キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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財閥令嬢誘拐事件


日本のトレンド1位


「それで?キッド様ってどんな感じなの?」


お風呂も終わってさっぱりした私を待っていたのは快斗くんからの連絡、ではなく、キッドファンの園子による尋問だった。
園子熱は?って言ったら下がったから大丈夫、で終わった…。
ちなみに誘拐事件って言っても園子のケータイには万が一の時に備えてGPSがつけられていて、そのケータイから脅迫電話かけたおバカな犯人はびっくりするくらいすぐに捕まったようで、誘拐怖いガタガタみたいなことは一切なく、あおいになんかあったらどーしてくれんのよって怒りのアドレナリンがジュワッとしてしまっていた園子の目はギンギンだ。
かくゆう私も強制的に寝かされた+さっき検査中にうっかり寝てたのが効いて、薬盛られた?そーだっけ?みたいにギンギンとはいかなくも、ギンくらいにはなってる。


「イケてるおじ様だった!?」
「え?」
「え?って、違うの!?」


あぁ、そっか、って。
初代怪盗キッドは18年前にはすでに活躍してた人だから、その人が復活したならそれはやっぱり「おじ様」になるわけで…。


「そ、んな、おじ様じゃないよ」
「マジで!?若いの!?」
「や、わっかんないけど…」
「待って、キッド様について調べてみる!」


快斗くんのこと言えるわけないし、ううーん、と思っていた時、


「え、これっ、て、え、えー!?」


現在夜中の3時、鈴木家本宅に園子の叫び声が響いた。


「ちょっ、これあおいじゃないっ!?」


園子に見せられたケータイ画面に写っていたのは、キッドがハンググライダーで飛んでいる姿。
なんだけど、拡大するとキッドは誰かを抱えながら飛んでいて。
それはどこからどう見ても、数時間前の、意識を失ってる真っ只中の私だった。


「な、なにこれっ!?」
「今日本のトレンド1位よそれ」
「えっ!?」


そのまま園子のケータイで見せてもらうと、多くの人間が使っている某SNSアプリの投稿の1つで


キッドが女抱えて飛んでる!!誰あの女!?#悔しい#場所変われ


そう書かれてるものだった。


「はっしゅたぐ」
「場所変われ、ですって。わかるわー」


ちなみにそのハッシュタグが、現在日本のトレンドNo.1ワードらしかった…。


「えっ、いや私別に」
「キッド様がハンググライダーで飛ぶのはみんな知ってるけど、それを誰か抱えて、ってのはなっかなかないからねー」
「わ、わわわ私そんなだってあれは、」
「これもしかしたら他の写真も出てくるかもねー」


園子が私の手からケータイを取り戻してまたポチポチとしていた。
私も見てみようと、自分のケータイを手に取ったら、お風呂に入ってた間に鬼のように快斗くんから着信とメールが着てた…。
最後のメールが5分前だし、わんちゃん起きてるかもしれない。


「そ、園子、ごめん、快斗くん心配してるみたいだから電話してい?」
「どーぞー。なんならスピーカーにしてよ」


ニシシと笑う園子を横目に快斗くんに電話をかけた(さすがにスピーカーはやめてる)


「あおいちゃん大丈夫!?何あのメール」


快斗くんもしかしてどこかで話し聞いてたんじゃない?って言う驚きの早さで電話に出た(呼び出し音鳴らなかったんじゃレベルの早さ)
途中までは知ってるだろうけどどこを端折ればいいかわからないから結局最初から、今までの経緯を伝えた。


「じゃあ今体調は?」
「それはもう大丈夫だよ」


良かった、とホッした声が響いた。
その時園子がスピーカーにしてくれって言うから、スピーカーにして電話することにした。


「黒羽くん、ネット見た?」
「え?ネット?」
「あおいが日本のトレンド1位になってんのよ!」
「は?何どういう……はっ!?何だこの写真!?」


園子が言ってからネットを開いたらしい快斗くんは、さっきの写真を見つけたようだった。


「見た?その救出されてる子があおいね」
「…見た、っていうか、ヤフーニュースのトップに来てんだけど…」
「マジで!?」


快斗くんの言葉にヤフーを開くと「怪盗キッドの仲間か!?謎の女性と空中飛行」って見出しの記事が飛び込んできた。


「え、ええええええ」


これマズいんじゃないの、私大丈夫なのこれ、大丈夫じゃなくない、どうしたらいいのこれ


「園子ちゃんこれさー、たぶん良くねー流れだ」


私がうぇああってなった時、快斗くんが神妙な声で園子に言ってきた。


「何、嫉妬?」
「そんなんじゃねーよっ!見てみろよ、コメント。この『謎の女』を特定しようとしてんじゃねーか。これ絶対マズいぞ」


快斗くんの言葉に園子とコメント欄を見てみると、誰が真っ先にキッドの仲間を特定するか、煽ったり、囃し立てたりとか、どう見てもよろしくなさそうなコメントばかりだった。


「…うわぁ…」
「提案があるんだけど」


園子ですらどん引きする内容に、快斗くんが口を開いた。


「鈴木財閥から会見でも声明でも何でもいい。正式に今回の誘拐事件について公表してほしい」
「でもそれは、」
「園子ちゃんの名前を出す必要もないけど、これは誘拐事件に巻き込まれた友人でたまたま近くにいたキッドから助けられたところだっていうのを鈴木財閥が正式に公表したら、キッドの仲間の可能性がある女を特定しろなんて流れは消えるはずだろ」


快斗くんの言葉に園子と目を合わせた。


「オーケー。パパとママを説得してみる。…あ、それと黒羽くん」


園子は善は急げとでも思っているのか現在夜中の3時半なのに部屋から出ていこうとしていた。
その直前、快斗くんに呼びかけた。


「怪盗キッド、知ってるのよね?」
「…知ってるけど?」
「今全世界の女性が憧れて止まない月下の奇術師怪盗キッド!そんな人にあおいは助けられたんだけど、」
「…何?」
「あんたの方がカッコいいってさ」
「へっ?」
「ちょっ!」


じゃあ私パパとママ叩き起してこれ以上ヤバいことになる前に手打ってもらうから!って言って園子は部屋から出て行った。


「も、もしもし?」


園子の発言に無言になってしまった快斗くんに声をかけた。


「園子ちゃんてさー、案外頭キレるよな」
「え?」


快斗くんは呟くようにそう言った。


「どういう」
「あおいちゃんさー、明日ってかもう今日か。マンション帰るんでしょ?」
「え?う、うん。そのつもりだけど?」
「俺行くから帰る時間わかったら連絡ちょうだい」
「え、でも、」
「大変な思いした可愛い彼女を癒やしに行かせて」


現在すでに4時近いから、うっかりここで寝てしまったりしたらマンション帰宅なんてきっと夕方で。
それでも快斗くんにこんな言い方されたら返事は1つしかないわけで。
イエスと答えた私に、なら少しでも寝なよ、と快斗くんはおやすみと言って電話を切った。

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bkm

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