は園子ちゃんちにいる、ってことか…。
ならもう本当に心配はないだろう。
そう思って、詳しく聞けるかと連絡取ったけどまた繋がらず…。
まぁ時間も時間だし、疲れてるだろうからおやすみ、とメールした。
あの子の危機管理のなさはどーしたもんか。
GPSだけじゃ足りねーか?
そもそもそのGPSもそれ目的で入れたわけじゃねーんだけど。
どーすっかなー、と、ケータイを見ていた時あおいちゃんからの着信画面になった。
あ!と思った瞬間、すでに通話ボタンを押していた。


「あおいちゃん大丈夫!?何あのメール」
「え、あ、うん、大丈夫、だけど寝てなかった?」
「気になって寝てない」
「そっか…ごめんね」
「それで園子ちゃんを誘拐って?」
「あ、うん、実は、」


あおいちゃんはそこから今日起こったことをわりと詳細に話してきた。
例の知らねー野郎からの紙パックジュースもらって飲んだってところも入れて。


「じゃあ今体調は?」
「それはもう大丈夫だよ」
「なら良かった」


あんな杜撰な計画立てる奴らが、まともに薬知識があるとは思えない。
適当にミックスしてとんでもない毒薬だった可能性もある。
だから検査もしてもらって、体調も大丈夫と言われて本当にホッとした。
その時あおいちゃんが園子ちゃんがスピーカーにしてくれって言ってるからスピーカーにしていいか聞いてきた。
…俺に用か?


「黒羽くん、ネット見た?」
「え?ネット?」
「あおいが日本のトレンド1位になってんのよ!」
「は?何どういう……はっ!?何だこの写真!?」


園子ちゃんの言葉にネットを開いたら、とんでもねぇ写真がトップニュースにきていた。


怪盗キッドの仲間か!?謎の女性と空中飛行


撮られる可能性も確かにあったが、まさかこういうネタにされるとは思わなかった。
よりにもよって、俺の仲間扱いかよ…。
しかもコメ欄見る限り特定させようとしてる。
…喧しい民衆を黙らせるのはいつの時代も金と権力だよな。


「提案があるんだけど」


俺の提案に園子ちゃんが乗っかって、鈴木会長を説得してくれる流れになった。
今現在、あおいちゃんを家に呼んでくれてる段階で会長もこの提案を飲む可能性が高い。
…娘の代わりに変な薬飲んだんだ。
それくらいしなきゃ対価が見合わねーしな。
俺の言葉に早速動こうとしてるのか、園子ちゃんがスピーカーから離れていこうとしてるのがわかった。
ところで、


「怪盗キッド、知ってるのよね?」


去り際声をかけられた。


「今全世界の女性が憧れて止まない月下の奇術師怪盗キッド!そんな人にあおいは助けられたんだけど、」
「…何?」
「あんたの方がカッコいいってさ」
「へっ?」
「ちょっ!」
「んじゃあ、私パパたち叩き起してこれ以上ヤバいことになる前に手打ってもらってくるから、おやすみー!」


そう言って園子ちゃんは去っていった。
…あの女、俺と会話したがったのはコレか。
あおいちゃんからの詳細を聞いて、不用心なあおいちゃんを俺が怒ると思ったんだろう(その通りだけどな)
そうならないように先に手打ってきやがった…。
今現在、世間を騒がせる怪盗キッドよりも俺の方がカッコいいなんて友人にまで言う子、世界広しと言えどあおいちゃんくらいだ。
キッドも俺ではあるけど、それでも俺自身に対してそんなこと言われたら嬉しくないわけがなく、怒るに怒れなくなったのは事実なわけで。
…あの女、過保護な上、案外頭キレんじゃねーか。
じゃあもう今日はお開きだと、帰宅後あおいちゃんに会いに行く旨を伝えて電話を切った。
そして俺も一旦寝ることにしたのが明け方4時頃。
目が覚めたのは昼頃。
テレビをつけたら鈴木財閥の会長夫人の記者会見の模様が放送されていた。


