キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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財閥令嬢誘拐事件


世界可愛さランキング


鈴木財閥会長宅のそれはそれは素晴らしいゲストルームを使わせてもらった私は、誘拐事件の疲れも出たのかあの後爆睡してしまい、目が覚めたらお昼になっていた。
ものだから、


「えっ!?おばさんが会見したの!?」


寝る前に快斗くんが出した提案は受理され、すっかり騒動が終わっていた。


「そそ。パパがやるって言ってたんだけど、ママがあなたじゃ迫力がないからダメって言ってさ」


確かに、なんて思ったってバレたらきっと園子ママから睨まれると思う。


「この場をもって、以後娘の大切な友人のこの少女の詳細を調べることは鈴木グループを敵に回すものと思いなさいって言ったのよ」
「さすが会長夫人、言うことがカッコいい!!」


鈴木グループを敵に回すってことがどういうことなのか、ほんとのところはわからないけど、でもきっといろいろ生きにくくなるとは思う。


「パパもママも、あんたにすごい感謝してるから」
「え?」
「まーあ?あおいはそんなこと考えてたわけじゃあないでしょうけど?…あんたが先に薬の入ったジュースを飲んだから、私がそれ飲まずに済んで、車乗せられた後で直接犯人に交渉できたのよ。私のケータイからパパに直接言えってね」


園子はニヤリと笑った。


「私のケータイ、こういう時のために、ちょっといろいろつけられてんのよねー。だからあっという間に犯人割り出せて確保できたわけ」
「…す、ごいね、園子のケータイ…」
「んー…でも途中で意識ないあんたとバラバラにされちゃったから、それが心配だったんどけど」


キッド様々よね、と園子は言う。
私の寝ている間にいろんなことが起こっていてなんかもう驚きしかない。


「それと」
「うん?」
「あおいが変な薬を自分から飲んだとか言ったから黒羽くん、あんたに怒るでしょ」


園子が困った顔しながら言ってきた。


「あおいってば、馬鹿正直に全部黒羽くんに話すんだもん。一応、フォロー入れてやったけど、あの後電話で怒られなかった?」
「あっ!!」
「え?」
「快斗くんが『園子ちゃんて案外頭キレる』って言ってたよ!それのこと!?」
「…あんニャロめ…『案外』は余計だってのよ!」


ぐぬぬ、と園子は唸った。
…園子って普段ぜんっぜんそんな感じしないけど、今ほんのり快斗くんや新一くん臭がした(無駄に先々のいろんなこと考えちゃう人臭)


「でもだから?快斗くん、園子の家から帰ったらうち来るから連絡ちょうだいって」
「説教じゃなくて?」
「う、ううん、違う、たぶん。大変だったから癒やすって言ってた、し、」
「効果あったわね!」


ニヤッと園子が笑う。
もしかして私の周り、すごい頭良い人と、わりと頭良い人と、どちらかと言うと頭良い人で固められてて、完全に頭ちょっとアレなの私だけなのかもしれない…。
そんなこと思っていたら園子が気を使って早く帰宅出来るよういろいろ動いてくれた(主におじさんおばさんに伝えてくれた)


「もっとゆっくりして行っていいのよ?」
「そうですよ、あおいさん。昨夜も遅かったんだし、何ならもう1泊、」
「だ!大丈夫です!また遊びに来させてもらうんで…!」


おばさんが夕飯はケータリングにしようかって話しを出した時はちょっとグラッと揺れた(だって!鈴木財閥が頼むケータリング!!)
でも、いやいや快斗くんが待ってると我にかえれた私は(我にかえるじゃなく、気持ち的にかえれた)マンションまで送ってもらって無事帰宅した。
そしてそこから1時間もしないうちに、


「あおいちゃーーん!ほんとにケガとかしてない!?」


快斗くんがやってきた。
玄関開けた瞬間に飛びついて来た快斗くんは、冬の空気に包まれていたからちょっぴり冷たかった。


「大丈夫?怖くなかった?」


ソファに座った快斗くんは、膝の上に私を横抱きに抱えてガッチリホールドを決め込んだ。
…ちょっと姿勢的に微妙だな、これ。


「怖いとか思う間もなく、寝てる間に事件が起こって終わってた?」
「あおいちゃんらしーな」


快斗くんが困ったように笑っていた。


「あ!でも一瞬怖かったことあった!」
「うん?」
「キッドが助けてくれたって言ったじゃん?でも目が覚めたらキッドのハンググライダーに抱きかかえられてる状態だから、さすがに一瞬怖かった!」
「……そう」


でも生まれて初めて乗ったハンググライダーからの景色はすごく綺麗だった(風が冷たかったけど!)


「俺は心配だよ」


快斗くんのガッチリホールドの体制が地味に辛かった私は、快斗くんと向き合って抱きつく形で座り直させてもらった。


「なにが?」
「あおいちゃん、事件に巻き込まれやすくねーか?」


快斗くんはそう言うけど、そこはもう米花町在住オプションて思うしかない。


「気、気をつけるね」


でもそんなこと言えるわけないからそう言って丸く収めることにした。


「それと」
「うん?」
「知らねー奴から貰ったの安易に口に入れんなよ?」


向き合って快斗くんの首に抱きついている私と、その私の背中に手を回してる快斗くん。
…その快斗くんの手から、圧を感じる。


「きっ、気をつけ、ます…」
「はぁ…」


私の言葉に快斗くんがため息を吐いた。


「お、怒った…?」
「…怒ったんじゃなくて心配してんの!たまたまキッドに助けられたから良かったようなものの、少しでも遅かったら取り返しのつかないことになってたかも知れないんだぜ?だからもっと危機管理ってのを」
「そっ、それなんだけどさー」
「え?」
「なんでキッド、あそこにいたと思う?」
「…えっ!?」


快斗くんの話しをぶった切って、抱きついた腕を少し緩めて、快斗くんを見た。


「なんで、ってそりゃあ、犯行現場の近くとか?」
「でも佐藤刑事は付近にそんな予告状出てないって言ってたんだよね」
「いやほら、それはアレだろ。現場の下見」
「あー!なるほど!」


そっか、たまたま次の犯行現場の下見に来てたから助けてもらえたんだ…!


「とにかく!あおいちゃんはもっと人を疑うこと!みんながみんな良い奴なわけじゃねーんだから。わかった?もっと日頃から周りを警戒しねーと…何?」


またお小言が始まった快斗くんをジーッと見ていたら、快斗くんがその視線に気づいたようだった。
ちょっとだけムスッてしてた顔のまま、私の方を向いた。


「怒っちゃやだ」
「………お、こっては、ねー、けど、」
「やだ」
「………」


ジーッと快斗くんを見ながらそう言ったら、快斗くんは片眉をあげて複雑そうな顔をした。
そして大きく1つため息を吐いて、


「オーケー。これからはあおいちゃんはもっと周りを疑うようにする。で、俺はこの話しをもう止める。それでい?」
「うん!」


妥協点を見つけてくれた快斗くんにもう1度抱きついた。
最近気づいたんだけど、快斗くんはダメなものはダメって言う頑固さん。
だけどそこはなんとか可愛くお願いすればわりとその頑固を曲げるまではいかなくても、やや軟化させられる。
ポイントは「可愛く」お願いするってところ。
快斗くんは女の子に甘い。
快斗くんの中の世界可愛さランキングで私が何位くらいかはわからないけど、私だって「可愛く」お願いすることくらいできる!(参考資料、沖野ヨーコのドラマ全集)
例え可愛さランキングが低かったとしても、うまく可愛くお願いすることに成功したようだから、これ以上怒られないと思って、あぁ良かった良かったと、思う存分快斗くんにくっついていた(そしてさすがヨーコちゃん!て思った!)

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