「以後娘の大切な友人のこの少女の詳細を調べることは鈴木グループを敵に回すものと思いなさい」
「おっかねーオバサン!」


でもまぁ、これでよほどの馬鹿でもない限り特定しようって流れにはなんねーな。
あおいちゃん経由で後で園子ちゃんに礼言ってもらおう。
そして暫く後であおいちゃんから帰るメールが着たのを確認後、バイクで米花町に向かった。


「あおいちゃーーん!ほんとにケガとかしてない!?」


少し寝不足な感じの顔をしていたけど、元気そうで何よりだ。
そしていろいろ話し始めた時、


「でも一瞬怖かったことあった!」


あおいちゃんが徐にに言った。


「キッドが助けてくれたって言ったじゃん?でも目が覚めたらキッドのハンググライダーに抱きかかえられてる状態だから、さすがに一瞬怖かった!」


助けてやってそれはちょっと酷くね?
いや、俺が助けたっての知らねーから言ってんだけど。
でもまぁ、意識飛ばしてる最中にハンググライダー乗せられてたら確かにビビるか…。
そしてあおいちゃんはこっちの方がいい、と言って、正面座位の姿勢で話しをすることになった。
… あおいちゃん実はこの体位好きなのか?
まだ試したことねーけど、試してみるのもアリだな。


「それと知らねー奴から貰ったの安易に口に入れんなよ?」


そんなこと思いながら、キッドの姿の時も言ったことをもう一度伝えたら、俺が怒ってるのか聞いてきたあおいちゃん。


「怒ったんじゃなくて心配してんの!たまたまキッドに助けられたから良かったようなものの、少しでも遅かったら取り返しのつかないことになってたかも知れないんだぜ?だからもっと危機管理ってのを」
「そっ、それなんだけどさー」


説教してる最中の俺の言葉をぶった切って、


「なんでキッド、あそこにいたと思う?」


めちゃくちゃ答えにくいこと聞いてきやがった。


「なんで、ってそりゃあ、犯行現場の近くとか?」
「でも佐藤刑事は付近にそんな予告状出てないって言ってたんだよね」
「いやほら、それはアレだろ。現場の下見」
「あー!なるほど!」


スッキリ!みたいに言うあおいちゃん。
これは話し逸らされたなと思った俺はもう一度さっきの話しに戻した。


「とにかく!あおいちゃんはもっと人を疑うこと!みんながみんな良い奴なわけじゃねーんだから。わかった?もっと日頃から周りを警戒しねーと…何?」


そしたら正面座位で俺の肩に両腕を乗せたポージングでジーーーッと見つめてきたあおいちゃんは、


「怒っちゃやだ」


少し顔を赤くさせながら、口を尖らせそう言った。


「お、こっては、ねー、けど、」
「やだ」


…どこのどいつだ?
俺の素直で可愛い彼女にあざとさなんつー過激な新技を教えちまった奴はっ!?
園子ちゃんか?
園子ちゃんなのか?
チクショーあの女!それ大成功だぞっ!?


「オーケー。これからはあおいちゃんはもっと周りを疑うようにする。で、俺はこの話しをもう止める。それでい?」
「うん!」


そう言って嬉しそうに笑ってあおいちゃんは俺の首に腕を回し抱きついてきた。
…嘘だろ、この子おっそろしい新魔法・あざと可愛いを自在に操るようになったのか?
どーすんだ、これ?
こんなんされたら俺もうハイかイエスしか言えなくなるじゃねーか!
…怖い。
俺の彼女、この魔法使ってさらにいろんな野郎誘惑しちまいそうでマジで怖い。
工藤新一みたいな邪魔な奴がさらに増えたらマジで困るんだけど。
え、これもうどっかに隠しちゃ駄目なの?
俺以外と会えなくさせちゃ駄目なの?
GPSとかつけるよりもそっちの方がよくね?
なんてことを考えているなんて知らないあおいちゃんは、


「快斗くんの匂い好き」


ふふっと、くすぐったそうに笑っていた。

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bkm

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